“チャリティ”と“祈り”…東日本大震災に思う⑧
273回目のブログです。
“ 偽りの なき世なりせば いかばかり 人の言の葉 嬉しからまし ”
(読み人知らず)
この世に、もしも虚偽(きょぎ・うそいつわり)というものがなかったならば、人の発する言葉がどんなに嬉しく感じられるものだろうか…。
(心地よくうつくしい言葉も、手放しでは喜べないものだという気持ちを詠んだ歌でしょうが、偽りの言葉、真なき言葉、心に響かぬ言葉…何か、どうしても私欲が強く強く感じられて仕方ない菅首相のことを嘆いているような気がしてなりません)
東北大地震が発生して、はや2ヶ月を経過しましたが、茫然自失の時はとっくに過ぎ去り、着々と復旧へのにぎやかな槌音が聞こえなければならない時期でもあります。
ところが、復旧・復興への歩みはノロノロ、善意の義捐金(ぎえんきん・義援金)も未だ届かず、原子力発電関係は混迷の極み、まさに政府機能が半身麻痺の状況という憂慮すべき事態に陥っていると考えられます。
このような時、先日、チャリティーコンサートに行ってきました。
【東日本大震災支援チャリティーコンサート】
顔晴ろう(がんばろう)ニッポン!
手をつなごう関西!
What a Wonderful World in KANSAI
平成23年(2011)5月14日(土)
万博記念公園
わたしの住まいは、たまたま万博記念公園のすぐ近くであり、この公園は自分の庭みたいなもので、月に1~2回はウォーキングをしています。開演は12時、終演は17時30分。なんと5時間30分という長時間を、炎天下で、それも休憩なしで聴くわけですが、それはそれ、結構楽しいものでした。
今回のコンサートは関西のメディア(TV・ラジオ・新聞・雑誌など)と音楽関係者が協同し、関係者すべてがボランティアとして参画したものです。日頃のライバルが呉越同舟、国難に少しでも対処、協力しようとのことで、心に清々しさを覚えます。
ミュージシャンとしては、急遽の開催にもかかわらず、それなりの方々でした。
山村隆太・阪井一生(flumpool)(ボーカル・ギター)
高橋優(シンガーソングライター)
キマグレン(ボーカル・アコースティックギター)
スターダスト・レビュー(ボーカル・ギター/バス/ドラム/パーカッション)
WEAVER(ピアノロックバンド)
スキマスイッチ(音楽ユニット)
加藤登紀子(シンガーソングライター)
HOUND DOG(大友康平・ロックバンド)
The NO PROBLEMs(セッション集団/ 歌・ダンス・絵)
細美武士(シンガーソングライター・ロック)
miwa(シンガーソングライター)
植村花菜(シンガーソングライター・「トイレの神様」)
藤井フミヤ&藤井尚之(元チェッカーズ)
Char(ギタリスト・シンガー)
渡辺美里+DEPAPEPE(JPOP・インストゥルメンタル)
海援隊(フォークグループ・武田鉄矢)
これらの著名なミュージシャンが、チャリティで心を込めて熱唱、熱演されたことに、会場の15,000人も大いに感動し、あらためて東北の復興、生々とした日本の復活を心に刻んだことだと思います。それにしても、素晴らしいチャリティーコンサートでした。
ミュージシャンと彼らを取り巻く人たちの清らかな“チャリティ精神”に触れましたが、一方、忘れてはならないのは、世界的な“宗教者の祈り”です…それは誰あろう、かの「ダライ・ラマ14世」です。
私は寡聞にして知らなかったのですが、東日本大震災発生後49日目の4月29日に、ダライ・ラマ14世は東京・護国寺で厳粛なる法要を営みました。
現在、チベット(民族・国・宗教)は中国から自由を奪われ、弾圧、虐待、虐殺という「政治的大津波」を受けており、まさに生命の危機にさらされている状況にもかかわらず、わが日本国の大震災の犠牲者のために“祈り”、被災者を励まされたのです。
大手メディアは、ダライ・ラマ14世の心こもる法要も、現在のチベットが受けている政治的大津波も一切報道していないこと、さらに、政府(菅民主党内閣)が、ダライ・ラマ14世に対して感謝の意さえも表明していない事実…これは、おそらく中国に媚び、配慮し、卑屈になったものでしょうが、まさに異常と言うべきであり、人間性のかけらも感じられません。何と心の薄汚いことよ。
それでは、ダライ・ラマ14世のお話に耳を傾けましょう。
◆ ダライ・ラマ法王 法話
「東日本大震災49日法要」平成23年4月29日 於護国寺
『四大・五大(地・水・火・風の四つの要素が合わさって身体ができているという考え方が四大、それに空を加えて五大)という仏教でいう世界の構成要素がありますが、その構成要素がバランスを崩したことから生じてくる自然災害において、悲しい出来事が起こってしまったということに対して、地震や津波に加えて原発事故と様々な苦しみを皆さん被ったわけですが、地震は天災ですが、原発事故は人間地震がつくった人災です。
たくさんの友人がいる日本の皆さんが苦しんでいることに、私自身が悲しいし
苦しい。
地震が起きた時に私はダラムサラにおりまして、ちょうどタイからきた友人たちに13、14日と法話をしていました。
被災地において被災された方に対して、ここにいる全ての方々に般若心経を10万回読んでくださいというお願いをさせていただきました。
仏教徒の一人の修行者・実践者の観点から申し上げますと、何か逆境に立たされたような場合、その逆境に立ったというその状況を自分が悟りに至るための道の一つとして使う、という修行の方法が説かれています。
つまり、そのような酷い逆境に立たされてしまった、困難が起きてしまった場合、既にそこに起きてしまったわけで、それを無くすことはできないわけです。ですから、このような悲しいことがおこった、というように悲しんで心配するだけでは、何の役にも立たないわけです。
そこでシャーンティデーヴァ、日本語でジャクテンという同志の方がお書きになった「入菩提行論」というテキストがございます。その中でこのように述べられています。
「もし何事かがおきて、それを何とかする方法があるならば、対策を講じる努力をするべきである。そして、それを何とかする方法が無いのであれば、それをより以上に悲しむ必要は無い」
この教え、アドバイスは非常に科学的といいますか、非常に現実的な、毎日の日常生活に即した教えとなっているとわたくしは思います。
ですから、皆様方も、そのように考えてもらいたいと思うわけです。起きてしまったことは、もう取り返しがつきません。
その代わりに、落胆して勇気を失くしてしまうということではなく、これから先を見つめて、できる限りの努力、再建復興のために努力をしていっていただきたいと思うわけです。
私たちは自分の国、チベットを失って以来、たくさんの多くの困難に直面して
きました。
このような多くの困難の中で、私たちはより強く自分自身の精神、内なる力というものを高めてくることができたのではないかと、そんな気がしています。
皆さんも現在のような困難な状況の中におられる時には、打ち負かされるのではなく、現実の在り様というものを正しく理解するということによって、自分自身の状況への対処の仕方を、より強めていっていただきたいと思います。
特に日本の方々は、第二次世界大戦後、非常に多くの損害を受け、国土も多く破壊された悲しい状況の中から、立派に立ち上がってこられた民族です。
つまり、そのような悲しい状況の中で、多くの日本の方々が尊い命を失ってこられたわけですが、さらに、長崎と広島において原爆が落とされても、日本の兄弟姉妹の皆さん方はそれに落胆することもなく、焼野原の中から立ち上がられた、という過去の実績があります。
ですから、今回も是非、皆様方が自信を失うのではなく、前向きな姿勢で進んで行っていただきたいと思っています。
今現在は非常に難しい、つらい状況に直面されていると思われます。そして経済的にも様々な問題があると思いますが、自信を維持して、悲劇のことばかりを思い出して、それについて心を痛めるというばかりではなく、前を向いて、将来を見つめて進んでいっていただきたい。皆様方は計り知れない心の力をもっておられます。
現在、私たちは地球温暖化というものに直面しております。世界で災害というものが次から次へとおきてくるものだと思います。
心の中でも準備していかなければならない。私たちは何かがおきたらならば、キチンと調べて対処していかなければならない。そのような生き方をしていかなければならない。
これからの未来に対して一切のギャランティがないわけです。物事というものは常に変化をしていきます。
この世の中には、非常に贅沢な暮らしをしているような、工業や科学技術が発展した国々がたくさんあります。そのような国であっても、この世界は次から次へと新しい状況に直面していきます。
贅沢な暮らしをしている国の中でも、貧しさというものと闘い続けなければならない方もいるわけです。
日本は非常に小さい国でありながら、人口密度が非常に高い国となっています。限られた場所を有効に使うという能力に長けた国だとも思います。この世界には、まだまだ空いている土地というものがたくさんあります。
そこで、日本の皆様方の能力と知識を活かして、そのような土地を有効に使うこと、そして、環境を破壊することなく、それらの土地を活かしている能力と知識に長けているわけですから、そのようなことのために前進していっていただきたいと考えています。
だから日本の人たちには是非、世界に出て行ってもらいたいと思っています。
そのために若いうちから英語を話せるように勉強してもらいたい、と日本に来るといつも言っています。』
素晴らしい、分かりやすい法話ですね。あらためて、ダライ・ラマ法王に感謝するとともに、尊敬の念を一層強くします。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です
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コメント
台湾からの義援金がアメリカに次ぐ巨費でありながら、日本政府は謝意を表すことに冷淡。中国の顔色をうかがってはへつらうばかりである。ダライラマのこのような祈りも「全く知らなかった」。
マスコミというものに見識があるならば、少なくとも
対立する双方を、「公平」に扱うべきだろう。
投稿: kamakura | 2011年5月20日 (金) 09時52分