素晴らしき哉!「奥の細道」
69回目のブログです。
『月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯を
うかべ、馬の口とらへて老いを迎かふる者は、日々旅にして旅を栖とす。
古人も多く旅に死せるあり。予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれ
て、漂泊の思ひやまず、海濱にさすらへ、去年の秋江上の破屋に蜘の古巣
をはらひて、やゝ年も暮れ、春立てる霞の空に、白川の関こえんと、そヾろ
神の物につきて心をくるはせ、道祖神のまねきにあひて取もの手につかず、
もゝ引の破をつヾり、笠の緒付かへて、三里に灸すうるより、松島の月先づ
心にかゝりて、住める方は人に譲り、杉風が別墅に移るに、
草の戸も住み替る代ぞひなの家
面八句を庵の柱に懸け置く。』
これは有名な、松尾芭蕉「奥の細道」の書き出しですが、わたしはこの奥の細道
が大好きです。奥の細道は、芭蕉の最高傑作だと言われています。芭蕉は、芸術
に生きるなかで、古人も多く旅に死せるありと、西行や宗祇の歩いた道をたどり、
旅に生き、旅に死のうとし、奥の細道という長途の旅に踏み出しました。人生の
覚悟のスタートが、芭蕉をして、“月日は百代の過客にして……”という素晴らしい
書き出しになったものと思われます。
わたしは、高校生の時に奥の細道を受験勉強として読みましたが、この冒頭
だけは、今でもよく覚えています。それは、大学受験の問題にズバリこの個所が
出題され、完璧な回答をした思い出があるからです。
このたび、台湾の李登輝前総統が来日され、5月30日から6月9日まで滞在し、
東北4県で松尾芭蕉の足跡をたどったというニュースを目にしましたので、それに
刺激され、あらためて古典「奥の細道」を読んでみました。
受験勉強をしていて良かったと思いました。いわゆる古文ですから、とても読
通すことは不可能だろうと考えていましたが、あにははからんや、結構すらすら
読めるものです。もちろん意味不明の個所は多少ありましたが、苦にはなりません。
受験勉強の効用をあらためて認識しました。
李登輝前総統は、京大出身であり、また、若かりし一時期は日本人であり、大の
親日家ですから、以前から度々の訪日を希望されていましたが、厳しい政治状況
(中華人民共和国と台湾の緊張関係)により、なかなか実現できませんでした。
特に、わが国に横溢している、中華人民共和国への阿諛追従、平身低頭や、
ことなかれの姿勢、反日姿勢、親左翼イデオロギーなどにより、来日を拒まれて
きました。
親日家の来日を断るなんて、国家、国民として狂っているとしか言いようがあり
ません。外務省の全て、自民党、民主党の大半、社民党、共産党のすべて、マス
コミの大半はいうに及ばず、関係大学(京大、慶応大)までも、いままで李登輝氏
来日の妨害工作をしてきました。本当に情けないことですね。国民として、人間と
して恥ずかしくないのでしょうか。 これらの人々は、普通の人間感覚を持ち合わ
せぬ、悪しき政治人間、堕した政治屋と言えるでしょう。今回は、安倍総理の押さえ
で、何とか来日が可能になったと言われています。
それらの嫌がらせを克服し、84歳の高齢(84歳の引退政治家ですよ!)ながら、
堂々と笑顔で来日された、李登輝前総統は、素晴らしい人物であり、真の政治家
であると言えるでしょう。いうなれば、“哲人政治家”と言っても過言ではないと思い
ます。経歴をみても、台湾の国民に対して、理と情を尽くし、揺るぎ無い機軸のもと
に激しい行動を示すという、最高の政治を行ってきたことが窺えます。
さらに、李登輝さんは、世界の文明と文化に深い理解を示し、そのなかでも、
日本文明と日本文化に深い敬意と、尊敬の念を抱いておられます。“「武士道」
解題―ノーブレス・オブリージュとはー”などの著書があるほど、武士道を含む
日本文化や日本精神に、ことの他造詣が深く、わが国の政治家のなかで、李登輝
さんに比肩する人は一人としていないのではないでしょうか。
ためしに、今回の来日において作られた俳句を一部ご覧ください。
江東区深川にて(皐月31日)
深川に 芭蕉を慕い来 夏の夢
松島瑞巌寺にて(水無月2日)
松島や 光と影の 眩しかり
見事ですね。感服します。わが国のリーダーには、李登輝さんの爪の垢でも煎じ
て飲んでほしいものです。わが国をこよなく愛してくださる李登輝さんには、さらに
長寿を重ねられ、再びゆっくりと来日、滞在され、わたしどもに箴言の数々を示して
下さるよう期待しています。
ところで、わたしの好きな俳句を「奥の細道」から抜き出します。
行く春や 鳥啼き魚の 目は涙 (旅立ち)
あらたふと 青葉若葉の 日の光 (日光)
夏草や 兵どもが 夢の跡 (平泉)
五月雨の 降りのこしてや 光堂 (平泉)
閑かさや 岩にしみ入る 蝉の聲 (立石寺)
五月雨を あつめて早し 最上川 (最上川)
荒海や 佐渡によこたふ 天河 (越後路)
一家に 遊女もねたり 萩と月 (市振の関)
むざんやな 甲の下の きりぎりす (太田の神社)
石山の 石より白し 秋の風 (那谷)
蛤の ふたみにわかれ 行く秋ぞ (大垣)
古典っていいものですね。奥の細道を味わう契機を与えていただいた李登輝
さんに感謝。たまには古典を読みましょう。李登輝さんの本も素晴らしいですよ。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です。
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