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2009年12月 4日 (金)

権力者よ、「パン」と「サーカス」を施すなかれ!

 197回目のブログです。

 もう12月、師走(しわす)、何となく落ち着かない年の瀬となりました。厳しい経済
情勢に変化がないなか、政治、社会、国際関係に次から次へと難問が生じており、
一瞬のやすらぎさえ窺い得ない状態が続いているように思えます。

 今日で臨時国会も閉じられるのでしょうが、この臨時国会では、民主党はフラフラ、
もたもた、右へ左へとするなか、政権与党としての政策を推進しようと、いわゆる
行政刷新会議による「事業仕分け」を一部公開のなかで華々しく演出し、一応の結論
を出しました。

 この点に関しては、国民の支持もかなり高いようです。いままでの自民党的な予算
の組み立て方(ムダ・非効率・癒着・官の隠れ蓑)の胡散臭さへの国民の反感や
反発は半端なものではないものがありますから、それも当然と言えるでしょう。

 しかし、ここに大きな落とし穴があります。

  ノーベル賞野依氏 「歴史の法廷に立つ覚悟あるのか!」 
               事業仕分けのスパコン予算カットに

  ノーベル化学賞受賞者で、理化学研究所の野依(のより)良治理事長は、政府
  の行政刷新会議の事業仕分けで、次世代スーパーコンピューターの開発予算
  が事実上凍結されたことについて「不用意に事業の廃止、凍結を主張するかた
  には将来、歴史という法廷に立つ覚悟ができているのか問いたい」
と述べ、厳し
  く批判した。

  野依氏は「科学技術振興や教育はコストではなく投資。コストと投資を一緒くた
  に仕分けするのはあまりに見識を欠く」
と強調。

  「仕分け人」が「(スパコンは)世界一でなくともいい」と発言したことに関しても
  「中国やアメリカから買えばいいというのは不見識だ。科学技術の頭脳にあたる
  部分を外国から買えば、その国への隷属を意味することになる」
と糾弾した。
                      (11/25 SANKEI MSN ニュース 一部抜粋)

 この「事業仕分け」の場面はテレビで繰り返し報道されたので、国民もよく知って
いることですが、民主党連舫議員サディスティック(残酷なことを好むさま)とも言え
る「科学技術は世界2位でもよいではないか、どうして1位にこだわるのか!」の発言
には、耳と目を疑いました。

 ips細胞開発者の山中教授やノーベル賞受賞者らは、この判定に怒りをあらわに
しました。先端科学技術者らは、薄給の身を省みず、資源のないわが日本国が将来
にわたって生きる道は、科学技術の面で最先端を行くことに尽きるとの強い愛国者
としての信念のもとに日夜、研究・開発に努力を重ねているのです。

 基礎科学技術においては、1位と2位では月とスッポン、雲泥の差、そんなことは、
日頃苛烈な競争に携わっている、わたし達民間企業にいる人達はすべて理解して
いますが、どうして、政治家、それも“必殺仕分け人”と言われる政治家たちは無知
蒙昧(愚かで道理にくらいこと)、不勉強なのか理解に苦しみます。

 今夏の総選挙で、民主党は圧倒的な勝利を得たのですから、わが国を良い方向に
向けるべく、地についた政治を期待したいのですが、上記の発言などを聞くと、大い
なる危惧を抱かざるを得ません。

 民主党は最大の権力政党ですが、劇場型政治、「パンとサーカス」の政治に傾いて
いるのではないかと、一抹の不安を覚えます。(因みに、よく、小泉元首相も劇場型
政治だったではないかと言う人がいますが、小泉元首相は、政治の目標を明瞭に
していたことを考えれば、そうではないでしょう)

 地中海世界を支配した古代ローマ帝国は、属州から搾取した莫大な富により、
わが世の春を謳歌しましたが、権力者が巧妙に施す「パン」と「サーカス」により、
国民が真の労働意欲を失い、規律も乱れ、軍隊も弱まり、やがて周辺の蛮族の
侵入・侵略に耐えられず、滅亡への道を歩んでいきました。

 当時の権力者は、市民を政治的無関心の状態にとどめようと“パンとサーカス”を
無償で提供しました。これは市民の権利ということではなく、為政者の恩寵・恩恵・
施しと理解されていたのです。

 「パン」とは食糧を意味し、小麦粉を無償配給することであり、「サーカス」とは娯楽
を意味し、競馬場・円形闘技場・競技場などで見世物を提供することでした。

 さあ、翻って、今日のわが国の政治は、どのように見ればよいのでしょうか。
かつて、ローマの歴史に登場した「パン」と「サーカス」が、現在の日本で再現しよう
としているのか…これが杞憂であれば幸い!

 民主党政策の目玉である「子ども手当」36,000円、これは、本来低所得者のみ
への社会保障策としてあるべきで、中産階級以上への支給(恩寵・恩恵・施し)は
「パン」と言うべきで、堅実な労働意欲を失わせていくのではないかと危惧します。
もしも少子化対策ということであれば、もっと思いきった金額や別の政策が必要と
なるでしょう。

 次に、マスコミでは、国民はすべて“変化”を望んでいると報道していますが、実態
はどうなのでしょうか。わたしの見方からすれば、本心は“刺激”を望んでいるように
思えてなりません。昨今のテレビや新聞などを見れば、政治面でさえ刺激的要素と
して報道されています。

 わたし自身も、テレビで見る「事業仕分け」の公開場面は、高級官僚であろう人が、
仕分け人の畳みかける質問に対して、明確に返答もできずもぐもぐ口を濁すところ
など、「正義の味方」VS「無駄遣いする悪者」という痛快なドラマを見ているよう
でした。例えれば、江戸時代のドラマである“水戸黄門と悪徳代官”の光景そのもの
であり、それが、この現代において、再現されているような感じでしょうか。

 さらに別の見方をすれば、これは、ローマでのコロセウム(円形闘技場)での人間
同士の決闘(殺し合い)を観ているようで、大変刺激的で面白く、まるで“現代日本版
コロセウム”
とも思える雰囲気です。まさしく「サーカス」であり、誰しもサーカスでない
とは言えないと思います。

 しかしながら、政治は、本来、刺激的娯楽ではなく、長いスパンで考えるべき献身的
な営為であり、静謐な場での熱い議論が行われるべきではないでしょうか。そのため
には、高度な専門的知識は不可欠というべきでしょう。

 
 「事業仕分け」などは、極めて有益
なことであるだけに、決して「サーカス」にならない
よう極力留意し、実質的・マクロ的議論の元に判定が下されなければなりません。

 民主党は総選挙の勝利からすでに3ヶ月、もう甘い評価をしてもらうハネムーン
期間は過ぎようとしています。これからは、ダイナミックにオーソドックスな政治を
すすめて欲しいと思います。

  民主党はどんな日本を描いているのか、政治目標を明確にしてほしい。
  マクロ経済成長政策を提示されたい。(現在、経済政策はゼロであり、世界の
   金融市場から、バカにされ、無視されている)
  くれぐれも、日本および日本国民のための政治を望みたい。

 小澤幹事長(実質総理)、鳩山首相にもの申したい。わが国や国民を「パン」と
「サーカス」に堕することだけは避けていただきたいと思います。なぜならば、「パン」
と「サーカス」は凛とした国民精神を弛緩させ、国を滅亡へと導くことに繋がります
から。

 パンとサーカスについて考えてみました。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回も
時事エッセー
です

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コメント

歳入増は「国民の理解得られない」といって封印。にもかかわらず、パン&サーカス配給は盛ん。為に、借金は雪だるま。

国民の預貯金が沢山あるので、借金は平気と言うことですかね?輪転機を使わなくてもOKと言うことですかね?

投稿: 小澤厚夫 | 2009年12月13日 (日) 16時46分

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