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2012年9月 7日 (金)

「維新八策」(最終版)…この問題点を衝く!

 341回目のブログです。

“人皆は 萩を秋といふよし我は 尾花が末を 秋とは言はむ”
読み人知らず(万葉集)

 世間の人はみんな、萩の花こそ秋を告げる花というが、よしそうならば、わたしは尾花の穂先だって秋らしいのだと言おうではないか…。

 萩の花に秋の到来を、尾花に秋の深まりを期待する、自然に対して心を躍らせる万葉歌ですが、秋の情趣に心を通わす古の豊かな精神をもった一般的日本人の素晴らしき感性を読み取ることができます。

 それに比べ、現今の政治家の、政治に対する情熱“祭りごと”への感性はいかばかりでしょうか。

 いよいよ、総選挙へ突入の様相を呈してきました。野田首相の、近い将来とか近いうちとかそのうちとか、万葉人に比べればあまりにも低級な言葉遊が、国民の政治不信をますます増長させ、もう何でもいいから「解散を」の声が巷では満ち溢れるようになっているようです。

 そうしたなかで、先日の9月1日、第三極と言われてきた大阪維新の会の「維新八策(最終版)」が発表されました。その政策は斬新で注目の的であり、変化・革新・維新・解体を望む人々や勢力からは、とりあえず絶賛、えげつないすり寄りを見せています。

 しかし、すべてを絶賛していいのか、そんなに素晴らしいのか、実現可能性はあるのか(民主党の例もあるし)、その基本的な問題点に焦点を当ててみたいと思います。(今まで、党ブログでは、結果的に橋下市長や松井知事のいいところばかり取り上げてきたことになっていますので、ここでは問題点を厳しく指摘します)

「維新八策」最終案(一部抜粋)

大阪維新の会の理念
・自立する個人 ・自立する地域 ・自立する国家
・決定でき責任を負う民主主義 ・決定でき責任を負う統治機構

1.統治機構の作り直し
 ・中央集権型国家から地方分権型国家へ
 ・首相公選制
 ・道州制

2.財政・行政・政治改革
 ・歳入庁の創設、総背番号制の導入
 ・衆議院定数半減、
 ・選挙活動インターネット解禁

  3.公務員制度改革
・公務員の強固な身分保障の廃止
・公務員選挙活動の制限
・次官、局長の政治任用、管理職の公募

  4.教育改革
・教育委員会の廃止
・学校を校長を長とする普通の組織にする
・教職員労働組合活動の総点検

  5.社会保障制度改革
・失業対策、生活保護、年金などの社会保障を綜合
・年金の一元化
・医療保険の一元化

  6.経済政策・雇用政策・税制
・自由経済、規制改革
・TPP参加、FTA拡大
・脱原発体制へ

  7.外交・防衛
・日米同盟基軸、豪州・韓国との連携強化
・主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備

  8.憲法改正
・首相公選制
・一院制(参議院廃止)
・地方条例制定権の自立
・憲法9条については国民投票で

 詳細は日経WEBをみていただきたいのですが、8項目において、理念・実現のための大きな枠組みと基本方針が詳しく書かれています。全体が綺麗にまとまっており、これが実現できれば理想郷・天国になるような錯覚を催させるほど、美味しそうな料理が盛り沢山なマニフェスト(政権公約)になっています。

 それでは、問題点を指摘していきます。

  あまりにも総花的に過ぎ、国民に甘言を弄しているように見えてなりません。こんなに全方位のことを実現できるのでしょうか。3年前の民主党のマニフェストはとうとう「ゴタクを並べた」(talk bigtalk pompously)ことになってしまい、国民が真っ赤な嘘に騙されたことを考えると、言うだけマニフェストは国家的には大きなマイナスであり、やらないこと、できないこと、やれないことは公約しないで欲しいと思います。

  坂本龍馬の「船中八策」に比し、維新八策は“詩的”でなく、乾燥した実務家の文章のようであり、貧相限りなく、非常に格調が低いものになっています。八策として坂本龍馬にあやかるのであれば、今一度、洗練された日本語、調べ(リズム)ある言葉、情熱あふれる国語に直すことを望みます。明治維新の政治家はすべて歴史的な詩心がありました。精神は言葉に宿とも言います。ああ!日暮れて道遠し真の維新。

【参考】「船中八策」(坂本龍馬
1.天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令宜しく朝廷より出づべき事。
2.上下議政局を設け、議員を置きて万機を参賛せしめ、万機宜しく公議に決すべき事。
3.有材の公卿・諸侯及(および)天下の人材を顧問に備へ、官爵を賜ひ、宜しく従来有名無実の官を除くべき事。
4.外国の交際広く公議を採り、新(あらた)に至当の規約を立つべき事。
5.古来の律令を折衷し、新に無窮の大典を撰定すべき事。
. 海軍宜しく拡張すべき事。
7.御親兵を置き、帝都を守衛せしむべき事。
8.金銀物貨宜しく外国と平均の法を設くべき事。

  維新の会は、深い洞察もなく、単純に首相公選制を掲げていますが、わが国は立憲君主制であり、そこから議院内閣制が導かれるのであり、首相公選制はわが国の本質(国柄)にそぐいません。これは、明らかにわが国柄を解体しようとするものであり、とんでもない愚論といわねばなりません。首相を公選で選べば、立派な政治家が選ばれ立派な政治がなされるであろうとの幻想を振り撒くのは、悪魔の仕業、反日思想そのものというべきでしょう。断じて許すことはできません。

  一院制にしても、現在の衆議院・参議院のあり方について真摯に議論を進めれば済む問題であり、いたずらに、単純型を志向するのは間違いです。龍馬の提唱した高邁な「船中八策」の第2項を熟読すべきではないでしょうか。

  憲法9条については、維新の会としての明確な判断を下さず、国民投票に逃げているのは極めて卑怯国家防衛、国家安全保障という国の根幹についての考えがないのであれば、国政を委ねることはできません。

国民は高度な専門知識を要する問題を適切に判断することは難しいので、見識ある政治家を選び、彼らに政治判断を委託するのが議会制間接民主主義というものですから、憲法9条の判断を国民に丸投げすることは政治家の資格がないことを意味しています。民意に丸投げは即刻止めるべきです。維新の会には見識ある政治家(国政・地方政治)がほとんどいないので、国家の基本事項を国民に丸投げして逃げようとするのでしょうか。

  脱原発は早計過ぎ。経済成長、雇用という観点からも、現時点においては原子力エネルギーについては「前向きに総合的に検討する」という段階ではないか。

韓国との連携強化は間違であり、韓国とは一定の距離を保ち続けるのが筋。竹島、内政干渉、慰安婦など問題があり過ぎだと思います。

  日本外交の弱点である外務省改革に全く触れていないことに合点がいきません。外務省の堕落が日本国の名誉を大きく毀損してきた実例は限りなくあり、外務省問題を避けて通れないのではないか。

  メディア、特にNHKについての根本的改革(偏向・経営)にも大胆なメスを入れるべきです。今が絶好のチャンス。

 維新の会、その代表である橋下市長は大阪市という地方政治には実績を残しつつあります。しかし、このいわゆる八策を見ると、権力への感性は鋭いものを感じますが、真の祭りごとへの感性には問題ありとしなければなりません。

 明治維新は英語ではMeiji restoration(明治の王政復古)と訳されていますから、今“維新”という言葉を使用するならば「神武創業の精神」と「明治維新の精神」に復古し、歴史と伝統の流れの中から「新時代」を展望すべきだと考えます。

 もしも、そうでなかったならば「維新」の言葉を断じて使用すべきではありません。なぜならば、それは、先人、先賢を冒涜することになりますから。

 それにしても、一刻も早い総選挙を望みたいものです。

みなさんはどのようにお考えでしょうか。

次回は
時事エッセー
です。

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コメント

"維新八策は、貧相限りなく、非常に格調が低い。"にまったく同感です.
稚拙な踏み絵にしかすぎず、信念をつらぬかれた数多くの名士が命をかけて活躍した歴史的な明治"維新"を冒涜しています.
気持ちよいビジョンを掲げて、過去の癒着をばっさりと切る橋下さんを応援しているのですが、今回はやり過ぎです.今さら戻せないでしょうが、できなければあっさりこう変えてやると平気で言えるのも橋下さんです.
歴史的には、英雄が登場してやり過ぎの後の次の政権で安定の方向に向かうような気がします.

投稿: Yoojin | 2012年9月14日 (金) 07時03分

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