“TPP”の危険項目は排除せよ!
298回目のブログです。
“受け継ぎて 国の司の 身となれば
忘るまじかは 民の父母”
上杉鷹山(江戸中期・米沢藩藩主)
米沢藩の藩主になったが、藩主の心構えとして、決して忘れてはならないのが、民は自分の子供として、我が子を思う父母の立場で政治を司ることである。
あの名君といわれた上杉鷹山が、藩主としての誓いの言葉を詠んだものですが、その誠実で真摯な熱情がひしひしと伝わってくるようです。
翻って、今日の政治を概観すれば、鷹山の域には程遠く、純粋に、民、国民のための政治、国民に目を向けた政治が行われているとはとても思えない状況が続いています。
たとえば、3・11東日本大震災が発生して8ヶ月経過するにもかかわらず、未だ「復興庁」が機能していないという体たらく。あきれてものが言えないとはこのことでしょう。
(阪神淡路大震災の時はスピーディに進捗させた経験があるにもかかわらず…どうなっているのでしょうか?)
それは、今、国論を二分している様相を示している「TPP」の問題にしてもしかりです。野田首相はTPPの交渉に参加する意思を固めたようですが、わたしのように結構TPPをウオッチしている人間でもいまだに不明な点や疑問な点が多すぎるように思われます。
現在、民主党執行部と野田内閣は、TPPの内容、参加のメリット、同じくデメリット、米国の意図を国民に分かり易く説明しておらず、特に首相はただただ参加しなければならないの一点張りに終始しています。
また、政府はTPPの経済効果の算定を、統一見解として「2.7兆円」と発表しましたが、これを聞いた国民は当然1年間の数字だと思ったはずです。普通ならば「○○兆円/年」と、単位と期間を明確にするのですが、ところがどっこい、何とこれが10年間の数値であり、1年間では2700億円に過ぎず、国民に対して10年間の数値を1年間の数値のように錯覚させる姿勢、詐術まがいの言動を弄したのです。馬鹿にするのもほどほどにしてもらいたいもの。少しでもいい、鷹山の爪の垢を煎じて飲むべき!
TPPとはTrans-Pacific Partnership または、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreementの略で、環太平洋戦略的経済連携協定のことであり、総合的自由貿易、全分野自由平等取引を目的にしています。
従来、自由貿易の推進協定は、GATT(関税と貿易に関する一般協定)、WTO(世界貿易機関)、GATS(サービスの貿易に関する一般協定)、NAFTA(北米自由貿易協定)、FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)がありますが、TPPは国境の枠組みをも大きく超える存在だということを認識しなければなりません。
TPPの参加国は、原加盟国のニュージーランド・ブルネイ・シンガポール・チリ、加盟交渉国のアメリカ・オーストラリア・ペルー・ベトナム・マレーシアからなっています。もしも日本が加盟すれば、GDPシェアーにおいて
アメリカ 66.7%
日 本 23.7%
であり、TOTALで90.4%となりますので、これを見れば、TPPはあきらかに日米問題に収斂されると判断すべきでしょう。そうであるならば、アメリカの戦略や思考を徹底的に分析し、日本が不利益を蒙らない様万全の態勢で臨む必要があります。果たしてその覚悟ありやなしや。
わたしはTPPの問題点を2点指摘したいと思います。
① TPPの本質は農業だけでなく、日本国の全分野を対象としたものであり、「24作業部会」があることを、政府を代表する総理自ら、国民に対し丁寧に説明してもらいたいと思います。そうでなければ「嘘」や「詐欺」になるのではないでしょうか。国民はそこまで気づいていなくて、TPPは農業と工業製品だけの問題であると錯覚させられている今日現在です。
●TPPの24作業部会
主席交渉官協議
市場アクセス(工業)
市場アクセス(繊維・衣料品)
市場アクセス(農業)
原産地規則
貿易円滑化
SPS(衛生・植物検疫)
TBT(強制規格・任意規格および適合性評価手段)
貿易救済(セーフガード等)
政府調達
知的財産
競争政策
サービス(越境サービス)
サービス(金融)
サービス(電気通信)
サービス(商用関係者の移動)
電子商取引
投資
環境
労働
制度的事項
紛争解決
協力
分野横断的事項
みなさん!これだけの分野が含まれていることをご存じだったでしょうか。これを見れば、TPPはわたしたちの社会生活すべてに関係することと言わざるを得ませんね。その中で特にアメリカが狙っているのは、市場アクセス(農業)・サービス(金融…簡保&農協共済)・投資・医療・公共だと言われており、たとえば地方都市が入札する場合、英語で全加盟国へ周知しなければならないのかも知れません。
野田内閣は、もしも交渉に参加するのであれば、この24部門のそれぞれについて、交渉ごとですから一部変更は当然だとしても、大枠の基本的姿勢を国民に対して明示すべきではないでしょうか。その上で、日本は議会制民主主義国家ですから、国会で堂々たる議論を行うべきだと考えます。
② ISD条項は断固排除すべし
隠れて一番大きな問題になりそうなのが「収用と補償」「ISD条項」です。
日本政府が資産を接収したり物理的な損害を与えなくても、政府の法律や規制によって外資系企業の営利活動が阻害されたと認識した場合は「損害賠償」を請求できるようですが、これは拡大解釈でどうにでもなることであり、異常と言うべきでしょう。
その紛争の解決手段が「投資家VS国家の紛争解決」条項、一般的に「ISD条項」(Investor-State Dispute)と言われるもので、次の通りです。
・訴訟の場は国際投資紛争解決裁判所(世界銀行事務局)
・審理は一切非公開(完全密室)
・一審で決着(上訴不可)
・判決は強制力を有す
・判定基準は被告となった相手国の政策の妥当性・必要性
ではなく「外資が公正な競争を阻害されたか否か」の
一点である(あおぞら銀前川氏のM.Rより)
まさしく「毒素条項」と指摘されるところですが、これを見ればわかるように、ISD条項は外国投資家(外資)寄りの一方的な紛争解決方法だと言えるでしょう。
外資の営利活動における損失などは、その原因が国家政策によるものだという理屈を作りあげるなどは、頭脳優秀な連中にとっては極めて簡単なこと…理屈はどうでもなります…。それを「国民の税金」で補填、賠償するなど、とんでもない悪法ではないでしょうか。
現に、NAFTA(北米自由貿易協定)においてISD条項を締結したカナダなどは、国民の生命を守るため有毒物質を規制したのですが、その規制によって不利益、損失を蒙ったとのことで、外資から膨大な金額の訴訟をおこされています。
訴訟によって、税金から膨大な利益をむしり取るシステム…これを異常と言わずして何が異常でしょうか。
自由貿易あっての日本であることは歴史の示すところですが、その内容に異常さがあってはなりません。野田首相には、拙速は避け、あらためて真摯に国民に「説明」してほしいと思います。
それにしても、アメリカと対等に交渉することができるのか、いささかどころか大いに疑問のあるところです。安全保障でアメリカにおんぶに抱っこでは、どうしても下手にならざるを得なく、早く「NO」「YES」と自在に言える完全に自立した日本になりたいものです。
もしもTPPを締結すれば、間違いなく「日本」は大変革せざるを得ないでしょう。それが奈落の底への一直線か、豊かな生活への道か…それは、内容の如何によるのではないでしょうか。願っても甲斐なきことかもしれませんが、野田内閣は国民をごまかさず、真摯に対応してほしい。野田首相の言動に注目したいと思います。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です
| 固定リンク
コメント