大型ビジネスマンになろう・デザイン力と構想力(感性と理性)
26回目のブログです。
いつまでも暑い日が続きます。
先週のブログ(25回目)で、騒々しい靖国問題について、私なりの考え方をほんの
少し述べましたが、結構反応があり驚きました。私は、本旨としては、福澤諭吉を見
すべきと主張したつもりでししたが、そのなかの「鎮魂ということは、わが国民がひとり
ひとり、静かにわが先人をまつり、魂を鎮め奉ることが本来の有り様ですが、近隣諸
外国、国内政治勢力の、ためにする騒擾により、心の静けさは破られてしまいました
。」に多くの方が賛同を示されました。
これからは、徐々に涼しくなり、秋を迎えようとする時でもありますから、それこそ、
心静かに、読書する時でもあります。その意味で、靖国問題に決着を着けるための
本をご紹介します。これは、最近、私の畏友S氏が推薦してきたものであり、ここに要
点を記します。
書 名 『戦争を知らない人のための靖国問題』
ーー靖国問題に終止符を打つ!--(帯・キャッチフレーズ)
著 者 上坂冬子
出 版 社 文春新書・定価720円+税
推薦理由(S氏)
① ノンフィクション作家として、歴史的事実を時代的雰囲気も含めて記述されている。
(サンフランシスコ条約締結後における独立日本の最初の仕事は、靖国参拝であっ
た。 靖国参拝は独立国家の象徴的祭事である。)
② 著者の上坂冬子さんは靖国問題の政府懇談会のメンバーであり、内情に精通。
③ 中国、韓国に対し、サンフランシスコ平和条約を踏まえて、靖国問題に対する
『声明書(著者私案)』を提案している。
(納得がいくもの。中韓は同条約からみて、この条約に対する発言権はない。)
④ 非常に読みやすく、戦後世代にもわかりやすい。
早速読んでいるところです。私など、戦争を知らず、戦後教育を受けた者にとって
は、この本は、目から鱗というものであり、ことの本質を理解するのに役立つと同時
に、新聞やテレビが、いかに粗雑な議論をしているかが非常によくわかります。
また、クレームをつけている諸外国に対し、声明書案を提言するなどは、著者、
上坂冬子さんならではと、その叡智と勇気に対し、心より敬服します。このような
提言を具体的に行う政治家、評論家、学者、ジャーナリストなど聞いたことがありま
せん。上坂さんは素晴らしい女性ですね。かの横田早紀江さんと好一対というところ
でしょうか。
靖国神社などの精神的なものに対しては、静かに考えたいものですね。
既に読まれた方もおられると思いますが、まだ読まれていない方は、ぜひ、一緒に
読んでみませんか。
あらためて、この本を推薦します。Sさんありがとうございます。
「君はサラリーマンかビジネスマンか」の第26回目です。
(毎週金曜日・30~40回を予定)
ビジネスマンへの道を示せれば幸いです。
必ずお役に立ちます。ご期待ください。
『君はサラリーマンかビジネスマンか』…26
[8章]大型ビジネスマンになろう
[8章ー2]デザイン力と構想力(感性と理性)
むかしドイツの哲学者ニーチェが語った言葉があります。「偉大とは方向なり」と。
確かにそうです。偉大とは方向を示すことに違いありません。
ところで、現実に、われわれの上司で明確に方向を示す人がいるでしょうか。自分
の責任において明確に方向を示す上司がいれば、その組織、職場はピリッとした緊
張感に溢れ、着実に活性化し、業績も大きく伸びてゆくことでしょう。
これは企業だけに限りません。政治の世界でも官僚の世界でも同じです。
今、本当に偉大と言われる人がいるでしょうか。偉大といわれる人がいないから問
題なのです。バブル経済がはじけて以来、わが国が奈落の底に落ち込んでいったの
は、責任ある方向を信念を持って示す人に欠けたからだと言えます。
ビジネスマンのなかでも大型ビジネスマンを志すのであれば、かのニーチェのひそ
みに習って、幅広い観点から方向を示す力を持つ必要があります。もしもその力を持
てれば、際立った存在になるに違いありません。その力は感性と理性の両方を備え
て始めて持ち得るものであると考えられます。
大型ビジネスマンの必要条件は、華麗で斬新なデザイン力と豊かで幅広い構想力
であり、デザイン力は感性から湧きあがり、構想力は理性から産み出されます。
デザインといえば、一般にファッションのシルエットを意味しますが、これは狭い範
囲での意味と言えるでしょう。他にも、グラフィックデザイン、パッケージデザイン、工
業デザイン、インテリアデザイン、あるいは環境デザインまであり、いまでは都市計画
までも含まれています。
デザインのうち、最もポピュラーなファッションデザインを取りあげてみましょう。ファッ
ションだからいわゆる流行を適当にデザインしているようにみえますが、そんなに甘い
ものではありません。わが国を代表するコム・デ・ギャルソンの川久保玲さんとか、三
宅一生さん、山本耀司さんなどは、縦の流れとしては歴史への深い思索の上で、横の
広がりとしては世界のあらゆる民俗、国家を想い、その交差点として、真剣に、たった
今の「時代の空気」をデザインしているのです。それが高く評価されて、世界のリーダ
ーに位置してきました。
ビジネスマンといえども自分の仕事に対して、直感力を働かせることも必要ではない
でしょうか。直感は単なる勘ではなく、研ぎ澄まされた凛然たる情熱から生まれるもの
です。豊かな感性を育むには広い意味でのデザインに触れるに限ります。なぜならば、
感性というものは、理屈や理論で育つものではないため、デザインなどに触れることに
より、直感が触発されるからです。
ところで、現代のビジネスではデザイン力よりもむしろ構想力が求められているかも
しれません。ビジネスを展開するにあたり、まず必要なのは全体像であることに異論を
挟む人はいないでしょう。しかしながら、現状では、ややもすると、全体像を示さずに、
部下に遮眼帯をはめ、鞭で叩きまくるリーダーが多すぎるように思えます。
そういうリーダーも、本当は全体像を示したいのですが、構想力が乏しいために、全
体像を描けないのが真実なのです。全体図を描くには真剣に思索する必要があります
が、真剣なる思索を通じた苦闘なくして全体図を描くことは難しいものです。
しかし、ものごとを論理的に捉え、できるだけ幅広い観点から検討してゆけば、必ず
や全体図を描くことは可能です。これは理性の世界でもありますから、自分自身を鍛
えてゆけばそれなりの力がついてくるはずです。
大型ビジネスマンはデザイン力、構想力で先見性と方向性を示めさなければなりま
せん。
次回は
[8章]大型ビジネスマンになろう
[8章-3]自分の存在価値
です。
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コメント
矢野様
大きな問題提起をいただきました。おっしゃるように、わが国に
とって、資源問題は、直感的に厳しいなという感じがします。
これについて、大型ビジネスマンは、一言発言があってもよいと
思います。
今は、十分知識を持ち合わせていませんので、後日、コメントしたいと思います。
資源関係に携った人であれば、構想なども持ち合わせておられるのではないでしょうか。できれば、コメントいただきたいですね。
投稿: のんちゃん | 2006年9月12日 (火) 00時51分
初めてコメントを書かせていただきます。
デザイン力と構想力の必要性について、同感です。デザイン力は言葉では表現しにくいものですが、構想力の前提となる世界情勢の背景にある流れ、トレンドについては、常々次のような方向性があるように感じています。
人間も地球上の一生物種であり、生物一般を支配する法則から免れません。閉ざされた環境の中で個体数が急増すると、環境の容量の限界に突き当たり、生存競争が激化し、その結果発生するストレスにより個体数が減少する。生物界では一般にそのようなメカニズムにより閉鎖環境下での個体数の自動調整がなされています。
このような法則性は人類全体についても当てはまるはずです。世界人口は数百万年かけて百年前に15億人程度に増加しましたが、このわずか百年でさらに4倍以上に爆発的勢いで増加しています。今後21世紀中ごろまでに90~100億人になると見積もられています。
地球環境の限界については、ローマ・クラブのレポート『成長の限界』で早くも1972年に指摘されています。それから34年、地球上の人類社会の現状は正にこのストレス過剰、生存競争激化の過程に突入しつつあるように見えます。
その一例が、原油価格高騰に象徴される資源の争奪様相です。近年は中露など大陸国が軍事力と強引な力の外交により国家戦略の一環として資源の囲い込みを始めているようです。
近代西欧の富は、新大陸発見以来、海外進出と自由貿易により築かれてきました。しかし、今その方向が逆転し始めているのではないでしょうか。
海洋交易路のネットワークを通じ、世界で最も安価な資源と自国の優れた労働力・技術を結合し商品に加工して輸出し外貨を稼ぐという、英、米、日本など海洋国群主導の輸出立国型の富の蓄積が、近代の世界をリードしてきました。
しかし今や世界的に資源が枯渇し始め、資源を直接埋蔵し力で支配できる大陸国家群が優位となる時代に入りつつあるのではないでしょうか。今後、資源は買い手の言い値で自由に買えない、場合によってはいくらお金を積んでも買えない時代になるということではないでしょうか。
大陸国はそれを予見し、上海協力機構などを結成して資源を囲い込み、テロ、地域紛争など地政的リスクを煽り半ば意図的に価格を吊り上げ、資源輸入価格高騰を通じ海洋国が蓄積した富を収奪するという、戦略を目論んでいるように思われます。
もちろん資源も買い手があって価値を持つものですが、今の生活水準を下げられない先進国消費者は富の続く限り必須資源が高騰しても買い続けるのではないでしょうか。技術開発による省エネはもちろん追求すべきですが、又別の形態で新しい資源が必要になり、問題の抜本的解決にはならないのでないでしょうか。
日本のような資源の乏しい海洋国家はどのようにして生き延びればよいのでしょうか。皆さんはどのようにお考えでしょうか。
環境問題など資源問題と表裏一体の地球規模の課題もありますが、今日は資源の視点から問題を提起させていただきました。
矢野
投稿: 矢野義昭 | 2006年9月 2日 (土) 09時45分