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2008年4月 4日 (金)

『本質を見抜く考え方』…これを身につけよう!

 110回目のブログです。

 いよいよ桜花爛漫の好季節を迎えました。わたしは各種の花のなかで、桜(正字
としては『櫻』と書きます)が一番好きです。今まで、京都では、哲学の道・高台寺・
丸山公園・清水寺・永観堂・平野神社・高尾・天竜寺・二尊院・嵐山・花の寺、滋賀
では日吉大社、大阪では、万博記念公園・大阪城公園・造幣局の通り抜け、奈良
では有名な吉野山、東京では北の丸公園など数多くの桜を観て来ました。

 最も印象に深いのは、山形城(霞城)の桜でしょうか。お堀の水にまさに届かん
とするほどに垂れ下がり、黒ずんだ大木に咲く、ほんのり薄い紅色の豊穣な桜の
乱舞は、まさしく歴史を感じさせ、観ていても飽きが来ないほど見事なものです。

 桜についての歴史に思いをめぐらせてみますと、わが国でサクラがウメを圧倒し、
主役の座についたのは、国風文化の開花を示す古今和歌集においてであり、この
サクラとかな文字の登場が文化における脱中華の象徴と言われています。梅の
花が中国文学の象徴ならば、櫻の花は日本の象徴ということになります。日本人
が櫻を好むのは、好きだ嫌いだという単純なことではなく、それなりの歴史と理由
があるということがわかります。

 それであるならば、これだけ桜を好む人々が多いわけですから、わが国文明へ
の自尊心、独立心、自覚がもう少し旺盛にならなければならないのではないで
しょうか。その意味で、ものごとを表面的に捉えるのではなく、本質を見抜く考え方
を身に付ける必要があります。

 そのための素晴らしい本をご紹介しましょう。

     著 者  中西輝政(京都大学教授、国際政治学・文明史)
     書 名  『本質を見抜く「考え方」』
              ――「ほんとうのこと」を正しく判断する
                    ための「ものの見方、考え方」――

     出版社  サンマーク出版
     価 格  1700円+税
     書 式  単行本

 著者の中西教授は、英国ケンブリッジ大学に留学した経験もあり、国際政治学
の泰斗であるとともに、歴史感覚豊かな正統派の知的権威でもあります。この本
の内から考えさせられる所を一部抜粋しましょう。

 「敵」をはっきりさせる
  
    戦後半世紀以上、表面的には平和と繁栄の時代を過ごしてきた日本は、
   いまになってその自画像の「あいまいさ」が問題になっています。戦後の
   日本は、いまだに同じような改革論が論じられ、すべての議論が右に左に
   揺れ続けています。どうして、この国の「右往左往」は止まらないのでしょう。

    大きな理由の一つに、日本特有の「やさしさ」があり、個人も政府も、
   「あちらもこちらも立て」ようとします。実際はあちらもこちらも立てるわけ
   にはいかず、すべての国を友として等距離につきあうのは不可能です。
   そういう意味で、「日本にとっての敵(他者)」をはっきりさせることが当面
   の日本の課題といえるのです。

    毎年報道される阪神大震災特集で、各報道機関は被災者の「悲しみ」に
   より多くの時間を割きます。こうした報道が悪いとは言いませんが、もっと
   多くの時間を割くべきは、今後の防災をどうするかという点です。地震と
   いう「敵」に備えることが優先されてしかるべきです。

    これに対し、つねに大陸という「敵」の脅威にさらされている台湾は、
   日本の数倍ものエネルギーを持つ震災に襲われても、死者は日本より
   はるかに少なくてすみました。目前の敵をつねに意識しているために、
   己の強さや弱さとふだんから向き合っているからです。

 ■「択一」より「共存」を意識する

    世の中は、一方に偏した価値に比重がかかると、その当座は繁栄する
   ように見えますが、いずれ社会に無理が出たり、活力を失ったりして衰退
   の原因になってしまうのです。

    うまくいっている社会では、これら一見対立するかに見えた価値が、
   バランスよく共存しています。つまり矛盾それ自体が問題なのではなく、
   矛盾を耐える力があれば、むしろ矛盾は活力の源泉になります。
  
    いまの日本を見ると、このバランスが崩れてしまっている現象が至る
   ところに見られます。
       一、「物と心のバランス」の崩れ
       二、「進歩と伝統のバランス」の崩れ
       三、「個人と共同体のバランス」の崩れ

  国単位でなく「文明単位」で見る

    イギリスの歴史家トインビーやアメリカの学者ハンチントンは、世界には
   七つの文明圏があると言っています。
       ①「西欧キリスト教文明」
       ②「ロシア正教文明」
       ③「イスラム文明」
       ④「ヒンズー文明」
       ⑤「中華文明」
       ⑥「日本文明」
       ⑦「中南米ラテン・アメリカ文明」 

    日本独特の風土は日本に独自の文明を築かせました。風土は文明を
   つくり、文明は人間の考え方や心のパターンを決定づけます。そう考えると、
   考え方の座標軸を、国単位から文明単位に移したほうが、正確に世界を
   とらえることができることに思い至ります。

    今日でも一部のマスコミや識者と呼ばれる人びとは、日本が世界から
   孤立することを恐れて、「アジアのアイデンティティを共有し、アジア共同体
   の一員となったほうがいい」などと言います。これは、日本文明をまったく
   理解していないところから発せられた暴論というべきでしょう。

    日本を代表する文明論の大家である梅棹忠夫氏は「日本は、文明の上
   で、アジアではない」と断言しています。日本は、キリスト教文明やイスラム
   文明と並び立つ「日本独自の文明」がある
という考え方に立てば、これから
   の日本がどう生きるべきかという大きな問題にも、おのずから答えが出て
   くるのではないでしょうか。

 ■ 天下国家も「自分の問題」としてとらえる
  

    “自分に関係のないように見える問題を、身近に引き寄せると見え方が
   変わる。「天下国家」の問題も、自分自身や身内、生まれ育った土地と
   直接つながるものである。”

 ■ 国を知るには、まず「神話」を知ること

    “神話からはじまる雑多な歴史を読んでいると、教条主義に陥らない。
   その国を理解できるばかりか、その国民の心理の本質をつかむことが
   できる”

  誰も疑わない「美しい言葉」こそ疑ってみる

    “「自由」「平等」「平和」「民主」は戦後日本人に思考停止を強いた四つの
   言葉である。その言葉の裏を知り、呪縛から解かれて初めて、日本人は
   自分の頭で考えられる”

 ■ 「自分の絵」にして精度を高める

    少なくとも自分の関心に合った情報なら、雑な情報でも大事にして、その
   段階での一応の整理をしておく必要があります。そして自分が集めたその
   段階での情報をまとめて、ざっくりとした自分なりのストーリーで一度「絵」
   (イメージ)を描いてみるのです。
    最初に描かれた雑な絵も、どんどん情報を積み上げていくことで、時間
   とともに精度が上がり、「インフォメーション(情報)」が「インテリジェンス
   (英知)」となっていくのです。

  「日本人」を明確に意識する

    日本という国にしっかり足場を持っていることによって、物心両面での
   安定感ももたらされます。日本特有の神道の基本に、「明(あかい)・浄
   (きよい)・正(ただしい)・直(なおい)」があります。「赤き、清き、正しき、
   直き心」です。とくに直き心、素直な心というのが絶対の価値を持って
   います。

    「三種の神器」の「鏡・剣・玉」は、日本の大切な「三つの心」を表し、
   古来、日本人が一番大事にしてきたものです。それはつまり、「素直さ、
   勇気、慈しみ」の三拍子そろって初めて人間(ひと)といえる、という
   われわれのアイデンティティです。それをつねにめざす民族だからと、
   胸を張って誇りに思っていいのではないでしょうか。

 素晴らしい言葉、分かりやすい説明、行間に滲み出る憂国の心情……、碩学、
中西輝政教授の溢れんばかりの熱情に感銘を覚えつつ、一気に読み終えました。
この書物はわたし達に示唆するところ、大いにあると考えます。今、わが国に
おいて、政治は全く機能せず、与野党の政争が連日繰り返されていますが、
お互い、日本人の意識はないのでしょうか。中西先生が書かれているように、
本来の日本人が持っている、
   ≪三つの心≫
      ・素 直 さ (鏡←三種の神器)
      ・勇   気 (剣←   〃   )
      ・慈 し み (玉←   〃   )

に立ちかえり、国や国民のための政治に尽力していただきたいと願うものです。
その意味で、あらゆる分野で混迷の度が増している現在、政、官、民、教すべて
においてこの書物が読まれるべきであろうと思います。

 『本質を見抜く「考え方」』を積極的に推薦します。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回も
時事エッセー
です。

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 国連という国際政治最大の機構に対する、信頼というか、信仰にも近い絶対視がいつの間にか、日本の空気になっている。敗戦前の国際連盟からの脱退、ポツダム宣言の条件付き受諾、敗戦、そして米軍の日本本土占領、間接支配の占領期、そして1951年にサンフランシスコ講和条約締結し独立がかなった。しかし国連加盟は敵国条項があり、やっと5年後、念願かなって認められた。誰しもがこれで初めて国際社会の正式な一員になれたと、その喜びは感じたのは当然であった。しかし、国連はそのような場なのだろうか。  いま問題に...... [続きを読む]

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