「株価上昇」・「円安」…やっと動くか経済成長政策!
353回目のブログです。
“おほけなく 憂き世の民におほふかな わが立つ杣に 墨染めの袖”
大僧正慈円(天台座主・千載和歌集・百人一首)
身の程に過ぎたことではあろうが、つらい世に住む人々の心を和らげるためにも、伝教大師最澄が開かれた比叡山に住み、わが身に着けているこの墨染めの袖で、世の中を覆いつくしたいものだ…。(杣…そま・材木を切り出す山・比叡山のこと)
民衆、国民が苦しむ姿を目の当たりにした大僧正慈円の宗教者としての強い意志と誠実な人柄を感じさせてくれる和歌ですが、ひるがえって今日、わたし達はこのような素晴らしき人物を仰ぎ得ない現実を悲しまねばなりません。そうであれば、国のリーダー、藩屏(はんぺい・国を守護するもの)には、大僧正慈円のような気高い精神をぜひ学んでほしいと願うものです。
いよいよ総選挙の火蓋が切って落とされ、連日舌戦が交わされ、徐々に非難合戦に移ろうとしています。各政党は、原発、消費税、デフレ、復興、経済政策、日本外交、憲法、拉致、などを論点にしてそれなりの政策を掲げておりますが、そのうちで最も重要なポイントは「経済政策」だと考えます。
もちろんのこと、異論はあるでしょうが、経済の停滞、低迷こそがわが国の元気を失墜させている元凶であり、その克服こそが喫緊(きっきん・差し迫って重要なこと)の課題とすべきではないでしょうか。…“経済成長こそ七難を隠す”という言葉もありますから。
先日、自民党総裁になった安倍晋三総裁が、もしも政権を取った場合は、積極的な金融政策と財政政策を取るつもりだと、確信的に発言した結果、為替が大幅円安になるとともに、株価は、日経平均が、9/26 8,906円 ⇒ 11/27 9,423円にみるみる上昇しています。市場が安倍内閣を期待していることは明白です。
今『日本丸』は、経済の政策で、どの方向を目指せばいいのでしょうか。それは、政治が主導的役割を果たし「分配論」から「成長論」へと舵を切り替えることではないでしょうか。そのためには、経済政策を総動員、わたし達日本人が持つ「底力」を発揮すべきだと考えます。
それでは、成長政策はどうあるべきかを考えてみましょう。
1.デフレの脱却策
2.金融政策
3.財政政策
○まず「デフレ」。
デフレとは「一般物価が持続的に下落する現象」です。すでに15年も続いており、過去3回のデフレ(1880年代松方デフレ・1920年代井上デフレ・1940~1950年代ドッジデフレ)の各々数年間とは比較にならない長期間となっています。その原因は、国(内閣&日銀)が明確なデフレ対策を講じなかったこと(=過去自民、現在民主の政治の不作為)にあります。
松方デフレをはじめとする過去の3回のデフレは、いずれも通貨安(円安)政策によって、また、いずれも数年で、終息しているようですから、歴史に学べば、積極的な円安政策を講じなければなりません。
また、賃金水準の上昇による所得の増加が、デフレを脱し軽いインフレに移行することは明白であり、そのための財政出動は不可避というべきでしょう。
○それでは「金融政策」はどうあるべきでしょうか。
ひとつにはインフレターゲット(調整インフレ)を設けることによるデフレ脱却であり(国内経済)、もうひとつは通貨供給の増加による円安誘導(国際経済)です。
安倍総裁は、2~3%のインフレ目標を持つべしとの考えを表明していますが、日銀は反論しています。本来、内閣が方向を示し、日銀が独立した方策を実施するのが筋でしょう。そのためには、毎月1回の定例会議を設け、同じ方向を向くようにすべきであり、それができないのであれば、安倍総裁の言う「日銀法改正」も早急に検討・実施しなければなりません。
通貨供給に関しては、日銀も小出しに実施してきていますが、ここで、主要国のマネタリーベース残高を見てみましょう。(2000年を基準の1とする・大和総研データより)
<2011年>
中国 6.0(倍)
米国 4.3
韓国 3.0
英国 3.0
ユーロ圏 2.5
日本 1.5
一目瞭然。中国・米国・韓国・英国・ユーロ圏と比較すれば、わが日本国は飛び離れてマネタリーベース残高が少なく、これではものすごい円高になるのは必至といわねばならず、よく今まで78円/1$くらいで止まっていたなと思えるほどです。
為替は、本来自由であるべきですが、中国、韓国、アメリカなどが自国、自国産業に有利になる操作、すなわちマネーサプライの増加を行っている以上は、わが国も「相応の対応」をしなければならないのは、理の当然というべきでしょう。
もちろん、円高には円高のプラス面(たとえば原材料を安価に輸入できることなど)も大きくあることは理解しなければなりませんが、あまりにも急速、かつ大幅であれば、その変化に対応しようとする経済社会構造の変革が追い付かないわけであり、そこを調節するのが政治のはずです。
○次に「財政政策」を見てみましょう。
上記のように金融をいかに緩和しても、実経済に於いて、金融機関から企業(特にベンチャー企業・中小企業・中堅企業)に貸付、回流しなければ経済の活性化にはつながりません。実態は、貸付、回流が少なく、ここで、財政政策の出番になります。
ところで、メディアでは、しばしば円高による輸出企業の苦しさばかりが強調され、それがあたかも日本経済の全てのように錯覚しがちです。たしかに、異常な円高から円安にシフトすれば、輸出企業にはそれなりのメリットがありますが、わが国の輸出比率は製造業とサービスを加えてもGDP比約12%くらいであり、輸出依存度は低いことを認識しなければなりません。(ちなみに韓国は45%と異常に高い)
このように、経済データをきっちり読めば、わが国が「貿易立国」というのは間違いであり、実態は「国内産業主体の国」といわねばなりません。(もちろん12%という数字は小さくとも絶対金額は膨大であり、無視すべきものでないことは言うまでもありません)
そうであるとすれば、GDPの9割弱を占める国内経済を活性化することが大事であり、その先兵役として公共投資を挙げることができます(…あくまでも先兵役です!)。マスコミは「公共投資=悪」という先入観を持っていますが、戦後70年を前にして、社会インフラがあちこちで老朽化し、その対処としてインフラ投資を積極化することは決して間違ってはいないのではないでしょうか。
自民党は10年間で200兆円の投資を考えていますが、そのなかには建設国債でまかなうことも含まれています。安倍総裁は場合によっては建設国債(60年返還?)を日銀引受とする案も考えているようですが、財政規律の問題をクリアしつつ、積極的な展開を図ってほしいものです。
さらには、企業における「研究開発費の大胆な減税」など、打つ手はいくらでもあります。企業が活性化し利益体質になってはじめて国民の懐が豊かになりますから、まず「企業活性化政策」を第一に考えるべきであって、いわゆる「バラマキ配布型の政策」は第二にしなければなりません。
(最近のマスコミ論調には、産業・企業の視点が欠落しています。お金も税も雇用も天から降ってくるものではなく、日本の産業・企業が稼がねばならないことを肝に銘じなければなりません。…その意味で、今、かまびすしい原発問題は「産業」と「安全」の視点から前向きに捉えるべきではないでしょうか)
政策を総動員し、経済成長を期すこと!
これ以外に日本が元気になる秘訣はありません。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
私達日本人の多くが感じている閉塞感の拠って来る原因は様々でしょうが、野宗氏の言うように国政においては「経済成長が七難を隠す」ことは真実です。国内を二分する60年安保を忘れさせた池田内閣の所得倍増政策、一党独裁よりも貧困を憎む現代中国の二例を思えば十分です。先の世界大戦も国外市場の拡大による富の確保を求めた諸国民の熱気が引き起こした戦禍と言えると思います。
そういう意味で今次の衆院選の争点に「脱原発」と「景気回復」の二つを同列に掲げている政党に疑問を感じます。現今の日本経済はその内需組も海外輸出組も膨大な電力消費によって支えられています。私個人の考えをおいて選挙直前の現時点で声なき声を含めた国民の希望を最大公約に絞れば第一に「景気回復」が来、第二に喫緊に対応を求められている「尖閣問題」で、「原発問題」や「消費税問題」はその後に扱うべき問題でしょう。そして「景気回復」と「脱原発」は電力確保以外でも深い相関関係にあります。
つまり「脱原発」政策を実施し始めたとたんに自然エネルギーなどの小規模産業は潤うでしょうが、大量の電力を消費する大規模産業の活動が停滞や停止やむなきに至るでしょう。もし時の政府が脱原発の政策をとるにしても、景気回復がある程度進んだ後に動き出すのでなければ、景気は現在よりもさらに落ち込み、脱原発政策は国民から総スカンを食らうことになるでしょう。
国民の感情など、経済状況によって一日で逆転してしまうことは歴史が証明しています。
投稿: 齋藤仁 | 2012年11月30日 (金) 15時24分
総選挙の論点として、また日本の現状認識・今後の方向付けとしても貴重な発信に感謝します。以下、ささやかな感想と意見を3点記します。
①マスコミが政策論争を消費税増、原発、TPPに絞って報じているのは間違いで、ここに揚げられた論点が重要です。②政党選びは、予め自分の考えを整理して、それに最も適合するのはどれかという手順が必要です。要約すれば、どの政党が日本が現状から将来へどう向上・改革させるのかを見極めることが必要です。③当面の重要な政策としては、企業の活性化支援・経済成長、社会保障みなおし、公務員改革、防衛力強化、教育改革、被災地復興、参議院制度化改革など
投稿: 川口宏和 | 2012年11月30日 (金) 10時37分