“増税”か“国債”か…復興への道筋を考える!
274回目のブログです。
“ 汽車の旅 とある野中の 停車場の 夏草の香の なつかしかりき ”
(石川啄木)
知人の所へ行くのか、仕事を見つけに行くのか、いずれにせよ汽車の旅。乗り継ぎ駅で途中下車して夏草を見ていると“故郷”(ふるさと)を思い出すが、そこでは苦しかったけれども、友の顔、顔がなつかしい。今、一層苦しい難局にあるけれど、どうにかして乗り越えたいものだ…。
東北と言えば、貧困と孤独の石川啄木ですが、今も避難生活者は十万人を越え、啄木以上の苦しみの最中にあります。彼らもこの難局を一刻も早く乗り越えたいと願っているはずであり、それを本格的に支援するのが「真の政治」というものではないでしょうか。
現在、復興への道筋は明確ではありませんが、とりあえず、第一次補正予算は可決し、その速やかな実施が望まれているところです。ところが、政府(菅内閣)のモタツキ具合は尋常ではなく、その統治力に、大いなる疑問符が投げられており、誠に嘆かわしい限りと言わねばなりません。
復興のことを真面目に考えれば、第二次補正予算案などを早急に立案、成立させなければならない段階ですが、その難題がお金、銭、財源です。財源を見つけ出すなり、生み出すなりして、確保しなければ、何事も絵に描いた餅になってしまいます。
菅内閣・民主党には、自らの夢、願望、イデオロギーを実現しようとしても、財源を確保する能力(政治的情熱・知識・知恵・政治力)が決定的に欠けていたために、マニフェスト違背、嘘だらけの公約となり、先の参議院選挙、統一地方選挙で大惨敗するという「暗~い過去」があることに留意しなければなりません。
さて、菅政権肝いりの「復興構想会議」が4月14日にスタートしましたが、五百旗頭(いおきべ)議長は、何と、冒頭あいさつで「復興増税」を唱えました。
復興構想会議は復興企画案の議論を煮詰めていくことが先決であり、それらの案を実現するための財源をどうするかはその後の議論のはずです。本末転倒はなはだしいと言わねばなりません。とにかく初めに増税ありきという財務省の手のひらでヒラヒラと踊るようでは、決して日本の英知と言うことはできません。まず、復興案が先だ!
今回の大震災による損害は直接的な被害だけでも16兆~25兆円であり、それに関連する経済損失を合わせれば48兆円の公的支出が必要になると言われています。
その48兆円を賄う復興財源にはどんなアイデアあるか、整理してみましょう。
(1)現状財源捻出 ①予算の組み替え(子ども手当など)
②埋蔵金
(2)国債発行 ①震災復興国債(日銀引受)
②無利子非課税国債
(3)増税(復興税) ①特別消費税(税率UP・使途復興限定)
②特別法人税( ∥ ∥ )
③社会連帯税(所得税率一定割合上乗せ)
上記のうち、何が上策かを真剣に考えなければなりません。まず、予算の組み替えや埋蔵金摘出は徹底的にやるべきです。子ども手当などに未だに拘泥し続ける民主党を見れば、民主党はこれらに対し、どうも及び腰、弱腰、知識不足、理論不足、本気度がないと言えます。政権奪取の意気込みは何処へ行ったのか!もしも本気度がないとするならば、その嘘をソフトコーティングしたハッタリに拍手喝采した国民が愚かだったと見なさなければならないでしょう。
今、菅内閣、政府、復興構想会議や一部の経済学者はさかんに「復興税」を一般化しようとしていますが、その問題点を指摘します。
① 震災後の自粛ムードはやや沈静化したものの、国民自身が現状の生活を見直そうしている時、増税が実施されると、内需は急激に落ち込むであろう。
② 民間の消費や投資に必要とされる資金が政府に吸収されると、それでなくても震災で打撃を蒙っている経済において、ますますデフレ傾向が強まり、円相場が上昇し、輸出産業に大きな打撃を与える。
③ 阪神大震災(平成7年・1995)の後に実施された増税経済政策(消費税3%→5%)を例にとれば、増税は税収を減らす恐れがあることを認識しなければならない。貴重な経験を生かすべきだ!
④ 東日本大震災復興の負担を全国民で分かち合うために消費税アップを!」という発言をよく耳にするが、これは、情緒的、精神的に共感させようとする上手いレトリックというべきであり、経済的には却ってマイナスになることである。国民すべてが分かち合う負担は将来にプラスになることでなければならず、方策は他にもたくさんある。
⑤ 今は、とにかく、デフレ脱却の政策を採用することしかないのだ!
⑥ 『震災や金融危機のような経済ショックに「増税」で即応した政権は、古今東西、聞いたことがない』(名著「後藤新平・日本の羅針盤となった男」の著者、山岡淳一郎氏の言葉)
以上で分かるように復興税、増税は現下では大いに問題ありとしなければなりません。それでは、国債について考えてみます。
① 国債を発行すれば国債金利が上昇し、いわゆる信認が低下するとの議論があるが、年間10兆円や20兆円そこらで信認が低下することはない。これは債権関係者の発言であり、株式関係者は国債発行を歓迎しており、問題ではない。
② 日銀の国債引き受けは「禁じ手」だということが一部でいわれているが、これは真っ赤な嘘である。なぜなら、毎年行われている事実があるからだ。
③ 日本は国連加盟国約200ヶ国のほとんどに金融債権を持つ債権大国であり、そのメリットを生かすべきである。
④ わが国が震災復興国債を発行しても問題がない背景には、膨大な金融資産があることを認識しよう。おおよその金額は次の通り。
・外貨準備金 100(兆円)
・対外貸付債権 200
・埋蔵金他 100
・国民金融資産 1400
(合計) (1800)
⑤ 現在公債残高は900兆円であるが、金融資産が上記のように豊富にある。また「国債利払い/GDP」は先進国で最も低い。従って国債発行の余力は大幅にある。
⑥ 復興国債の緊急発行に含まれる問題点は何もないことは、誰が考えても動かしがたい真実である。
要するに、今、求められることは、大震災を奇禍として、復旧・復興へ大胆な政策を即時実施することであり、その財源は理論的にも、実際的にも、大幅な「復興国債」でなければならないことは自明というべきです。
それよりも、併せて、「デフレ」脱却への諸施策を早急に立案、実施すべきではないでしょうか。増税を考えるのは愚の骨頂であり、5年後に景気上昇に向かった時から、消費税アップ(年率1%を5年間・最終的には10%)に梶を切るべきだと考えます。
それにしても、政治には「民無信不立」“民は信なくば立たず”(論語・顔淵12章)という言葉がありますが、これに関した世間の噂話をご紹介します。
武田信玄には「風林火山」という有名な軍旗(旗指物)がありますが、これには孫子から引用した素晴らしい文言が記されています。
疾如風 (はやきこと風の如く)
徐如林 (しずかなること林の如く)
侵掠如火(しんりゃくすること火の如く)
不動如山(動かざること山の如し)
この「風林火山」をもじって、菅首相は、巷間(こうかん・世の中)、次のように評されています。
“言葉の軽きこと風の如く”
“見通し無きこと林の如し”
“責任転嫁すること火の如く”
“何もせざること山の如し”
これは、一種の戯言(ざれごと)でしょうが、いやしくも日本国首相たる者が、国民からこのように評されていることは、悲しいことです。あらためて“民は信なくば立たず”を考えざるを得ず、もう、即時お辞めになるか、あるいは、堂々と解散で信を問われてはと思う今日この頃です…。
それにしても、一日も早い復旧・復興とデフレ脱却への道を示してほしいと願うばかりです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です
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