原子力発電の再評価を!
438回目のブログです。
“よきをとり あしきをすてて外国に おとらぬくにと なすよしもがな”
明治天皇御製(明治42年)
外国(とつくに)のよきものを取り入れて悪いものは取り入れずに取捨選択し、世界のどんな国にも劣らないわが国にしていきたいものである…。
明治時代のスローガン「和魂洋才」は、大和魂はしっかりと保持し続け、西洋文明を取り入れていこうとするものであり、飛鳥、奈良、平安時代も同じ志で対処したもの。菅原道真はこれを「和魂漢才」と名付けましたが、このような言葉の中核にあるのが、和の心、というよりも、和の魂です。
これを現代流に表現すれば、外国文明(技術・思想・芸術など)の長所は積極的に取り入れつつも、わが国の伝統、歴史、文化に暖かい目を注ぎ、それを傷つけ壊そうとする企みを排除し、自主・自立の精神を貫き通すことと言えるではないでしょうか。
先の大戦(大東亜戦争・第二次世界大戦・太平洋戦争)から70年、ふたたび国難と言う時代に入ってきました。憲法も変えられない軟弱な国民意識、薄弱な防衛感覚、近隣反日国家の攻勢、マスコミ・文化人の底流にあるマルクス的サヨク思想の横行、自虐反日の教育・思想の蔓延、政治の堕落、地方力の低下、国家へのタカリ思想の蔓延と増長、皇室があぶない、少子高齢化現象への対処、総合的技術力の低下、国家観の不在、エネルギー政策の迷走、などなど課題は山積み状態です。
今回は、原子力発電を取り上げます。
■ 再生エネ全稼働時、電気料金上乗せは3倍に
買い取り制で年1.9兆円
太陽光などで発電した電気の買い取りを電力会社に義務付けた「固定価格買い取り制度」で、これまでに国に認定された再生エネ設備が全て稼働した場合、各家庭への電気料金の上乗せ額が現在の3倍程度に膨らむことが分かった。
電力中央研究所の試算では認定された全設備が稼働すれば、家庭や企業の電気料金への上乗せ総額は年間1兆9千億円。買い取りは最長20年間が義務付けられており、総額38兆円の国民負担が生じる。
(7/14産経新聞一部抜粋)
太陽光などの再生エネルギービジネスが花盛りですが、これは国家の超優遇政策によるもので、年間1兆9000億円もの巨大な税金がその企業に付与されることになっています。そもそものスタートが、反原発運動と政商との癒着により太陽光電力の高価買取を義務づけたものに他なりません。要するに、素朴な正義の感情と薄汚れたイデオロギーと胡散臭い金儲けとが合体したものだということです。
ドイツでは、自然エネルギーの「固定価格買い取り制度」は大失敗だったと認識されています。そして、非原発、自然エネルギー固定優遇の政策により、現在、電気代が急騰し、産業の基盤が揺らごうとしており、一部では、原発の見直しも視野に入っていると報道されています。
わが国では、平成25年度の燃料費の輸入増加額(平成22年度比)について、政府は3.6兆円と発表しました。これに猛烈に反発したのが政商・孫正義氏の自然エネルギー財団で、火力発電量の増加の他に、LNG価格自体の上昇や円安の影響もあり、燃料費増加額は2.4兆円、価格要因控除後は1.6兆円にすぎないと主張。
それにしても、輸入燃料費が、最低でも1.6兆円/年間増加するのですから、かなりの金額ではないでしょうか。実際には為替などは必ず変動するものであり、政府のいう増加額3.6兆円/年間も決して虚偽とは言えません。そうだとすれば、これはあまりにも巨大な金額だと言えるのではないでしょうか。
さて、次に、緊張関係にあるお隣の中国(中華人民共和国)の原発事情を見てみましょう。(WEDGEinfinity 7/7より引用します)
現在の中国の原子力発電
運転中 19基
建設中 29基
計画中 225基
計 273基(2億8100万KW)
因みに、世界運転中 429基(3億8800万KW)
日本検査停止中 48基( 4400万KW)<稼働ゼロ>
中国は、2050年までに4億KW分の原発を建設するという調査もあり、この数字は現在の世界で運転中の原発KW数に匹敵する膨大な数です。
中国の原子力に注力する姿勢は微動だにせず、現在世界で商用に稼働している軽水炉の他、高速炉、高温ガス炉、トリウム熔融塩炉、進行波炉に加えて原子力船など、原子力に関連するものすべての「研究開発」を強力に推し進めているのです。
今、建設中のものとして注目すべきなのは「高温ガス炉」と呼ばれるタイプの原子炉です。これは、仮に電源供給が止まったとしても、自然に冷却し、炉心溶融が起きない安全性の高い原発です。
しかし、高温ガス炉の研究の最先端をいっているのは実は日本であり、中国は日本の技術をのどから手が出るほど欲しがっていると言われています。
東日本大震災による福島の原発事故から、政治家、マスコミ、リベラル派文化人が反原発、非原発、卒原発、脱原発の政治的情緒的運動により、原子力への恐怖感を煽りに煽り、一般国民もそれに同調していった結果、世界の先端にあるわが国の原子力技術開発のスピードが大幅にダウンしたり頓挫してしまったことは否めません。
加えて、原子力の研究開発・技術・関連事業に従事する人達(学生を含む)への彼らのえげつないほどの心ないバッシングは目を覆うばかりです。
このまま推移すれば、電機や電子技術で中国に敗北しようとしているわが国が、原子力発電でも敗北することは必至であり、その経済的打撃は計り知れないと言えましょう。それは、製造業を経験した企業人であれば分かりすぎるほど分かっていることですが、電力コストの製品に占める割合は意外に大きなものがあるからです。
日本の生きる道は、大胆な「技術開発の継続」であり、自前のエネルギー源(たとえば海洋資源や原子力)を持つことではないでしょうか。そのためにも、原子力発電の再評価を緊急に行うべきだと考えます。原発の不安全は“わが国官民の総力を挙げた技術力”で克服できるのは間違いなく、基盤技術を生かし伸ばしていく先にこそ真の果実があることを認識しなければなりません。
このまま行けば、原子力基盤技術を中国に渡して、♪はいそれまでよ…、謝謝、多謝、衷心感謝、ごくろうさまでした、ありがとうございました…で終わりとなる可能性が高いと思います。はたして、これでいいのでしょうか。
中国に負けていいのか!…精神力において、技術力において。
みなさんはどのようにお考えになりますか。
次回も
時事エッセー
です
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コメント
原発の問題をイデオロギー化すべきではありません。つまり反核運動につなげて何が何でも反対、都合のいいデータまで作り上げて兎に角反対では議論できません。
原発はエネルギー問題として議論すべきです。地球の人口は増え続ける現状で中国をはじめ中進国ではエネルギー不足を補うため原発増設計画目白押しです(野宗さんご指摘の通り)。自然エネルギーだけでは賄えない現状、化石燃料にたより過ぎることは地球温暖化に拍車をかけことになるでしょうし、化石燃料自体やがて涸渇するでしょう。数十年後あるいはもっと先原発に頼らずに新しいエネルギーで地球が維持されればそれはそれでハッピーと思います。
投稿: 福井成範 | 2014年7月21日 (月) 11時44分
野宗さん、鎌倉さん経由で貴エッセー拝読しました。原発については、今回は電源盤を津波被害から防ぐことができればあのような事故は起こらなかったというのが専門家の分析です。不幸なことでしたが事故を乗り越えて人類は進歩してきたのです。これで止めては人類はエネルギーの奪い合いの戦争を起こす事にないます。再稼働をさせましょう。以上
投稿: 鶴谷泰二 | 2014年7月20日 (日) 16時27分
ご指摘されたいくつかの問題、諸点について半分は同意できますが、残りの半分は反対です。
投稿: 比賀江 克之 | 2014年7月20日 (日) 00時07分