研修…冬の奥能登を訪ねる!
103回目のブログです。
太陰暦(旧暦)で言えば、先週の2月7日が正月(いわゆる旧正月)にあたるわけ
ですから、まだまだ寒い日が続くと見なければなりません。寒いからといって、じっと
していても何も得るものはなく、動くことで、寒さを吹き飛ばすとともに、何か得る
ものがあります。
先月末、勉強会の友人と冬の奥能登を旅しました。わたしは金沢には、仕事で
数限りなく訪れていますが、能登にまで足を向けたことはありません。正直なところ、
能登は厳しい環境で遅れた地方の一つかなと言うイメージしか持っていません
でした。
その意味で、金沢とは風土が異なるであろう能登を訪ねることに、胸ワクワクの
期待です。明治維新後140年も経過していますが、旧藩が違えば、人が違うと言
われています。能登と金沢は同じ加賀藩ですが、律令制度の時は別の国だった
わけですから、それなりに、人情と文化に大いに違いがあるのではないかという
点に結構関心がありました。
研修旅行の総人数30数名、男女、年齢様々、東京組は、羽田~能登空港~
和倉温泉駅、わたし達大阪組はJR~和倉温泉駅で合流。以後観光バスで移動。
「小牧台」「軍艦島」「珠洲焼資料館」「ランプの宿(泊)」「曽々木海岸」「白米千枚
田」「イナチュウ美術館」「輪島朝市」「キリコ会館」「輪島漆芸美術館」など、多くの
能登の自然、文化、人情に触れることが目的です。
観光バスですから、当然バスガイドが付いていましたが、一般的には未熟で投げ
やりなバスガイドが多く、大して期待はしていなかったのですが、あにはからんや、
素晴らしいバスガイドに恵まれました。奥能登は、輪島市、珠洲市、能登町、穴水
町から構成されますが、このガイドさんは、全ての自然と文化的遺産について、
立て板に水の如く解説できるだけでなく、能登にまつわる歴史についてさえ、人名、
年代、事象、流れを全て諳んじているという、見事な才能の持ち主でした。この旅
の幸先の良さを示していたと言えるでしょう。
まず最初は、能登半島国定公園の中にある「小牧台」で昼食。名物の殻付き
牡蠣を中心にした海の幸を食べながら眺める、能登内浦特有の変化に富んだ
絶景は、時の経つのも忘れるほど美しい景色でした。万葉集にも詠われたほど
のオーシャンステージですから、さもありなんと納得。
更に北にすすんで「見附島(軍艦島)」です。能登内浦海岸を代表する景勝地で
あり、弘法大師ゆかりの島ですが、形状が軍艦そっくりのため、地元では軍艦島と
言うそうです。
次に「珠洲(すず)焼資料館」を訪れ、平安末期から室町にかけてここ珠洲市で
作られていた、中世の日本海文化を代表する焼き物をゆっくりと見てまわりました。
珠洲焼は古墳時代の須恵器の技法を受け継いでいますから、独特の灰黒色と
なっています。何となく、人間らしい、土の香りを感じさせてくれる焼物の印象です。
いよいよ念願の宿泊地に向うことになります。泊まる所は葭ヶ浦(よしがうら)温泉
にある「ランプの宿」ですが、断崖絶壁の下にあるため、バスから宿の小さな車に
乗り換え、スリリングなスイッチバックで降りていきます。
ランプの宿は、400年の歴史を持つ由緒ある宿であり、露天風呂から眺める、
能登外浦の雄大で荒ぶる波しぶきは、俗世のことなどを暫し忘れさせました。また、
ある意味で、自然の営みの神々しささえ感じたと言っても過言ではありません。
さすがに、日本の温泉100選に選ばれただけのものはあります。実に素晴らしい
温泉です。
宿の食事は、時節柄カニ料理が目を引きますが、海の幸がふんだんに各自の
テーブルに一杯並べられており、能登の地酒とともに、美味しく頂きました。
京料理であれば、一品一品順番に出すのが一応のもてなしとなりますが、この
ような地方では、料理を机一杯に並べ、その豪華さを一斉に目の当たりにするの
がもてなしとなるのでしょう。それにしても、食べきれないくらいの品数には驚いた
次第です。
二日目に入りました。バスで「曽々木海岸」を通りますが、さすがに国指定の
名勝地だけあり、海岸の景色は心がなごみます。日本海の荒波により自然に作ら
れた窓のある岩や荒々しい地形は素晴らしいものがあります。
さらに、目を引くのが、白米町にある「千枚田」でしょうか。狭い海岸線の土地
に千枚もの田が段々畑のようになっています。正式には2092枚あるそうですが、
これは、確かに美しい景色、懐かしい景色であるには違いありませんが、この地
の農民が米作のために、狭い狭い限りなく狭い農地を苦労して開拓・開墾したこと
を思えば、ある種の感懐を覚えずにはいられません。
次に輪島に入りました。輪島朝市の中に「イナチュウ美術館」があります。わたし
は美術館には結構興味はありますが、寡聞にしてこのイナチュウ美術館の名は知
りませんでした。世界各国の王朝時代の名品400点を展示してありますが、圧巻
は、17世紀バロック時代を代表する巨匠ルーベンスの大作絵画≪マギの礼拝≫
(高さ220cm×幅270cm)であり、時価350億円と言われているそうです。
その他なかなか魅力ある作品が多く、一度は見る価値があるように思えます。
能登輪島は、岐阜高山、千葉勝浦と並んで日本三大朝市に数えられているほど
有名です。小雪ちらつく寒さのなかで、地元のおばさん達が懸命に物産販売して
いる姿は、それなりに見ごたえがあります。
朝市のすぐ近くにある「キリコ会館」。キリコと言えば、てっきりガラス工芸の切り
子だと思っていましたが、当地のキリコは切り子燈篭のことで、神輿の前衛後衛
のお供役、灯りとして担がれるもので、高いものは10メートル以上もあります。
巨大な御神灯と言えば分かりやすいでしょう。現在、700~800本もあるそうで、
なかなか豪華、華麗な燈篭であり、信心の厚い能登の象徴と言えるかも知れま
せん。毎年、7月から9月にかけての能登各地のお祭りに見られるとのことであり、
能登再訪の誘惑にかられます。
旅行の最後は、「輪島漆芸美術館」です。歴史ある輪島塗の作品や、人間国宝、
芸術員会員などの作品も展示してあり、特に基本的な漆塗技法の説明などは分か
りやすく為になります。
一泊二日の足早の旅でしたが、バスガイドさんを含め、全ての案内人、説明人の
親切な熱心さには感心しました。今、地方の活性化が叫ばれているなか、この能登
の、観光、産業振興への熱心な取り組みには、参考になることが多くあり、機会
あれば、また訪ねたいという思いを強く持っています。
素晴らしい能登の旅の印象を記しました。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です。
| 固定リンク
コメント