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2006年12月29日 (金)

時事エッセー・戦後60年、歪められた自画像

 44回目のブログです。

 今年最後のブログとなりました。これで10ヶ月になりますが、我ながらよく続い
たものだと感心しています。中身の乏しいであろうこのブログにお付き合いいた
だき、心より感謝します。

 今年はいろいろなことがありましたが、いわゆる戦後60年経過し、その間の
マグマ、膿が明白に露出した年であったように思えます。憲法ひとつとっても、
あるいは、教育基本法をとっても、数十年間手付かず、何も内容変更が無いと
いう驚愕の状態が続いてきましたが、いよいよ現状への適応を具体化する段階
に至ったと認識しています。

 常識で考えても、この60年間の社会の変化は凄まじいものがありました。身の
回りの家族関係も核家族へと大きく変わり、生活水準の超大幅な向上、生活空
間の極端な広がり、交通手段の大変革、情報量の恐ろしいほどの拡大などなど、
どれを取り上げても、目を見張るものばかりです。その過程において、わたし達
個人は、自分自身をそれなりに適応させてきたと思います。

 しかしながら、国の基本構造である憲法などは旧態依然としており、いわゆる
組織(国家構造)と個人(生活感覚・精神)の乖離が甚だしく、今や、その矛盾点
が激出し、社会不安が至るところで生じています。国や社会のタガが完全に緩ん
できた
といっても差し支えないと思います。今までは、組織と個人の乖離も何とか
忍んでくることはできましたが、いよいよ限界にきたと考えてもよいのではないで
しょうか。

 このような現象をなぜ早く察知し、止めることができなかったのか、あるいは、
できないのでしょうか。

 私のような浅学非才の身では、どのように考えればよいのか、皆目検討がつき
ません。しかし、ここで、非常にわかり易く、情熱を込めて書かれた本に出会うこ
とができましたので、紹介しましょう。

     著 者   中 西 輝 政(京都大学教授)
     書 名   『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』
                ――戦後の「嘘」と歪められた自画像――
     出版社   PHP研究所(PHP新書・10周年記念)
     価 格   740円(税別)

 著者の中西教授は、昭和22年生まれの、純粋戦後派であり、英国のケンブ
リッジ大学に留学した、まさしく正統派の歴史学者です。「大英帝国興亡史」、
「日本の死」、「帝国としての中国」など大著も数多くありますが、この本は非常
にコンパクトであり、読みやすいと思います。

 戦後60年、今までわたし達が何かおかしいなと感じていたようなことに対して、
あらたに公開された秘密資料(ソ連・アメリカ)などをもとに、歴史を塗り替えるほ
どの驚くべき説明が、明快になされています。
 わが国に対する、ソ連・ロシアの陰謀、アメリカの底意、中国の本質などが、
白日のもとに晒されており、目から鱗、驚愕の事実の連発です。憂国の情あふ
れる、歴史家ならではの、諄々とした分かりやすい語りに、ついつい時間も忘れ
るほど引き込まれました。

 参考に、概略を記しておきましょう。
   第1章 歪められた自画像
      ① なぜ日本人は戦前を否定するのか
      ② 戦後の嘘
          ・ 「終戦」という嘘
          ・ 「自主憲法」という嘘
             ……
      ③ 戦後の悲しき真実
      ④ 戦後60年、いまこそ覚醒のとき
   第2章 あの戦争をどう見るべきか
      ① 日露戦争をどうみるべきか
      ② 日本はなぜ大東亜戦争に突入したのか
   第3章 日本人にとっての天皇
   第4章 日本文明とはなにか
 
 中西輝政教授は、はしがきで、自分の全存在をかけて一般の方々に語りかけ
たいと述べていますが、その熱情が紙面から溢れんばかりであり、非常に読み
やすく、一気に読了できます。一読をお薦めします。

 それでは皆様、良いお年をお迎えください。
 来年もよろしくお願い申し上げます。

次回は
時事エッセー
です。

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