懐徳堂に学ぼう…経済モラルに歴史の知恵を!
148回目のブログです。
今年(平成20年・皇紀2668年・西暦2008年・戊子年)さいごのブログになり
ました。それにしても、この一年は大変な年であったことは確かであり、まだまだ
苦難の時は刻まれていくように思われます。
この一年の締めくくりとして、師走のはじめに、京都で行われた“崎門祭”( 山崎
闇斎の学統を現代に継いでいこうとする人達の集い)に参列させていただきました。
言うまでもなく、山崎闇斎は江戸時代随一の学者であり、垂加神道を創設した
大人物です。勤皇の大学者である山崎闇斎は、門人には浅見絅斎や佐藤直方
などがおり、明治維新の源流に立つ人物としてわが国の歴史に燦然と名を残して
います。いわば、明治維新の生みの親と言ってよいでしょう。
わたしは、寡聞にして知らなかったのですが、山崎闇斎は、もう一つの流れとして、
江戸中期に大阪の5人の豪商が作った「懐徳堂」に繋がっていたのです。
懐徳堂は、享保9年(1724)に創設された学問所。講義内容は朱子学を中心とした
中国思想が主体で貴重な実績を残し、多くの人材を輩出しました。学問は論語や
孟子などの古典を基本にしながらも、自然科学の分野でも実績を残しています。
明治2年(1869)閉堂するまで、140年の間、道徳の基本である『人の道』を追究し
続けた学問所でした。
大阪商人は仕事が終わってから、毎晩この懐徳堂に通い、儒教道徳に基づく
実業倫理、公徳心を研鑚したのです。
「懐徳堂」は、緒方洪庵の「適塾」とともに、現在の大阪大学へと引き継がれて
いますが、懐徳堂が文科系の祖、適塾が理科系の祖と言えるでしょうか。江戸時代
の大阪は学問でも先端と見識と良識を誇っていました。
系譜は、山崎闇斎→浅見絅斎→三宅石庵(懐徳堂初代学主)→中井甃庵(預人)
→中井竹山(4代学主)→富永仲基・山片蟠桃などとなっています。
これを見ますと、山崎闇斎や浅見絅斎などの大学者は、一般町人に対しては、
実業の倫理・道徳・良識を、極めて分かりやすく教えたのではないかと推測します
が、本質を極めた哲人であればこそ、それが可能だったのではと思います。
■ 山崎闇斎生誕390周年に想う(抜粋)
大阪は水の都として有名ですが、その頃の橋はすべて有力商家の寄付に
よって架けられていました。例えば、淀屋橋は淀屋、渡辺橋は渡辺氏の出資
です。その中で例外がたった一つだけあります。誰もが知っている「心斎橋」
です。
その由来は『易経』の一節「聖人以此洗心退蔵干密」(聖人此を以って心を
洗い密に退蔵す)にあります。懐徳堂を作った有力者達がこの言葉にいたく
感動して、心を洗う、心を斎(つつし)む橋、と書いて「心斎橋」と命名した訳です。
人生成功の鍵は「洗心」にあります。「心斎」であります。
闇斎学では、同様の理念を「敬義」と言います。敬はつつしむー慎むー反省
―感謝―勤勉であり、義は節義―道義―礼儀―正直―正道であります。
この様な考えが、「信用第一」「富の社会還元」(橋もその一つ)といった産業
道徳を普及させ、江戸期―明治期と続く商都大阪の繁栄を実現させたので
あります。
(山崎闇斎研究会会長 本條 衛)
これは、当日配布された資料からの引用ですが、素晴らしい言葉ですね。心斎橋
には、これほどの思いが込められていたとは、全く知りませんでした。今、誠に残念
なことながら、実業人、経済人の違法行為や反倫理、反モラル行為が、連日マス
メディアを賑わしていますが、実業人、経済人、産業人、商人、町人であるならば、
「懐徳堂」の精神に学び、多少は世の中に貢献するという心意気を示してもよいの
ではないでしょうか。
歴史に学ぶ、これが最も大切なことと言わなければなりません。産業人である
ならば、石田梅岩の石門心学か、山崎闇斎の一つの流れである「懐徳堂」精神か、
あるいは陽明学・安岡正篤の師友会のいずれかに学び、日本の古典や中国・ヨー
ロッパの古典に触れるよう心しなければならないと考えます。
懐徳堂も、21世紀をふまえて復活し、古典講座などいろいろな催しを行って
いますから、覗いてみてはいかがでしょうか。懐徳堂に限らず、日本各地で古典に
触れる場所は数多くあるはずですから、経済人は、心構えの基盤を築くためにも、
一度は当ってみることも必要でしょう。
それにしても、山崎闇斎が、勤皇として明治維新成功への偉大な原動力であり、
一方、経済人に経済哲学(実業倫理)を教える祖でもあったことは、この混迷する
現在、大いなる示唆を与えるものです。
今こそ、わが国の「貴重な財産である歴史」に謙虚に学ぶ必要があるのではない
でしょうか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか
次回も
時事エッセー
です
※ 今年一年、このブログをお読みいただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
それでは、良い年をお迎えください。
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