“総選挙”の争点は何か!
354回目のブログです。
“吉野川 その源をたずぬれば まこものしずく 花の下露”
(作者未詳・道歌)
大きな川である吉野川も、その源を訪ねて行けば、真菰(まこも・イネ科の多年草で湿地帯に群生)から出た雫(しずく)であり、花の下に落ちた露である。ほんの小さなものでも、集まれば大きなものになるものだ…。
大言壮語はなくとも、毎日コツコツと小さな努力を重ねていけば、一滴のしずくが大河になるように、いずれ成果はあらわれという、わが国で古くから詠われている道歌(道徳的な訓えをわかりやすく詠みこんだ和歌のこと)です。
さあ、いよいよ総選挙に突入しました。
3年前の総選挙では、劇的な結果(自民惨敗・民主圧勝)により民主党政権が誕生し、ほとんどのマスメディアも文化人も国民も、それにバンザイし、大きな期待を持ちました。
民主党は、マニフェストというマシュマロのように柔らかい外来言語で国民を幻惑し、大言壮語を吐き、マネーのバラマキ餌で投票用紙を釣り上げ、政権を担ったわけですが、外交破綻、政策破綻、統治能力欠如、責任感欠如、党分裂などにより、無残な結末となったことは万人が承知の通りです。
国がかかわる207兆円の全予算の組み替えさえ行えば全てのマニフェストは実行できるという政治劇が国民の前に熱演されました。しかしながら反応は思わしくなく、3年を経過し、国民はそれを“壮大な嘘劇場”だったと実感してしまったのです。
所詮、「バラ色の政治」なんて、こんな厳しい時代にはとうていありえないのであり、冒頭にあげた道歌を今一度しみじみと読むべきでしょう。
それでは、今回の総選挙の争点、論点をどのように見分ければ良いのかについて考えてみたいと思います。わたし達は、もう、バラ色のマシュマロ政治ではなく、厳しい現実を直視しつつ、わが国の伝統と精神に則り、誤ったサヨク破壊主義を排除するとともに、安易な現状肯定主義を克服する、…すなわち「理想主義的保守主義」に基づく展望をもつことが大切ではないでしょうか。
さて、伝えられている争点はいろいろありますが、ここで分かりやすく分類してみましょう。
国家基本問題
①拉致解決(覚悟の有無)
②憲法改正(九条・国防軍・前文)
③安全保障(領土・日米・日中・日韓・沖縄)
④行政改革(公務員制度・地方分権)
⑤公平の原則(アンフェアー事項の激発)
経済問題
①成長戦略(日銀&金融&為替・財政・公共事業)
②エネルギー・原発(ベストミックス・脱卒続原発)
③TPP参加
社会問題
①消費税増税(%・条件・配賦)
②社会保障(年金・福祉)
③雇用対策
④防災対策(地震・耐用年数超過インフラ整備)
教育問題
①教育委員会制度(廃止or活性化・明朗化)
②日教組・文科省問題
③自虐史観の払拭
④いじめの根絶
⑤徳育の充実
震災復興問題
①復興のスピードアップ
②復興支援の充実化
政治・選挙・質の問題
①内閣司令塔の設置(真の政治主導)
②選挙制度(小選挙区・中選挙区・比例・二世)
マスコミでは、これらの問題を総論的にわかりやすく整理して、読者や視聴者に解説すべきですが、とにかくセンセーショナルに煽りすぎています。今、最もホットに騒ぎ、叫び、アジっているテーマが「原発の可否」となっていますが、この解散総選挙は、本来「消費税増税」を主軸に、各党の全般的な考えを集約したもの(マニフェスト・政権公約など)を国民が判断するのではなかったのでしょうか。マスコミもデタラメですね。
それでは、大きなテーマについて考えてみましょう
① 国家基本問題のうち、最も重要視すべきものが「拉致問題」です。北朝鮮による拉致は国家的犯罪であり、わが国、日本国に対する明確な主権侵害です。すべての国会議員はこのことを明確に認識し、全政党を挙げて、対処しなければなりません。それをしないのであれば、国会議員の資格はなく、バッジを外すべきではないでしょうか。
民主党内閣では3年間で8人もの拉致担当大臣を数えますが、これこそデタラメな政治、無責任な政治というべきであり、拉致された方への一片の同情もお詫びも感じていない、まさに鉄面皮と言っても言い過ぎではありますまい。
その他、菅氏をはじめ北へのシンパシーを感じている政治家は、拉致はささいなこととして、拉致誘拐者の釈放を韓国裁判所に嘆願するなど、やりたい放題、血も涙もない冷血漢であることは明白です。にもかかわらず、そんな人物を日本国の総理に選んだのですから、国民も猛省すべきであり、わたし達は、今回は、立候補者に拉致問題についての見解をただしてから投票すべきではないでしょうか。…拉致された方が帰国してはじめて、この国をいっぱしの「日本国」と称することができ、それまでは、残念ながら「1/2日本国」と言わねばなりません。
② マスコミを見ていると、この総選挙の争点が脱原発のみに集約されているように見えますが「脱原発」も「卒原発」も単なるスローガンであって、とても現実的、具体的、科学的、説得的内容を持ちえていません。原発はエネルギー政策の一環としての重要な地位を占めていることを認識すべきです。
そもそも、原発は、科学的側面と経済的側面と安全保障の観点から冷静に議論されるべきであって、間違っても感情的、イデオロギー的観点から主張すべきではありません。原発を10年後に止めるとすれば、電気代は最低でも2倍になると試算されており、安易に“脱”とか“卒”とか“続”とか唱えるべきでなく、今は、まず、安全確保に全力を注ぎ、安全を確認できれば稼働続行が妥当ではないでしょうか。
もしも稼働を止めれば、国内製造メーカー(大・中・小・零細企業)の存立が危ぶまれるなどの巨大なリスクがあることをも念頭に、真摯にして真剣なる議論をすべきであって、TVなどの浮ついた原発議論は百害あって一益もなしと言えます。
経済は生き物です。わが国を支えてきているのはこの日本民族による類まれなる経済力ですから、一度でも死なせてはならないのです。
戦後、いろんなスローガン(戦争反対・平和をよこせ・核兵器反対・安保反対・護憲・九条を守れ・人権を守れ・高校全入・差別反対・企業利益は悪・PKO反対・北朝鮮は理想郷(朝日新聞)などなど)が叫ばれましたが、文学的あいまい表現である脱原発・卒原発が、単なるスローガンでないことを祈ります。しかし、現状では、冷静な議論ではなく、情緒的、イデオロギー的、政治的、利権がらみ的、選挙用発言であるようにしか思えません。
わたしは、原発問題は選挙の争点にすべきものではなく、わが国のリーダー達が、とりあえず非公開で、誠実に、真剣に、冷静に、長時間、議論すべき、わが国のエネルギー政策の根幹にかかわる大テーマだと思います。
いずれにしても、総選挙には、いろんな争点を考慮して、政策の正しい政党を選び、政治家については、豊かで凛とした強い精神の持ち主を選ぶべきではないでしょうか。
豊かで凛とした強い精神 ⇒ 豊かな知性(Mind)
凛とした心(Spirit)
強い意志(Will)
この総選挙の結果が日本の政治を押し上げることを期待したいものです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
野宗さんの指摘されているように、日本の国家規模に相応して国政の問題は多岐にわたっていますが、これからの日本の農業の在り方も大きな政治テーマかと思います。国の財政上、あるいは就業人口等からみれば小事かもしれませんが、都市に住む日本人も含めて多くの国民の精神の底流に数千年来の農耕民族の文化や思考が今も厳然と息づいており、それが津々浦々に存在する神社への崇敬の念につながっていることは確かでしょう。
国家経済の上では工業立国になった日本とはいえ、国政を語る場合、「21世紀のわが国が進めるべき農業」というテーマは食糧安保という実利的観点とは別の視点からも重視していきたい問題ではないでしょうか。
なお特定の政治課題について、マスコミは政党・政治家の明確な判断を求めて色分けしようとしますが、100%賛成や100%反対へと誘導することは国家社会を硬直化・教条主義化し、さらには国民を衆愚化する危険な動きです。もちろん国政上の大きな問題を「100%賛成」「100%反対」を叫ぶような政治家は単細胞すぎ、国家国民にとって百害あって一利なしといえます。
投稿: 齋藤仁 | 2012年12月 7日 (金) 19時04分
いつも、ありがというございます
今回の選挙で、見えてきているのが
間接思想か、直接思想か、という争点ではないでしょうか?
間接金融か、直接金融か、すなわち、貯蓄から投資へ、という、10年来の国のスローガン
間接金融は、野口悠紀雄さんのいうところの、1940年体制
戦後の復興、急回復、高度成長、そして、バブルとその崩壊、その後20年の経済的堕落、の、元凶になっているもの
ただし、これが、悪いか良いか、というのは、個人の判断による、と思います
ただ
一億総中流、というのが、間接金融の集大成、であり、現在も、その夢を捨てきれず、引きずって歩んでいるのが、日本国民であろう、との感想は、持っています
そういう目で、今回の選挙を見たとき、
各党の提言が、よりはっきりしてくるのかもしれません
既存2大政党は、しがらみを捨てきれず、くっつく宗教政党は、どこまで行っても、コバンザメ
気になるのが、雑多な弱小雑魚政党の、ばらまき保守化、間接思想への傾斜
個人の自立、地域の自立、国の自立、と、叫ぶほんの一握りの政党が、ようやく、直接思想への、目覚めを呼びかけつつあるのか、という感想を持つのですが、いかがでしょう
大切なことは、一億総評論家、の、仲間入りからの離脱、と、考えます、すなわち、できることからの実行、実施、実践、自己主張(当然、責任を負うものです)
林望さんが、「節約の王道」で、直視! 直視! 直視! と、叫んでいます
まず、政治を変える気概を持って、投票に行くこと、なのでしょうね、乱立で、惑わされた大衆が、戦意喪失、選挙への関心をなくしつつある、という風の便りなどあり、気になります
4月の、フランス大統領一次選挙、80%の投票率を超えた、と聞きます
たわごとでした
投稿: 奥田 博美 | 2012年12月 7日 (金) 09時27分