「募金の透明性」…ユニセフに見る情報開示!
407回目のブログです。
“欲深き 人と心にふる雪は 積もるにつけて 道を忘るる”
脇坂義堂(江戸後期・心学者)
雪が積もれば道が見えなくなるように、心に欲が積もると、人の道を踏み外してしまう…。
私自身はもちろんのこと、人間は欲が深いものですが、これは、組織についても言えることであり、組織が人の集まりである限り、組織自体も、欲深き存在であると言えるでしょう。その欲が積もりに積もれば、著名な江戸心学者である脇坂義堂の道歌(教訓歌)にあるように、人の道を踏み外してしまうようになるのは、最近のいろんな事象を見れば間違いのないことと言わねばなりません。
そんな世の中ではありますが、わたし達一般国民は、人の善意をとにかく信じようとしています。人の善意に付け込む事件…高齢化社会がすすむとともに、判断力の弱い高齢者をだます振り込め詐欺や高額商品押し込み販売などが、たびたびマスコミを賑わしています。
また、最近では、詐欺ということではないのですが、ネットや郵便物を使った、善意のお金を集める募金活動が非常に盛んになり、かなり高額の資金が集められていることは知っておかねばなりません。
わが国の寄付・募金文化は、平成7年(1995)の阪神淡路大震災で認識が深まり、東日本大震災で大きな成果となってきたと言われています。日経ビジネスによれば「個人寄付」は、平成22年(2010)までは5,000億円/年であったものが、平成23年(2011)には東日本大震災分が上乗せ1兆円に膨らみ、平成24年(2012)でも7,000億円となっており、かなりの金額となっています。
さて、つい先日、ユニセフから、封書(ダイレクトメール)で、募金、寄付の要請がありました。
(封書・表)
わたしの個人情報が遠くアメリカ・ニューヨークにまで伝わっていることは、不気味ではありますが、情報社会では当然のことでしょうし、おそらくは日本ユニセス協会から、当該個人の断りもなく名簿提供したものと思われます。そうであるとすれば、いわゆる慈善活動ならば何をやっても許せるのか、違法ではないのか、本当に慈善活動だけなのか、甘えに頼りつつ傲慢に陥っていないか、利権に群がってはいないか、本当に真の人権確保に寄与しようとしているのか、などなど疑問は尽きません。
さて、4年前にも指摘したことがあるのですが、わが国には、ユニセフの口座は2系統あることを知らなければなりません。
● 国際連合児童基金(UNICEF・ユニセフ)
正式な『ユニセフ親善大使』を務めている黒柳徹子さんが、寄付金を募っているもの。彼女は「頂いた募金は1円も無駄にしないでそのまま現地に届けたい」とし、全額を拠出している。(みずほ銀行六本木支店& 郵便局に口座あり)
ちなみに、ユニセフ親善大使第1号は米国俳優の故ダニー・ケイ。黒柳さんは4番目。この他、俳優の故オードリー・ヘップバーン、ロジャー・ムーア、サッカー選手のデビッド・ベッカム、リオネル・メッシ、つい最近では米女性歌手のケイティ・ペリーなど。
● 日本ユニセフ協会(公益財団法人)
「ひなげしの花」の歌手、アグネス・チャンが「日本ユニセフ国内委員会大使」をつとめる民間団体。ダイレクトメールによる積極的な寄付金集めを行う。内規により募金額の25%を内部経費で落すことができる。平成24年度(2012)は161億円を募金、そのうち130億円をユニセフへ拠出(81%)。
平成13年(2001)、都内超一等地の港区高輪に25億円(土地代抜き価格)の超豪華なユニセフハウスを建設。物議を醸すが馬耳東風。役職者には、官僚OB、新聞社社長などのマスコミその他の団体の長を網羅、万全の体制を引いていた。
「ユニセフ(unicef)」は国際連合児童基金のことを言い、世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動する国連機関です。
一方「公益財団法人日本ユニセフ協会」は、世界で36の国と地域にある「ユニセフ国内委員会」のうちの1つであり、日本におけるものです。世界におけるユニセフの活動を支援するために、日本において寄付募集、広報・啓蒙活動、政策提言協力を行うことを使命としています。
したがって、両者ともユニセフという単語を使うので非常に紛らわしいのですが、日本ユニセフ協会と国際連合児童基金(ユニセフ)は基本的に別組織だということになります。
さて、もしも寄付するなら、黒柳さんの口座か日本ユニセフ協会の口座か、どちらに寄付しますか。悩ましい問題です。黒柳さんならば寄付の100%がニューヨークに届くでしょうし、アグネス・チャンの日本ユニセフ協会ならば75%~81%になります。
ただ、日本ユニセフ協会としては、人材育成、広報活動、事業活動事務に経費が掛かることは当然のことであり「良識ある透明性」さえ確保しているのであれば特に問題はないと思えます。
しかし、あえて、ここで「日本ユニセフ協会」について問題点を指摘しましょう。
①日本ユニセフ協会の国内大使になぜアグネス・チャンを選定したのか。彼女は日頃、弱者救済・人権尊重の主張をしているにもかかわらず、中国のチベット民族やウイグル民族に対する弾圧には無言をつらぬき、中国共産党の人権弾圧を正当化するなど、ユニセフの基本精神に反するのではないか。協会の基本姿勢を問いたい。今のままでは、真に世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動をしているのか、慈善を利権ビジネス化しているだけなのかを疑われても仕方がないと思える。
②経費の明細をもっと詳細に公開するとともに、事業監査の観点から見た監査結果を報告すべきである。そうすれば、あらぬ腹を探られることもなくなるはずである。
③ユニセフ本部(ニューヨーク)に拠出した130億円もの使い道を詳細にわたり、協会としてオープンにすべきである。いわゆる後進国において変な風に使われていないかどうかをチェックするのも重要な責務だと考える。
善意の塊のように思っている募金活動でも、胡散臭い、薄汚れた、金銭まみれの悪臭紛々たるものもありますので、わたし達は十分に警戒し、よくよく調べ、納得のいくものにだけ、善意のお金を出すことが肝要です。
それに加え、わたし達日本国民は、今一度、次の、含蓄ある「マザーテレサの言葉」をじっくり噛みしめることも大切ではないでしょうか。
『自分の国で苦しんでいる人がいるのに他の国の人間を助けようとする人は、他人に よく思われたいだけの偽善者である』
『大切なことは、遠くにある人や、大きなことではなく、目の前にある人に対して、愛を持って接することだ』
『日本人は他国のことよりも、日本のなかで貧しい人々への配慮を優先して考えるべきです。愛はまず手近なところから始まります』
(昭和56年<1981> マザーテレサ来日時)
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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コメント
ある地方都市がダイオキシンなどの環境対策として新型のごみ焼却炉を造ったが、燃焼時に生じる熱がもったいないということで隣地に市民福祉用として温水プールも併設した。一般の体育施設の料金と同額で年中利用できる温水プールは評判もよかったが、年間を通じて温水プールを維持するために生ゴミの焼却だけでは不足していたため年間2千万円相当の重油を燃やしていた、ということが後日判明している。
善意で始めた行為が善なる結果を生むわけでない、という知恵は、戦前までの日本人にとって常識だったが、今では多くの日本人が忘れてしまっている。そのためテレビも新聞も「善意が通じない社会を創ったのは誰だ」と叫び、外国政府が非礼な態度をとると我が国政府に善意が足らなかったからだ、と自国を糾弾する。
自然環境保護、動物愛護等を含めた慈善事業関係者の顔を見ると「慈善」よりも「独善・偽善」を感じてしまう。自由な日本を満喫しながら一党独裁の中国政府を支持するアグネスチャン、人間(捕鯨国民)よりも鯨を大切にしながら自身の家族や民族は鯨よりも大切にするグリーンピース等々。
そもそも「善意」とは「他人のために良かれと思う考えや行為」をさすが、本当に他人のために役立つかどうかを規定するのは己自身でしかない。つまり「善意」とは換言すれば「独りよがりの思い上がり」でしかない面が多々ある。ただ一般の人は、「善意者」の行為に利害関係が見えない場合にだけ彼の善意が本物であると見なしているのである。
もちろん本物の宗教者がいるように、本物の慈善家もいる事は確かですが、慈善団体という「組織」は組織内の人々の名利あるいは生活の糧を得んがための団体としか見えません。公的な組織としての慈善福祉事業は、投票と税金を通じて私たち自身が参加した政府が国内でも海外でも行っている。
個人としての健全な善意や扶助は、家族親族、隣人、知人等の顔の見える人同士の間でおこなわれるのが自然だと狭量の私には思えます。
投稿: 齋藤仁 | 2013年12月13日 (金) 09時27分