内閣支持率70.8%の怪!…幼い政治感覚を憂う
289回目のブログです。
“ 野辺見れば 撫子の花 咲きにけり
我が待つ秋は 近づくらしも ”
詠み人知らず(万葉集)
野原をみわたせば、撫子(なでしこ)の花が一面に咲いており、わたしが首を長くして待っている「秋」はもうすぐそこまできているようである…。
超台風と言えばいいような台風が雨と風による甚大な被害をもたらしましたが、日本列島は、地震、津波、台風が幾度となく押し寄せる「天災列島」の感を強く持っているこの頃です。
被害にあわれた方を除けば、万葉集の歌にあるように、待ち焦がれた秋が確実に訪れ、それなりの風情も楽しめる時を迎えようとしていますが、巷(ちまた・世間のこと)では新内閣が発足し、それに期待する声がかまびすしくなっているようで、いろいろと考えさせられます。
さて、9月4日(日曜日)、フジテレビ系列で放送された「新報道2001」において世論調査結果が発表されています。(首都圏成人男女500人・電話調査)
【問】あなたは次の衆議院選でどの党の候補に投票したいですか。
(8月18日調査) (9月1日調査)
民主党 14.6% 25.0%
自民党 30.8% 24.0%
(他政党略)
【問】あなたは菅内閣を支持しますか。
あなたは野田内閣を支持しますか。
(8月18日調査)(9月1日調査)
対象:菅内閣 対象:野田内閣
支持する 17.6% 70.8%
支持しない 78.0% 21.8%
(その他わからない略)
(同じような調査は各メディアで行われており、例えば朝日新聞の全国緊急電話世論調査では、野田内閣支持は53%、不支持は18%となっています。)
毎度のこと、自民党時代と同じように、首相が変わっただけで支持率がアップする現象(17.6%⇒70.8%)に不思議な気持ちとともに大いなる疑問を抱かざるを得ません。特にどういうわけか、今回はアップというよりも“超激増”です。
これについて、テレビや新聞での政治評論家は、何らの疑問さえ懐いておらず、もはや「政局」評論家という存在になっています。もう少し、政治の本質を指摘してしかるべきではないでしょうか。
明治以来、わが国は立憲君主制(天皇をいただき憲法に順う政体)のもとでの政党政治を展開してきました。「政党政治」をベースにしてきているのですが、わたし達国民の意識がそれについていっていないことの証明が、今回の超激増した内閣支持率となって表れています。
ビジネスマンが一般的に行うように、物事の判断を論理的に、常識的におこなったとすれば、次のようになると思われます。
① 国民が政党政治を真に求めているとすれば、わずか2週間で17.6→70.8%に激変することなどありえない。どう考えてもおかしい。たとえ、総理大臣が菅氏から野田氏に替わったとしても、しょせんは同じ民主党ではないか。政策実施は民主党の総意でもって行われており、劇的な変化など有りうるはずもないにもかかわらず、シャッポが替わったという一事で、国民は「新鮮なムード」を感じているようだ。
② わたし達国民は深刻な政治課題をムードで判断しているのではないか。
③ 民主党の無責任さは看過できない。それは、民主党が「綱領」をもっていない政党であることだ。綱領が無いので愛国的であろうが売国的であろうが、増税であろうが減税であろうが、国民のためであろうが自分のためであろうが、どんなことであれ何をやっても問題とならない無責任さに繋がっている。
④ 民主党は政権与党であるにもかかわらず綱領がないため、左右上下まとまりがつかず、マニフェスト(政権公約)が唯一の「準綱領」とみなされており、そのマニフェストを3党合意でもって何の反省もなく反故にしているのは、民主党が民主主義「政党」であることから遠い存在であると判断してもよいのではないか。
⑤ わたし達国民は、現行憲法の“他者は性善である”という 性善説を刷り込まれているために、政治的な幼さから脱却できず、ひよわな国民になってしまっており、国の基盤がガタガタしていると思わざるを得ない。
そもそも、政党とは、共通の理念や政策をもち、その実現のため政権を担当したり、政権獲得を目的とした政治活動を行う団体であり、イギリスなど多くの国では、政策や綱領の一致は政党の生命であると見なされています。
菅前総理をはじめ民主党の議員にはイギリス型政治を理想とする人がかなりいますが、イギリスの著名な思想家で政治家のエドモンドバークは、政党とは「全員一致して、特定の主義に基づき、国民的利益を増進するために結ばれた一団」としています。
そうであるならば、都合のいい「つまみぐい」ではなく、国民的利益を増進させるための共通の理念や主義を示す、本格的な「綱領」を早急に掲げるべきであり、それが出来ないのであれば、政党としての資格を欠くものであり、いくつかに解党すべきです。それが、日本国民としての、また議会人としての誠実さを示すものではないでしょうか。
また、今回、準綱領(マニフェスト=政権公約)を変更したからには、3ヶ月以内の早期解散により「信」を問うべきでしょう。これは憲政、政党政治の常道だと思います。
(ところで、先日来、フジテレビの偏向捏造報道が一部で伝えられています。新報道2001調査には、他のバラエティ番組とは異なり、捏造データは決してないだろうと信じてはいるのですが…。ただ、どのメディアにも言えることですが、調査統計誤差率を明示してほしいと思います。)
それにしても、わたし達は、内閣の評価なんて、もっと落ち着いてすべきではないでしょうか。また、いろいろなメディアが調査していますが、識者によれば、オーソドックスな質問と永い調査歴史を持っている時事通信のデータが一番信頼できると言われているそうです…。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です
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コメント
まったくお説の通りと思います。国民一般のよく言えば無邪気、悪く言えば無見識、ムードで物事を決めるのは、「空気」が最高決定権を持っているようです。
8月の戦争番組などでも、なぜそういう事が決まったのか?という問いに対しては「そういう空気だった」
「とても反対できる雰囲気ではなかった」というのが大方の結論です。
民主党は政党ではないと思います。
新首相も当たりは柔らかで誠実なようですが、調整と融和だけで一国のかじ取りはできないでしょう。町内会長にはうってつけでも、首相は憎まれようが反対されようが断固として踏み行う信念と広い見識、何よりも勇気が必要です。
それにしても、史上最低の首相を2期連続して出した責任を取るべきです。
投稿: kamakura | 2011年9月 9日 (金) 14時31分
堂々の論陣、緻密な卓説。
ところで、その論拠となる、「世論調査」なるもっともらしいデータについて。
この手の調査は、タレントの人気ランキンク程度の信頼性しかありません。なぜなら回答者がすでにしてこういう調査に対する想定問答集的模範解答を、あれこれの雑情報から吹き込まれているためです。まさしく輿論調査ではなく世論調査なのです。
各メデイアによって、数値に幅があるのも、そのメデイアの論調に迎合した(洗脳された)程度を表しています。
いまどきの「調査」なるものについて、答えるべきことばは、「あっそう」の一言のみ。(昭和天皇のお声が
蘇ってきます)
投稿: 被災者k | 2011年9月 9日 (金) 11時28分
民主党はとくにメルトダウンした政党です。総選挙すべきは当然なのです。しかし政府の報道機関化した大手メデイア報道に国民的な反撃運動(不買運動など=私は新聞購読をとっくに中止しています)が国家維持の為にもっとも必要と認識して行動しております。
投稿: 岡村昭 | 2011年9月 9日 (金) 10時38分