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2012年11月 9日 (金)

「皇室典範」を改正しなければ、宮家が無くなる! 

 350回目のブログです。

“国のため 民のためにと思ふこと 夢のうちにも えこそ忘れぬ”
明治天皇御製(明治36年 <1903>

“津波来し時の岸辺は 如何なりしと 見下ろす海は 青く静まる”
               
     今上陛下御製(平成24年・歌会始)

 仁徳天皇の“竈(かまど)の煙と民”のお話をひもとくまでもなく、歴代の天皇は、上の明治天皇の御製にあるように、常に民の安らかならんことを願い、祈ってこられました。

 直近の例でも、昨年の東日本大震災においての、今上陛下の“お言葉”で、亡くなられた方への心からの哀悼の意をあらわされ、被災者はもちろんのこと、わたしたち国民すべてに対し、強い絆でもっての復旧、復興を呼び掛けられたのです。

 この時、わたし達国民が、ほんとうに素直な気持ちで、深い感動と大きな感銘を受けたことは、忘れようにも忘れられませんが、それは、日本人の心の琴線に響く、慈愛に満ちた君臣の音色であったのかも知れません。

こんな感情を懐くのも、皇紀2671年の歴史を受け継ぎ、日本国と日本国民と日本文化の中心に厳然と位置され、最も高貴な存在であらせらる天皇陛下の“お言葉”だったからにほかならないのではないでしょうか。(もしも、最高に俗っぽい総理大臣の菅氏のギラギラした権力志向から発する言葉であったらどうだったろうかと想像してみてください。…ゾッとして、おじ気を震うほどです。ほんとうに冗談ではありません)

 こう考えてみれば、天皇の御存在、それを取り巻く皇室が、将来にわたって安心、安定、安泰であることが大事になります。そうであるならば、現在わが国に生を受けているわたし達、なかんずくわが国のリーダーは、未来永遠に続く、安心、安定、安泰を願っての盤石の基盤を築く使命を認識しなければなりません。

 今年の2月末日から、内閣官房皇室典範改正準備室は「皇室制度に関する有識者ヒアリング」を実施し、先般、「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」を発表しました。

 今、皇家と皇族の中の分家にあたる五宮家(秋篠宮・常陸宮・三笠宮・桂宮・高円宮)には、若い男子皇族が秋篠宮家の“悠仁(ひさひと)親王殿下”ただお一人であることに留意しなければなりません。

 現在、皇位継承は、①皇太子(徳仁親王)、②秋篠宮(文仁親王)、③悠仁親王、となっており、直ちに問題とするところはないのですが、皇室典範で「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」(皇籍離脱)「天皇及び皇族は養子をすることができない」(養子の禁止)となっており、悠仁親王が婚姻されるころには、宮家には男子は一人もおられず、宮家そのものがすべてなくなってしまうのです

 このままでは、もうすぐ宮家が無くなるのは必定。これを皇室の重大な危機と言わずして何を危機と言うのでしょうか。これ、まさしく、喫緊の課題と考え、対処しなければならないのです。

 そこで、いわゆる女性宮家の創設が登場です。男系論者はこの案に厳しく反対し、議論が沸騰気味となっていますが、ことは最も大切な皇室のことですから、冷静に考えていく必要があります。そこで、女性宮家をできるだけ速やかに創設し、御皇室の安定をはかるべきだとの考えでまとめられた新刊書をご紹介します。

  著 者 市村真一(京都大学名誉教授)
書 名 『皇室典範を改正しなければ、宮家が無くなる』
出版社 藤原書店
価 格 2800円+税

 著者の市村教授は、京都大学、MIT(マサチューセッツ工科大学・Ph.)を卒業、阪大教授、京大東南アジア研究センター教授・所長、国際東アジア研究センター所長、東アジア経済学会会長などを歴任。計量経済、東アジア経済においては第一人者として国際的に著名な経済学者。

 一方、教授は教育問題にも深い関心をもち、戦後の日教組教育に鋭く厳しい批判を加え、長期間にわたって教育の正常化に尽力。加えて、わが国の歴史そのものであり至宝でもある天皇制度や皇室についての造詣極めて深く、まさに現代日本の碩学と言う存在です。

 この著書の構成は次のようになっています。

 <前篇>皇室の弥栄えをお祈りして

1、皇室典範を改正しなければ、宮家が無くなる
2、皇室典範改正の諸問題
3、君主制と王位継承論
4、内閣官房の諮問事項についての所見
5、内閣官房ヒアリング議事録
6、今上陛下と皇后陛下への御祝辞
7、皇統の永続のために(所教授との対談)

 <後篇>立憲君主制の擁護のために

    8、君主制の擁護
9、天皇(江藤淳教授との対談)
10、君主制と神道
11、立憲君主国と民主共和国の長短を論ず

 前篇の当面の御皇室の諸問題については、本来、多少の予備知識を必要とするものですが、この著書は、それらに関し非常に分かりやすく平易に述べられています。その根本について、皇室の弥栄えをあつい心で祈りつゝ真摯に論じているこの著書は、皇室のことを考えるにあたっては必読の書と言えるでしょう。

 後篇に書かれている「立憲君主制の擁護」は、社会主義、共和制を理想とするいわゆる戦後日教組教育を受けてきたわたし達に、国家・社会の本質を考えさせるものであり、まさに、目から鱗です。

 世界の人文科学、社会科学を踏まえ、広く深い学問に基づくこの君主制擁護の論は、さすがに、碩学・市村博士の見識の豊かさと真の知性を示したものと言えるのではないでしょうか。

 市村教授は、透徹した学問に基づく、堂々とした、オーソドックスな考えを提言していますが、まえがきのなかで、皇室問題の議論に際してのあるべき態度を次のように示唆しています。

 「本書執筆にあたり多くの著書評論を読んだが、痛感した一事がある。それ   は、こうした評論では、激越な言葉や誇張を慎み、相手を悪しざまに言わぬことの大切さである。私の戦後マルキストとの論争の経験では、過激の言は殆ど何の成果をも生まなかった。ましてや今は、憲法と皇室典範の根本的再検討のための同憂の討論である。史実を検討し、理をつくし、知恵をしぼって、最善の策を見出さねばならない。お互いの戒慎こそ大切だと信じる」

 私たちは、ややもすると、激越な論に走りたくなりますが、国の根本命題である、皇室典範と憲法の再検討にあたっては、市村博士の言われるように“戒慎”の姿勢をもつことが肝要だと思います。

あらためて、市村真一著『皇室典範を改正しなければ、宮家が無くなる』(藤原書店)をお薦めします。

 今、わが国では統治機構の改変が論じられ始めていますが、国の基本は皇室典範と憲法であり、これを抜きにした議論は成り立ちません。皇室問題に関心のある方もそうでない方も、わが国の基本を理解するためには、なかなかの好著だと思います。

 わが国の根本について、静かに考えてみようではありませんか。

次回は
時事エッセー
です。

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コメント

女性宮家創設には反対 
女性宮家創設は将来必ず歴史上例のない女系天皇に繋がるから反対である。
万世一系の男系男子で皇統をつないできたのが皇室の歴史である。
女性皇族が民間から婿をとった例など2000年を超える皇室の歴史には一度もありません。 なぜ国民の支持を失っている民主党政権で急いで皇室の伝統を変えようとするのか。歴史的にも皇位継承の危機の時にそぐうのは旧宮家の活用である。それが伝統であり先人の知恵であった。
旧宮家で北白川、竹田、朝香、東久邇の四宮は明治天皇の内親王が降嫁していてこの宮家の適齢者から現宮家常陸宮とか三笠宮に婿養子に入って頂き、次の世代に皇位継承者を出すということであれば、市村博士も一考に値すると述べておられる。
世の中には変えた方がいいものと変えていけないものがある。
女性宮家創設には嘗てコミンテルンの影響を受けた革命願望勢力、リベラル系の共和制支持者、ウーマンリブ論者なども賛成しているので要注意である。

投稿: 福井 成範 | 2012年11月11日 (日) 19時45分

第一次世界大戦は19世紀末から激烈化した白人国家間における植民地強奪戦でした、しかし第二次世界大戦は一方で白人国家間の生存競争の第二幕という側面を持ち、他方で第一次大戦後に白人国家群の新リーダーとなったアメリカと、ロシアを破り有色人種のリーダーとして台頭してきた日本との人種間戦争という側面を持っていた。つまり日本を叩き潰すというGHQの政策は、アメリカ独自の考えでなく、近代に入って絶対化した白人至上主義というの価値観によって広く欧米全体から支持されていた。その価値観によれば、有色人種日本の皇室は欧州の王室のような高みの存在でなく、崇敬するに値しない程度のものにしか見えていなかった。      明治憲法廃止や皇室典範の改定などは日本の軍事力の再復活を恐れた、というより日本文化への侮蔑意識のなせる業といえよう。昭和天皇は戦犯にされなかったが、皇室の枯れ死を狙った政策は次々と実施された。宮家の廃止もその一つであった。
 我が国と皇室の末永き弥栄を願うという思いは伝統主義保守主義の立場をとる日本人には共通している。問題は、女性宮家の創設が結果として「女性天皇」の誕生につながり、しかも女性天皇の婿様に天皇家と血縁関係のない一般男性がなられた場合である。イギリスなど西欧の王室にはそういう例があろうが、彼らは王室そのものが存在すればそこに住む王族の出身国も問わない、同じ白人なら可としている。さらに王族はたんなる有閑階級と同じような遊びや趣味に興じることを国民も可としている。
 だがわが国の皇室は国民を思い国の行く末を思うことを最優先しており、国民も皇室に国民の範たる家庭の形や人間の形を求めている。
 女性宮家の創設を認めるなら、同時にその宮家と婚姻関係となる男性の資格についても法整備をする必要がある。それを抜きに女性宮家の創設だけを行った場合、その時に盛り上がる国民の皇室への関心も、数年で薄れ、皇族としての女性宮家の存在だけが既成事実として強まり、国会内の対立などから次の法整備が進まない間に一般男性との婚姻、さらに皇嗣の誕生といった新たなる既成事実が築かれていくことになろう。
 現憲法の改正問題と同じで、性急な改革はかえって国民の意識から天皇を「国民の象徴」以下の存在におとしてしまう可能性がある。
 皇室を崇敬し、日本国家と同じ末永き存在を願う一人としてできるだけ瑕疵のない方向での皇室典範の法改正を願っている。

投稿: 齋藤仁 | 2012年11月 9日 (金) 15時32分

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