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2011年9月30日 (金)

秋・秋・秋の空!

 292回目のブログです。

“わが心 なほ晴れやらぬ 秋霧に ほのかに見ゆる 有明の月 ”
源公胤(平安末期歌人・三井寺僧正)

 わたしの心は、まだ晴れきらない秋の霧のなかで、微かに、ぼんやりと見えている有明の月のようだ…。

 心の曇りが晴れるような何か良いことがありそうな兆候を感じている和歌ですが、世の中は、今年は何か悪いことばかりが集中して起きており、もうぼつぼつ、一つくらいは良いことが生じて欲しいものです。はたしてそんな兆候はあるのでしょうか。

 そんなことをぼんやり考えながら、先日、好天の日、久方ぶりに近間を散策(ゆっくりとしたウォーキング)しました。空は透き通るような澄み切った青色、その中を柔らかな白い雲がふわりふわり、まことに見事な秋の空に、一時ではあっても心が洗われる思いがしたところです。

 散策の途中、空の色があまりにも深みのある青色であり、これは何色と表現すればいいのかなと考えたとき、ふと、わが国の伝統色(Japanese Traditional Colors)を思い浮かべました。

わが国の伝統色の系統は、ピンク、赤、オレンジ、茶、黄、緑、青、紫、白灰黒の9系統に分かれますが、すべてを数えれば数百にもなります。

 その日本の伝統色は、わたし達が親しんできた自然の恵み、即ち天空の太陽・月・星・空・雲、地上の水・海・火・土・鉱物・動物、四季折々に変化する花・葉・木、などの豊かな色合いを微妙な表現で正確に取り入れてきたものです。

 ここでは、青系の色について見てみましょう。青は澄み切った青であり、心の清らかさを示しているように思えます。

“白鳥は かなしからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ”
若山牧水(歌人・明治18年~昭和3)

 「青色」と言えば、わたしは真っ先に若山牧水を思い浮かべます。空の青、海の青に白い鳥、これはかもめでしょうか、…牧水の詠った情景が目に浮かぶようです。

“秋の空昨日や鶴を 放ちたる”
(与謝蕪村)

 与謝蕪村の俳句も絵画のように鮮やかであり、まさに眼前に秋の空の風景が浮かぶようです。

秋の空は青色、…英語ではどんな青系の色があるのでしょうか。

  Indigo → 藍色
Blue → 青
Ultramarine → 群青色
Cobalt  Blue → コバルトブルー
Turquoise  Blue → ターコイズブルー
Blue  Black → 濃紺

 一方、わが国の伝統色で、青系には次のような色があります。

   甕覗(かめのぞき) 緑がかった淡い藍色
水浅葱(みずあさぎ) 淡い浅葱色
浅葱(あさぎ) 葱<ネギ>の青みの色
納戸(なんど) 緑味をおびたくすんだ青色
(はなだ) 納戸より濃く紺より薄い色
(こん) 藍染で一番濃い色
褐紺(かちこん) 藍染×藍染、赤みを帯びた褐色紺
露草(つゆくさ) 夏に咲く青い花の色
空色(そらいろ) やや紫がかった淡い青色
新橋(しんばし) 明るい緑がかった薄い青色
群青(ぐんじょう) 赤みのすくない澄んだ紺系統
白群(びゃくぐん) 白みの淡い青色
瑠璃色(るりいろ) 青金石(ラピスラズリ)の色
紺青(こんじょう) 冴えた紫みの濃い青色


 その他、舛花色(ますはないろ)・留紺(とめこん)・青鈍(あおにび)・青黛(せいたい)・藍鼠(あいねず)鉄紺(てつこん)・藍(あい)・水色(みずいろ)・千草色(ちぐさいろ)・錆納戸(さびなんど)茄子紺(なすこん)濃紺(のうこん)など数多くあります。

 あらためて挙げながら、以前ファッションビジネスの仕事に携わっていた時、日常よく使った染色表現、たとえば浅葱、群青、鉄紺、茄子紺、濃紺などがたくさんあることに驚いています。

 それにしても、わが国の伝統色は、真に、山川草木、天地自然、四季折々の微妙な、かすかな、ほのかな色合いの変化をとらえていることがわかります。その素晴らしい言語感覚に感銘を覚えます。

(それにひきかえ、今の大臣などの言語の貧困には驚きを通り越して、大層哀れを催しますが、わたし達国民はそうならないように鋭敏な感覚を持ちたいものです)

 これをみれば、わが国の先人は自然の恵みに感謝し、山川草木と穏やかな付き合いをしてきたと判断してもよいのではないでしょうか。近年「自然との共生」という言葉が一部の人々に流行っていますが、この思想は、自然とわたし達は根本的には対立するものとして考えていることに大いなる問題があります。

 わが国の歴史に学ぶならば、自然との共生ではなく「自然の恵みに感謝」するという謙虚な姿勢が必要ではないでしょうか。

 「自然」を静かに見つめる…その永年の結晶が上に記した数々の色となってきたのだと考えます。

 今年はいろいろとありました。まだ3ヶ月も残っていますから、まだまだ何が生じるかわかりません。何せ「国家」を考えない政治家を、わたし達国民、選挙民が選んできたのですから。残念ながら、神の怒り(自然災害+外交・経済の瓦解)がおさまりそうもないようです。

 こんな時は、秋、秋ですから、青き大空でも眺めながら、自然と歴史とわが国のありようについて静かに考えを廻らそうではありませんか。

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です

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