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2008年3月21日 (金)

『壁を壊す』…改革への指針はこれだ!

 108回目のブログです。

 いよいよ桜が待たれる好季節となりました。昨日は春分の日という祝祭日。宮中
では春季皇霊祭がおこなわれる厳かな祭日ですが、一般には彼岸会(七日間)の
中日として先祖供養のためにお墓参りなどがおこなわれたことでしょう。ところで、
学校では未だに、この日を、昼間と夜間とが同じ時間になるので祝日になっている
という出鱈目な説明をしているのでしょうか。本来もっている祝祭日の意味を生徒
にわかりやすく説明してほしいものです。

 季節は、春季皇霊祭、彼岸会、それから桜へという自然な流れにありますが、
社会や国全体を取り巻いている状況は大変な事態に陥っているように思えます。
アメリカ経済の悪化に引きずられているわが国経済への不安感、毒餃子に象徴
される食品の安全と中国への卑屈な姿勢、官僚腐敗の悪質化、旧態依然たる
利権構造、政争に明け暮れる与野党政治家、偽装隠蔽と私利に走る一部の経済
界など枚挙に暇がありません。

 そうしたもやもやのなかで、先日素晴らしい話を聞く機会がありました。DOWA
ホールディングス株式会社・代表取締役会長・CEO・吉川廣和氏
、「壁を壊す」
と題して、DOWAグループの事業構造改革について特別に話されたものです。

 吉川会長は、老舗企業DOWAグループのTOP経営者として、7年で経常利益を
10倍にした破壊的改革について、熱っぽく、また分かりやすく語りかけられました。

 DOWAホールディングス(旧同和鉱業)は、明治17年創業、124年の歴史の
ある会社であり、国内に優良鉱山を有し、鉱石を製錬して非鉄金属(金・銀・銅・
亜鉛・鉛)を生産することを主な業務としていました。

 そのような永い歴史のなかで、特に90年代のバブル崩壊後、深刻な事態となり、
低収益から脱却できず、膨大な有利子負債を抱えるという、お先真っ暗な状態に
追い込まれていたのです。

 そこで、吉川社長の登場となり、2000年から事業構造改革がスタートしました。
ここから「壁を壊す」ことが本格化しましたが、7年間のその成果たるや、瞠目
すべきものがあります。
     経常利益            500億円   約10倍
     売上高経常利益率      10.8%      約  4倍
          ROA(総資産利益率) 15.0%      約7.5倍
     
 見事なものと言うには恐れ多く、まさに感動そのものの数字ではないでしょうか。
この劇的な改革の中身はどのようなものか。まさに興味津々たるものがありますが、
それには、吉川会長の書かれた心情溢れる著作を読まれるのが一番でしょう。
“真の改革とは何か”が率直に書かれています。

       著  者  吉川廣和(DOWAホールディングス会長・CEO)
       書  名  『壁を壊す』
                 ――7年で経常利益を10倍にした
                         老舗企業の破壊的改革ーー
       
出版社  ダイヤモンド社
       価  格  1600円+税
       書  式  単行本

 この内から考えさせられる所を抜粋します。(吉川会長の了解済み)

 壁には改革を阻む無数の壁がある

       組織の壁…(縦割り、営業部・管理部・製造部・財務部など)
      ② 上下の壁…(横割り、現場と管理職・社員と役員・本社と工場など)
      ③ 社風・風土の壁…(官僚体質、形式主義など)
      ④ 心の壁…(自己保存、人間関係)
      ⑤ 物理的な壁…(個室・パーテーション・ロッカー)

  「選択と集中」の考え方(三つの投資基準)

   すべての事業をマナイタにのせ、事業性を評価、過去の経緯(伝統、
     主力、事業推進者、ユーザー、しがらみ)にこだわらない。

   投資基準は、黒字か赤字かで判断するのではなく、次の三つの基準
     則り、そのうちどれが欠けても投資しない。

       マーケットがあるか、あるいは将来に向けて、マーケットの成長
        が期待できるか。

       当社に競争力があるかどうか。(特に技術力)
       社員にやる気があるかどうか。

  「べき論」はいらない。「やり抜く」ことこそ仕事

    「べき論」を語る人はきわめて多い。「社内を改革すべき」と声高に叫ぶ人
   は、どんな会社にもたくさんいる。居酒屋は、この種の激論であふれている。
   自分はいつも正統派、正義の味方である。翌朝になれば、昨夜の正論は
   すっかり忘れている。主張することで解決してしまったからである。実行する
   覚悟も能力も責任もない正論である。多くのマスコミが得意とする分野である。

    例えばどこかの会社の不祥事を例にしよう。メディアは、不正を正して会社
   は生まれ変わるべきなどと、もっともらしく評論する。しかし、そのメディアでも
   不祥事が頻発する。不正が蔓延していた企業の風土を実際に変えることは
   並大抵のことではないのだ。残念ながら「べき論」には責任も具体策もない。
   口先だけのかけ声なら、誰でも出せる。

    それに対し、一つのことを実際にやり抜くには、客観的なデータと、綿密な
   計画と、勝算と、これらをベースにした情熱と覚悟が必要になる。さらに、
   途中に立ちはだかる抵抗や障害に打ち勝つだけの体力や精神力も欠かせ
   ない。ヒト・モノ・カネに恵まれ、十分な情報の下で改革ができることなどない。
   「ないない尽くし」の中で、いかに成果を上げるかが仕事である。

    もちろん、一人の力で「やり抜く」ことは難しい。会社を変える原動力は、
   社員一人一人の力の総和だ。彼らが「やり抜く」人に変われなければ、
   「べき論」で終わってしまい、現実は何も変わらない。見えない「壁」は私たち
   一人一人の心の中にある。これを壊して、「やり抜く」力を引き出すことが、
   改革には不可欠なのだ。

  事業会社間にも市場原理・競争原理を

   「同じ社内、仲よくやろうよ」とか、「なあなあの部分も少しはないと、疲れ
   てしまう」、とか言う感情もわからないわけではないが、会社は競争社会で
   生き抜く戦闘集団であり、決して仲よしクラブではない。

 素晴らしい言葉ですね。実績が実績ですから、説得力は無条件にあるわけです
が、珠玉の言葉の奥にある、斬新な施策、考え方は、わたし達に何かズシリと迫る
ものを感じさせます。

 それ故に、真の改革者、あるいは真の大経営者という意味では、西の中村会長
(松下電器産業)、東の吉川会長と言っても過言ではないのではないでしょうか。
誠に残念極まりないことですが、福田首相を筆頭にして、政も官も改革の精神から
は真逆にある今日、この本はわたし達に示唆するところ、大いにあると考えます。

政、官、民、教すべてにおいてこの書物を読むべきでしょう。混迷するわが国に
光明を照らさんとする、『壁を壊す』を積極的に推薦します。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回も
時事エッセー
です。

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