ブラック企業とホワイト企業…どちらを選ぶか!
376目のブログです。
「牡 丹」 皮日休
落尽残紅始吐芳(残紅落ち尽くして 始めてはなをひらく)
佳名喚作百花王(佳名よびて「百花の王」となす)
競誇天下無双艶(競い誇る 天下無双のえん)
独占人間第一香(独りしむ じんかん第一の香)
春の花々が散りつくした後に咲き始める牡丹の花は「百花の王」という素晴らしい名で讃えられている。牡丹は、天下にならぶものがない艶やかさを誇り、この世でもっとも香ばしい花の名を独り占めしている…。
晩唐の詩人・皮日休(ひじつきゅう)の漢詩「牡丹」はなかなか雰囲気のある詩であり、牡丹の艶なる姿が眼前に浮かんでくる様な錯覚をもつほどです。ゴールデンウイークも終わり、樹々をおおう目にも鮮やかな新緑の葉が、その青々とした若々しい姿を見せる美しい季節となってきました。
青々とした新緑を人間に例えれば、この4月に入学した新入生や、入社した新入社員と言えるでしょう。彼らは昔の言葉で言えば青雲の志、今の言葉で言えばフレッシュマインドでもって、新しい生活に、ある種のわくわくした希望に溢れているに違いありません。
ところが、彼らがいわゆるゴールデンウイーク、連続した祝祭日、目に鮮やかな新緑の風景に癒されるであろう5月にもかかわらず罹ってしまう病気があります。それは「5月病」と言われるものです。本来は新入生がかかるものでしたが、今では新社会人、新入社員にも同様の症状が見られ、本人も、家族も、企業も頭を悩ませています。
5月病は正式な病名ではなく、新しい環境や人間関係についていけない精神不安定な状態を指すものであり、会社や仕事への本人たちの期待や意欲がゴールデンウイーク中にそがれ、心身に変調を来たし、無気力になってしまうのです。これは、ストレスから来るものとして精神疾患の適応障害と考えられることもあります。
新入社員が環境の急激な変化に即応していくことはなかなか難しいものがあります。徐々に徐々に慣らしていき、会社の雰囲気や社風になじんだところから一人前の社員として力を発揮する存在となっていきます。いままでは、そのためには1~3年の猶予期間が必要であり、その間は教育期間だとの認識が一般的にありました。
しかしながら、最近は、経済情勢のゆえか経営者の変質からか、そんな悠長なことはできない、世界基準(…そんなものは無いのですが)に合わそう、短期利益最優先、公よりも私として、入社即一人前としての力を求めるような企業が増えてきました。
近年、その原因の一因をつくりだしているとみなされるブラック企業がやり玉にあがってきています。ブラック企業とは、入社を勧められない労働搾取型企業を指しますが、就活をおこなう学生は、できるだけブラックを避けようと情報交換に熱心です。つい先般、ブラックと名指しされた企業のなかで、やり玉にあがったのは著名な「ユニクロ」(ファーストリテイリング)でした。
ユニクロはグローバルカンパニーとして高成長を続けていますが、異常に高い離職率、慢性化する長時間サ-ビス残業、深刻化するうつ病罹患について、経済雑誌「東洋経済」がユニクロの元スタッフのリポートを掲載したことで注目を集めました。(3/28)
これに対して、ファーストリテイリング柳井社長は、朝日新聞のインタビューで「社員は世界同一賃金へ」「世界中で同じ仕事ならば同じ賃金にし、いつでも異動できるようにする」「年収100万円も仕方ない…」などと発言。現状よりもさらに厳しくすることを明言しました。
柳井社長は若い世代が持つイメージとしてのブラック企業・ユニクロについての反省は全く見られず、さらに過酷な労働環境を目指すようです。確かに企業環境は世界的にきびしいものがあるでしょうが、新入社員が3年で5割、5年で8割も辞職するのは極めて異常なこととして認識しなければなりません。
これらの事実は、社員を過酷なまでの労働をさせ、苦役として使用している姿を浮かばせるほどであり、社会の不安感をますます増大させていることにほかなりません。柳井社長には、企業家としての辣腕はすごいものがありますが、超裕福な大金持ちとしての社会的責任、社会的倫理観はないのでしょうか。少なくとも、ブラック企業の謗りを受けないように、それなりの対処を望みたいものです。
ユニクロがそうであるならば、他の企業もそうなのでしょうか。先日、東洋経済がホワイト企業の特集をしていましたが、それによりますと、わが国には、ブラックとは真逆のホワイト企業が数多く存在していることがわかります。
日本社会の安定は、これらの豊かな精神の企業によるところが大きいように思えます。企業は単なる利益追求だけではなく、社員教育などによる社員力の向上、ステークホルダーとの協調などによる社会の安定に資することも求められているのであり、そういうことに意を配っている企業が多く存在していることでわが国は救われていると言わねばなりません。
ホワイト企業の最上位に位置する“超ホワイト企業”は、3年間で一人も辞めていない、定着率100%、離職率0%の企業を指しますが、その数は何と92社もあります。わたしも知らない会社名もありますが、そのうち、2009年に10人以上採用している企業を抜き出してみましょう(採用人数の多い順)。
・四国電力 ・三機工業 ・日本化薬
・日本郵船 ・ADEKA ・東京エレクトロン
・昭和シェル石油 ・太平洋工業 ・住友金属鉱山
・石原産業 ・田辺三菱製薬 ・曙ブレーキ工業
・日本オフィスシステム ・三井不動産 ・堺化学工業
・アンリツ ・エスビー食品 ・東亞合成
・アドバンテスト ・不二製油 ・藤倉化成
・スター精密 ・安田倉庫 ・マルハニチロH
・デサント ・川崎汽船 ・モリタH
・コーセル ・コタ ・アサヒ飲料
・エヌ・デーソフトウェア ・パナソニックインフォメーションズシステムズ
・東洋テック ・たけびし ・大建工業
・北海道コカコーラB ・電算 ・東京製綱
・積水化成品工業 ・フォスター電機 ・タクマ
・NECキャピタルソリューション ・ジェコー
・宇徳 ・北陸電話工事 ・第一工業製薬
・WOWOW ・神鋼環境ソリューション・キーコーヒー
・山下医科器械 ・大石産業 ・川重冷熱工業
・FDK
ホワイト企業とは、入社を勧めることができ安心して仕事のできる会社のことであり、調査によれば、ホワイト企業上位300社のうちの300位でも定着率93.3%、したがって、離職率は3.7%となります。
これをみればユニクロのブラック度とホワイト企業のそれでは、あまりにも格差がありすぎます。ユニクロサイドは、収益面では余裕があるのですから、社員の精神面にも配慮するよう、考え方を抜本的に変えなければ、最後は、日本社会から非難の嵐を浴びるような予感がしてなりません。
複雑な時代です。昔からそれなりにブラック企業は存在していました。時代の流れ、国民感覚、若者の意識も変わってきている現在ではありますが、企業は、少なくとも社会的な存在であることを意識して良識ある人事労務管理をしてほしいとねがうものです。
さあ、ブラック企業とホワイト企業のどちらを選んだらよいでしょうか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です。
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