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2009年8月14日 (金)

常用漢字考…逃げるな似非文化人!

 181回目のブログです。

 梅雨明けが遅く、暑い盛りであり、またお盆でもありますので、思考能力が極端に
低下しており、難しいことを考えるのが億劫な今日このごろです。

 したがって、新聞記事などから軽いネタ…と言いましても、どうしても重くなりがち
ですが、漢字について触れたいと思います。

 わが国は今や、漢字検定、テレビ番組での漢字クイズなど、本当に漢字ブーム
ですが、これはある意味で歓迎すべきことではないでしょうか。わたし達一般市民
は、漢字をある程度知っていますが、教養人としては、漢字を熟知することは
不可欠の要素として見られています。

 それは、一国のリーダーである総理が漢字に弱い場面があり、マスコミが揶揄し、
国民も同意した事実を見れば明らかでしょう。

 しかし、漢字は単に知っておれば良いとかいうものではなく、漢字行政、漢字政策
には大いに問題があることを認識すべきです。

  淫・呪・艶・賭は「学校現場に不適切」

  常用漢字表(1945字)の見直しを進めている文化審議会の漢字小委員会は、
   新たに加える予定の191字のうち、教育現場から不適切だと指摘を受けた
  「淫」「呪」「艶」「賭」など一部の漢字について再検討することを決めた。

  191字は使用頻度や、漢字とひらがなの交ぜ書きの解消などの観点から今年
  1月に選ばれた。文化審は「学校で教える漢字は常用漢字すべてではなく、
  学校現場の判断に委ねるべきだ」という方針から、踏み込んだ議論は行わない
  としてきたが、学校などからの反対意見が相次いだため再検討を決めたという。
                          (2009/7/17 読売新聞一部抜粋)

 文化審議会とは、聞いたことのない名前だなと思いましたが、国語審議会や著作
権審議会などを統合した文部科学省の組織であり、従来の国語審議会が議論して
いると思えばよいでしょう。

 それにしても、ひどいものですね。「淫」「呪」「艶」「賭」が不適切な漢字だという声
が教育現場から上がるとは。この漢字の何が不適切というのでしょうか。おそらく、
      不適切=不穏当=悪の要素=不道徳 ⇒ 排除すべきもの 
と考えたものに違いありません。

  「淫」→ みだら・淫行・淫蕩・淫乱・淫猥・姦淫・荒淫
  「呪」→ のろい・呪詛・呪術・まじない
  「艶」→ あでやか・色っぽくなまめかしいさま
  「賭」→ かける・かけ・ばくち・賭博

 先生、教員、教師、教育委員会、日教組の方々にお尋ねしたい。この漢字がダメ
というのであれば、「悪」「暗」「陰」「汚」「害」「忌」「欺」「虐」「狂」「愚」など、いわゆる
マイナスイメージの漢字は全て排除しなければダブスタ(ダブルスタンダード)となり、
おかしいのではありませんか。

 日教組の先生方には釈迦に説法でしょうが、そもそも、文化・文明には光もあれば
陰もあり、人間とか歴史とかいうものは重層的に、かつ当時の社会基準に合わせて
心暖かく見ることが肝要です。

 「戦争」については、イデオロギー抜きに事実を率直に教えることによって、「平和」
というものを理解できるのであり、また、「悪徳」を一部教えることによって、「美徳」
の素晴らしさを理解できるものです。

 わたし達もそうなのですが、先生方は、これら「淫」「呪」「艶」「賭」の持つ言葉の
意味と率直に向き合わなければなりません。これらと向き合わなければ、文化も
歴史もわからないではありませんか。何もわからず、上っ面の“キレイゴト”のみを
、“イデオロギー”のみを纏って、はたして真っ当な教育が可能なのでしょうか。
そんな教育は、人間性豊かな思慮深い人物ではなく、おそらく、中途半端な、皮相
な人間を育てることになると考えます。

 これは、現在の広い意味での差別問題と同根だと思われます。本来的な差別
問題を解決するために、当初は直接差別的な用語を使用しないことからスタート
しましたが、どんどん拡大してゆき、今や、名作というべき時代劇さえ、(そこに、
一部、当時の時代用語として使用されている言葉が現在の時点で問題ありとして)
再放送しない、できない、させないという、ある種異様な文化的政治的雰囲気と
なっています。

 そういう意味で、常用漢字は、常識的な線におさめ、直接的な差別・マイナス漢字
だけを除外する方を選ぶべきでしょう。結論的に言えば、これらの漢字は、すべて
常用漢字として何ら問題はないと判断します。

 悪徳、悪の概念を考えることを避けようとする人は、真の教養人ではなく、似非
(エセ)教養人、似非文化人と言わなければなりません。また、言葉を大きく制限
することは、文化、文明の破壊であり、世界遺産よりもはるか上位として存在し、
永い伝統に培われた『日本語』…の破壊!…これを決して許すべきでないことは
いくら強調しても、し過ぎということはないでしょう。

 付け加えて、漢字、仮名、かなづかいなど、もう、ほとんどすべて自由な表現に
すべきだと思います。言葉が思考ですから。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回も
時事エッセー
です

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コメント

木下訓成様

小生の拙いブログを毎週お読みいただいているとのこと、感謝に耐えません。
木下様がおっしゃるように、漢字は、曲がった形で制限し過ぎますと誤った方向に流れてしまいますね。わたしは、「文化は言葉、言葉が文化」だと考えていますので、もうすこしまともな議論のもとで、常用漢字、当用漢字、人名漢字、教育漢字を決めるべきだと思います。
それにしても、日本語の漢字かな混じり文は大切にしたいものです。

投稿: のんちゃん | 2009年8月17日 (月) 16時07分

毎週金曜日を心待ちにしております。
漢字についての貴兄のご意見を読んでいるうち、在職中(十四年前に定年退職致しましたました)に、会社のオーナーが小生に始終こぼしていた愚痴を思い出しました。「頼之助というわしの名前の頼の字は、右側の旁は負だったのに、頭の悪い連中がいつの間にか、頁にしてしまった。画数を減らす為というなら已むを得ないが、一画だって減っておらんではないか!」
重箱の隅を楊枝でほじくるつもりはありませんが、つい最近も新聞を読んでいて、文化欄に「巽なにがし」という人の書評が掲載されていて、よく眼を凝らして見ると巽の頭に「己」が二つ並んでいたので、これはヘンだなと思い、小生の使用している五冊の辞書を調べてみると小生の記憶通り、頭の部分は「巳」になっていました。早速図書館に問い合わせたところ、最近の辞書はすべて「己」になっているとのこと。つまり小生の所有する辞書はいずれも古いもので、ここ十年以内にどういう理由からか、阿呆な連中がこの漢字をいじくったものと考えられます。念のためパソコンの文字を調べてみましたら、やはり「己」でした。
最近、歳のせいか愚痴が多くなりました。何卒ご海容願います。

投稿: 木下訓成 | 2009年8月14日 (金) 08時48分

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