イギリス暴動…日本は大丈夫だろうか!
286回目のブログです。
“ 夏と秋と 行き交ふ空の 通ひ路は 片へ涼しき 風や吹くらむ ”
凡河内躬恒(おおしこうしのみつね・平安前期)
(三十六歌仙・古今和歌集)
去っていく夏と来る秋とがすれ違う天空の通路では、片側は来る秋の側で、もう涼しい風が吹いていることだろう…
新暦8月8日は立秋。まだまだ猛暑、熱暑が続いており、なかなか立秋のイメージが湧いてきませんが、古の歌人は、人とともに存在する「自然」というもののなかで、空の通い路に秋風を想像するという豊かな感受性を示しています。その感受性が三十一文字に表現される和歌は、わが国の伝統芸術として、今や歴史そのものであり、あらためて誇らしく思われます。
■ 英国の暴動
英国でロンドンから他の主要都市へと広がった若者の暴動は沈静化までに1週間近くを要した。略奪が続き、死者が計5人、逮捕者は二千数百人にのぼる。日本人も襲われ、ソニー現地法人の倉庫も放火された。
成熟した民主主義と福祉社会を誇るはずの「紳士の国」で起きたことが衝撃である。社会規範の崩壊、倫理の喪失などが指摘されているが、なぜこれほどに無法が拡大したのか。来年はロンドン五輪が開催される。英政府は原因を徹底究明し、万全の再発防止策をとる責務がある。…
(8/17 MSN産経ニュース一部抜粋)
わたし達は学校教育でイギリスは揺りかごから墓場までの福祉社会であり、成熟した民主主義のお手本であると教えられてきましたが、現実はそれとは程遠く、現在のイギリスは幾多の問題を抱えているようです。
暴動は8月6日夜のロンドン北部で若者が中心となって最初に発生し、8日にはロンドンの他地域に、さらに中部バーミンガム、ロンドン南部、北西部のリバプールなどの中都市に燎原の火(勢いが盛んで防ぎとめることのできないさま)のごとくひろがっています。
現在も厳戒態勢がとられており、暴動の原因は何かについては侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が沸騰していますが、これといった決め手はないようです。その中で考えさせられる事柄も多く、整理してみましょう。
① 若者に広がる閉塞感(失業率の高さ)
金融危機への対応で急速に悪化した国家財政の立て直しのために、超緊縮財政を余儀なくさせられ、現キャメロン政権は社会保障費を大胆に削減、失業手当の厳格化も進めている。
また、若者の失業率は高く増加の一途をたどっており、未来への明かりは見えてこない状況である。若者の失業率は約20%。16~24歳人口の15.6%がニート(就学も就業もせず職業訓練も受けない若者のこと)。このまま行けば今後5年間で同世代の失業者は120万人になると予測されている。
ニートの若者が暴徒化し、放火や略奪を繰り返し、警察はなすすべを失い一時は法と秩序が失われたが、これは要するに、景気低迷で社会から疎外された若者の欲求不満が爆発したということである。
② 多文化政策(移民)の誤り
英国キャメロン首相は、講演で「イギリスの多文化主義は失敗した。慈善のような移民の受け入れをすべきではなかった。英語を話せなかったり社会に同化する意思のない移民はコミュニティを分断し不必要な緊張や衝突を生んでいる。イギリスは移民を多く受け入れすぎ、今後80年代のレベルまで減少させる。イギリスの国境は絶対に開放されない」と述べましたが、これは注目すべきことである。
ヨーロッパ各国も同じような見解を示している。独メルケル首相は「多文化社会の試みは失敗した。移民政策は見直す」と言い、仏サルコジ大統領も「フランスの多文化主義も失敗したと明言できる。フランスを愛さない移民には思い知らせる」と厳しい口調で指摘した。
また、ロシアのマルゲロフ委員長(上院連邦会議国際問題委員会)も、イギリスでの事件の主な原因として、多文化政策の失敗にあると見ている。(The Voice of Russia)
③ 福祉政策の行き過ぎ
中央集権的で非人格的な福祉国家が今回の暴動の原因である。失業者や生活保護受給者は顔の見えない国家から当然のごとく失業保険などの各種のベネフィットを受け取る。そして、一人で働かなくても生きていけるから、家族・地域社会の絆は崩壊する。
さらに人々の勤労意欲も削ぎ、失業率を増加させ格差も拡大させる。このことが根本的な暴動の原因である。失業や格差・人々の規範の緩みなどは「過剰な福祉制度」の結果起こっている兆候であって暴動の真の原因ではない。(ブログ「ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ」中のadam smith instituteより)
④ ソーシャルメディアによる不良の組織的暴動
ソーシャルメディアは個人が発信する情報が不特定多数のユーザーに露出され、ユーザー同士のつながりが促進されるさまざまな仕掛けがなされる。今回の事件は、社会的に不満を持つ不良の若者がツイッターやスマートフォンの匿名機能を利用し、暴徒化させたものである。
これはエジプトの民衆革命とよく似ているが、イギリスの暴動の背景には政治的主張は少なそうである。
暴動の原因はその他いろいろあると思いますが、ことをわが国にあてはめてみれば、特に、①若者の失業率の高さ、②多文化主義の反省については考えさせられます。
菅首相は就任時、根本政策を「一に雇用、二に雇用、三に雇用」として失業率の大幅改善を唱えましたが、なかなか口先だけでは思うに任せず、失敗におわりました。わが国はとにかく“経済成長”なくしてパイの分配もありえず、ましてや雇用も確保できないことは自明であるにもかかわらず、その政策を実行しようとするリーダーが存在しないことに問題があると考えます。(特に民主党は分配面にのみ着目し過ぎではないでしょうか)
とにかく、失業問題への抜本的取組み(…即ち成長戦略への道を立案施行する)をしなければならないことは、英国の暴動が示唆してくれています。
次に「多文化政策」ですが、ヨーロッパ各国の深刻な失敗例をみるにつけ、わが国は、多文化政策に一層も二層も慎重にならなければなりません。今年7月に93人の死者を出したあのノルウェーの銃乱射事件(移民増加に反対)も併せて深刻に考えなければならないのではないでしょうか。
・在日外国人(南北朝鮮、中国、他)への参政権付与法案
・人権擁護法案(国籍条項なし)…成立まぢか・大変な世の中になりそう!
・1000万人移民政策
・外国人犯罪者(特に中国・南北朝鮮)の増加
・スパイ防止法
・海洋国家日本の防衛
問題点はいろいろありますね。この問題を深刻に受け止めるべきだと考えます。ヨーロッパのように「後の祭り」にならぬように、上記の案件について真剣に考えようではありませんか。
そしてもう、何らかの前進策を講ずべき時が来たと思います。例えば、在日朝鮮(北&南)の人々については、過去いろいろあったでしょうが、もういい加減問題のケリをつけるべきではないでしょうか。今や戦後60数年にもなるわけですから、2世代は過ぎましたので、期限を切って(たとえば10年後)帰化されるか、帰国されるかを決着してもらうべきであり、そうしてはじめて、隣国との正常な関係を構築できるのではないかと考えます。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です
| 固定リンク
コメント
先週、出張でBA機に乗る機会があり、英字紙のIndependentを読みました。ちょうどAレベル(英国の大学進学資格試験)の合格発表があった直後で特集記事が組まれていました。良い結果が出なかった人(=大学進学を断念する人)への配慮として、apprenticeship制度のお薦めのような体験談紹介もありました。いずれにしても、英国の教育制度では、大学進学をかなり狭き門にしていることを知りました。
ちなみに、特集の中でIndependentのExecutive EditorをしているLisa Markwell氏自身も大学進学を断念して実社会に入り、女性誌の下働きの仕事からたたき上げたと紹介されていました。Apprenticeshipを「徒弟制度」の訳で覚えており、鍛冶屋の親方のもとに奉公にいくようなイメージで理解していましたので、そういう制度は過去のものだろうと思っていました。それが、現実に生きていることを知って驚いています。その一方で、若年層の失業率が高まっており、かつては実業界で受け入れていた若者が今はニートになって、その数も多数になり、今回暴動に参加したという実態もあるようですね。
こうしてみると、日本における大学の存在というのは若者に実社会に出るまでの準備期間を提供していることで重要な存在なのだなと改めて思ったりしています。
投稿: 某私大講師 | 2011年8月28日 (日) 16時43分
イギリスの暴動に思われるお説には100%感じ入ります。 最近日本国債の格付けが下げられ、無見識な日本のメデイアは”日本政府の大幅な財政赤字ゆえ、、、”として、増税を画策する財務省の報道役にやっきです。
私の信頼性の高い在米の友人達に打診しますと異口同音に”日本の財政赤字がほぼすべて国民預金で支えられている事は海外の財政専門家は熟知していている。今回の格下げは日本政治・政府の体たらくに対する国家全体の無気力へさの警告であると、、、”
投稿: 岡村昭 | 2011年8月26日 (金) 11時38分