“政治の頽廃”…復興予算の大暴走に見る!
368回目のブログです。
“あれはてし 難波の里の 春風に 今はた同じ 梅が香ぞする”
慶運(鎌倉~南北朝の僧・和歌四天王)
かつては都があったというのに荒れ果ててしまった難波の里ではあるが、そこに吹く春風は今も昔も同じ梅の香がすることよ…。
梅の花も満開を過ぎ、散り始めていますが、微かな香りは得も言われない妙なる情緒を感じさせます。世の中も、美しい花をながめたり、麗しい香りにつつまれたりする場と時を持てる伸びやかな空間で満ち満ちたものであれば、こんなに素晴らしいものはありません。
ところが、今、東日本大震災後丸2年、東北地方が遅々とした復興のありさまを呈し、苦難の道を必死に歩んでいる時、難波の里の一角を占める有力な自治体(堺市)が、あろうことか、中央官庁(環境省)と組んで、とんでもない振舞におよんでいることが判明しました。
堺市の市長・役人・議員の心、中央の大臣・官僚・国会議員の精神が異常を通り越して狂い果てていることがわかります。
■ がれき処理「検討」だけの堺市に 国、復興予算86億円
東日本大震災で発生したがれきを受け入れない堺市が、復興予算約86億円をごみ処理施設の新設費などとして受け取ることが9日、分かった。がれきの処理に困った環境省が、受け入れを検討しただけの自治体にも復興予算の交付を決めたためだ。小さな自治体の年間予算にも匹敵する巨額の資金だけに「本当にもらっていいのか」と疑問の声も上がっている。
開会中の定例市議会で市議からは「一部を被災地への義援金とするべきでは」「道義的におかしい」と異論が浮上したが、竹山修身市長は「財源の確保は首長の責務。ありがたくいただきたい」と答弁した。
(2013.3.10産経新聞一部抜粋)
えっ! まさか! こんなことがあっていいのでしょうか。特に竹山市長の「ありがたくいただきたい」という発言には驚きを通り越して怒りを覚えます。堺市長としての矜持(きょうじ)、プライド、政治家としての高潔さ、国民感覚を全くうかがうことはできず、まさに「暴言」(無礼で乱暴な発言)以外のなにものでもありません。(他にも6市町3組合が受取)
この件は、志を喪失した中央官僚が金を撒き、志のない地方首長がニタッとしてありがたく受け取る構図でしょうが、これはつい最近どこかで見たことと同じ風景、そう、生活保護の不正受給(いわゆるナマポ)の卑しいケースと一緒であり、いずれも大坂の恥と位置付けられるものと言えます。
堺市長の「さもしさ」(品性が下劣・卑しい心根)は、堺市の役人、堺市の市民も同じであることを意味していますので、議会人や役人や市民が大いなる反発をしないのであれば、全国民から蔑まれるのではないでしょうか。
堺市は、縄文、弥生、古墳の古き時代から栄え、仁徳天皇陵などの陵墓が数多あり、室町時代には東洋のベニスと称され、更には自治都市として世界貿易の要の地位をもち、近世都市、工業都市として発展。現在84万人の人口を数え、政令指定都市となっている、わが国有数の都市です。
その堺市が、一応、表面上は合法とはいうものの、東日本大震災の復興予算を、それも、とてつもない高額をかすめ取るなどの暴挙にでるとは開いた口が塞がりません。恥を知れと言いたい。もしも「がれき処理」の検討にお金がかかったならば、人件費や諸経費を実費で、堺市の経費で処理すれば済むのではありませんか。それ位の同胞意識がないのであれば、日本人、日本国民を名乗る資格はないと言わざるを得ません。
昔の堺商人や大阪商人は、自己を律してきた素晴らしい人達であり、数多くの町人学者を生み出してきました。その精神は懐徳堂や適塾にあらわれ、わが国の近代化を牽引していったものです。そのようなことに思いを馳せると、今回のことは、輝かしき歴史を有する堺市を穢し、泥を塗るに等しい所業と言えるのではないでしょうか。
それでは、復興予算について考えてみましょう。思い出してください。昨年10月に被災地とは関係のない事業に使われている復興予算が俎上にあがりました。
●東日本大震災の復興予算
・5年間で19兆円
●その内の復興増税10.5兆円の内訳
・法人税…2.4兆円
(2012年4月から3年間減税後、納税額に10%上乗せ)
・所得税…7.5兆円
(2013年1月から25年間の納税額に2.1%上乗せ)
・住民税…0.6兆円
(2014年6月から10年間一律1000円上乗せ)
●復興予算流用事業(ほんの一部)
・アジア、太平洋北米地域との青少年交流…72億円(外務省)
・沖縄県の国道整備 …12億円(国交省)
・刑務所での訓練用機械の整備 …0.3億円(法務省)
・調査捕鯨の支援 …23億円(農水省)
・全国税務署耐震改修工事 …12億円(財務省)
あきれてものが言えないとはこのことを指します。所得税、法人税、住民税の増税、それもこれからのしかかる増税を、東日本大震災以外のものに流用しようとする神経の持ち主である中央高級官僚及び政治家の“心の貧しさ”を痛感します。とにかく、下の下、彼らは日本国民でないばかりか、普通の人間でもありません。
そのような不正義、不誠実な政策が堂々と実行されつつありましたが、それを指摘する一部ジャーナリズムがあり、もうそんな破廉恥なことなどは行われていないはずだったのですが、あにはからんや、そうではなかったことが判明し、私自身の無知を恥じたいと思います。
それにしても、堺市・竹山市長の、こともあろうに、あの復興予算を、全く悪びれず「ありがたくいただきたい」という無神経さは、まったく人間性を欠いた、破廉恥そのものではないでしょうか。出す方も出す方なら、貰う方も貰う方!
ほんとうに、大阪には、見識、良識ある政治家がすくないのを痛感します。こんな人材がリーダーですから、大阪の地盤沈下もむべなるかなと嘆かざるを得ないとともに“政治の頽廃”を憂えざるを得ません。
そうは言っても、嘆いてばかりでは能がなく、広く若い世代のなかで、有能、見識ある人材(人財!)を探すことが肝要だと考えます。
さて、今週月曜日の3月11日で、東日本大震災から2年が経過しました。まだまだ復興には程遠い状況ですが、わたし達国民は、東日本大震災を風化させてはなりません。
そのためには、今あらためて同胞としての意識を強くすべく、今上陛下の震災直後のお言葉(ビデオメッセージ)に耳を傾けるべきだと考えます。2周年の機会に、NHKをはじめすべてのテレビがビデオメッセージを放映すべきだったのですが、残念ながらそうではなかったので、ここに最後のところを一部抜粋します。
「被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、さまざまな形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います。被災した人々が決して希望を捨てることなく、身体を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう、また、国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、被災者とともにそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています」
(平成23年3月16日・天皇陛下のお言葉一部抜粋)
このお言葉に触れれば、環境省や堺市などの復興予算に関するあさましい所業など、決して生じるはずもありません。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です。
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