言葉とマスコミ…橋下発言に見る!
380目のブログです。
“天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ”
柿本人麻呂(万葉集)
天の海に雲の波が立ち、月の舟が煌めく星の林の中に、漕ぎ入って隠れていくのが見える…。
天を海に、雲を波に、星を林に、そして夜空を渡る月(おそらくは三日月であろうか)を舟に見立てる、雄大で絵画的な宇宙観。これはまさに、時代を超越し、現代にも通じるものであり、万葉歌人・柿本人麻呂の偉大な精神をあらわしています。
現代を取り巻く時代精神も万葉の歌のように、雄渾で香り豊かなものであってほしいと望みますが、世の中、なかなか思うようにいきません。
万葉の古には、単純ではあっても馥郁とした雰囲気をあらわす言葉が、柿本人麻呂のような文化人により自在に使われていたのですが、最近の政治家の言葉にはどうにも、文化文明の香りが伝わってきません。
先月、橋下大阪市長が第二次世界大戦中の慰安婦について語った言葉が物議を醸し、それが世界のメディアを席巻し、批判の嵐に見舞われました。そして、日本維新の会の支持率もかなり落したと報道されています。
政治家が発する単純な言葉をマスコミがどのように拡散していったのでしょうか。橋下市長の発した「活用」と「必要」について検討したいと思います。
橋下氏は、沖縄米軍のジェイムス・フリン司令官に対して「米兵による事件、事故が多く起こるのは問題だ。綱紀粛正はどうしているか」と質問。司令官は「フィットネスとジョギングだ」と小ばかにした感じで応答。それで橋下氏は、業を煮やして「風俗を“活用”すればいい」と発言。
この橋下氏の発言はオフレコとなっていたのですが、橋下氏自身が禁を破って力強く発言したのです。沖縄での米軍の止まぬ不埒な行為にイラダチを隠せなかったのでしょう。
米軍が建前上はそのようなことに関与することは禁じられているので、橋下氏が風俗の活用を薦めても、司令官は、その論に決して乗ることはせず、アサッテの応答をする他ありませんでした。
そもそも「活用」ということは、米軍の管理、行動基準に則ることを意味しており、世界のマスコミはこぞって批判的に報道しました。橋下氏は、言葉の使い方に荒っぽい若さを露呈したということでしょうか。とうとう、橋下氏はこの言葉を撤回し、不快感を与えた人達に謝罪せざるを得ませんでした。
一方、この件について、松井大阪府知事は「橋下氏の発言は問題意識を本音でぶつける中での発言であり、合法的な風俗店はいっぱいあるから、軍関係者にも“楽しんでもらえば”いい」と発言しましたが、この発言を咎めるメディアはひとつもありません。
“活用”と“楽しんでもらえば”との差は大きかったようです。
“活用”…………………管理・指導・指示
“楽しんでもらえば”…自由意思・個人の選択
韓国や中国やアメリカと論争する時は、いろんな事例を前もって準備し、やる以上は、相手を圧倒するだけの論争を挑むべきです。彼らは、嘘、捏造、ひっかけ、脅し、たてまえ、何でもあり、われわれ日本人のような誠実なおとなしさは決して持っていないことを知らねばなりません。
次に、橋下市長の、戦時に於いて、いわゆる従軍慰安婦が“必要”であったとすることについて考えてみます。
橋下氏は、イギリスもドイツも、アメリカも韓国も、日本もすべて、当時いわゆる従軍慰安婦がいたのであり、それは「必要」であったからだと主張しています。
これに対しては、国内もそうですが、外国でも大きく取り上げられています。
「Women Forced Into WWII Brothels Served Necessary Role,Osaka Mayor Says」(ニューヨークタイムズ)
「Japanese mayor says second world war 'comfort women' were necessary」(ザ・ガーディアン)
「Osaka mayor says wartime sex slaves were needed to‘maintain discipline’」(ワシントンポスト)
「Japanese mayor sparks outrage with sex-slave remarks」(ロイター)
外国メディアは、橋下氏の言わんとしたこと(=当時は必要であった)とは異なり、橋下氏が、過去ではあっても、性奴隷(sex-slave)は必要(necessary)だったとの認識に驚愕したことを強調しています。
要するに、橋下氏の趣旨は外国人には全く理解されなかったのです。必要かそうでないかは価値判断ですから、橋下氏が必要だとの認識を持っているとみなされたのです。橋下氏は、意に添わない受け止め方をされるような不用意な言葉遣いは改めなければならず「慰安婦が必要だった」と言うのではなく「慰安婦が存在した」と事実のみを述べるべきでした。
これにアンチ橋下のマスコミは大喜び!マスコミは自己のイデオロギーを拡大すべく、言葉についても意識的に勝手な行動を取ります。特に、朝日のような反日左翼と一部親米右翼が極端。
一般的に、慰安婦はcomfort women、売春婦・娼婦はprostitute、性奴隷はsex-slaveでしょうが、いわゆる従軍慰安婦はa prostitute attached to the armyが正しいと思われます。
しかしながら、今回の件で、外国メディアの多くが、性奴隷sex-slaveとの表現を使い、それを日本の第3党の党首が公式に必要性を認めたとしているのは、わが国の名誉にかかわることであり、橋下市長と政府・外務省は、外国メディアに対して、大至急、きっちりと反論しなければならないと考えます。
この大騒動の発信者は、またまた、例によって、朝日新聞と言われています。ゲスのかんぐりですが、先般、週刊朝日の差別記事が橋下市長の怒りを買い、大阪市民も橋下氏の味方、購読部数減少、いつかカタキをとの執念、そこにはまった橋下市長の会見、その記事がNYTなど世界に…。
それでは、悩ましい「慰安婦問題」に対して、日本はどう主張したらよいのでしょうか。ブログにでている意見も参考にさせてもらいました。
① 資料の裏付けのない強制連行、集団レイプ、慰安婦の虐殺などは一切存在しない。存在したのは、単なる戦時売春婦である。
② 戦争責任は謝罪済みであり、賠償も日韓基本条約、その後超法規的救済策として設けたアジア女性基金で解決済みである。
このような制度が必要であったか否か、慰安婦、売春婦と呼ぶか性奴隷と呼ぶかなど「価値判断」を含む問題はいくら主張しても、外国人に理解してはもらえないことを認識すべきです。また、戦時中の不幸な出来事だった、慰安婦には気の毒だったなどの同情も一切言わないことが肝心。
とにかく、上の①と②を何回も何回も言い続けるだけです。それ以上でも、それ以下でもありません。
橋下発言をきっかけにして、もう、不毛の「いわゆる従軍慰安婦問題」を議論することは止めましょう。やるなら覚悟を決めてやらなければなりません。今回の騒動で、米国は米国の利益のため、韓国は韓国の利益のためにのみ動いていることがはっきりしました。 アメリカには大国としての対応があるかなとかすかな期待もありましたが、アメリカが自己の価値観しか認めないことを明確にしたことは、逆説的な意味で収穫がありました。もう、アメリカを頼りにしてはならないと言う意味で。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です。
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コメント
今回の橋本発言は、彼の政治家・党首としての未熟さを露呈したものと思います。 野宗さんの言うとおり、単語の選択を間違ったと考えます。 大阪流の「ボケと突っ込み」で切り返せなかったのでしょうか。 建設業界が談合事件で槍玉に挙がった時、私も「談合しているのですか」の質問を執拗に受けました。 私は「新聞はいつも一斉に値上げしますねえ」と答えました。 オフレコとオンレコの区別がなくなった今、こういう切り返しが必要です。ところでこの発言のロシアの反応、怖いですね。 北方領土返還交渉にも悪影響です。
投稿: 淺沼健一 | 2013年6月 7日 (金) 18時06分
波風を立てない「まあまあ主義」の状態を平穏・平和と都合よく解釈するのが日本人の社会行動の常態であり、今回の元自民党幹部の古賀氏や野中氏の一連の対中迎合発言もその典型だろう。しかしこれは目を瞑っていれば外で起きている出来事を「なかった」と思い込むことができるというひ弱な小市民の発想であり、家を守る・国を守る立場の人が取るべき態度ではない。
ロシアが千島列島や樺太などに触手を伸ばしていることを18世紀末当時の知的エリートである松平定信は承知しながら目を瞑って台風の通過を見過ごす事無かれ政策をとり、その後の江戸幕府もその政策を継承した。警鐘を鳴らす林子平らを取り締まっても「目を瞑って見過ごす」政策を続けた。その結果が結局、樺太や千島列島をロシアに奪われることになった。
日本の政治家は「事なかれ主義・まあまあ対応」をとることで相手国と「引き分け・延長」に持ち込んだと勝手に思い込みたがるが、国際社会の現実からいえば、こうした日本の態度は、相手国の主張や行動を暗示的にであっても認めたことを意味する。
橋下市長の言動には、「政治の玄人」から見れば稚拙なものが見えるかもしれないが、「事なかれ主義」政策をとっている間に気づいたらすべての分野で譲歩させられていたという日本の伝統的な国内向け政治から脱却するために、これからも日本人としての本音の発言を続けてほしい。それが選挙等の短期的な視点から保守にとってマイナスになろうと、日常報道されないことによって忘れさせられている日本存立の基本的問題を国民に再認識させる機会となるからである。
投稿: 齋藤仁 | 2013年6月 7日 (金) 07時54分