赤十字「昭憲皇太后基金」…これが人道支援の原点だ!
456回目のブログです。
“ありがたし 今日の一日も わが命 めぐみたまへり 天と地と人と”
佐々木信綱(明治~昭和・国文学者/歌人)
ほんとうに有難いこと。今日一日、自分の命が無事に過ごせたのは、天と地と人との恩恵によるものだなあ…。
佐々木信綱は有名な歌人ですが、この和歌で、生きていくのは自分ひとりの力によるものでないとして、天と地と人さまに対しての感謝の気持ちを素直に表しています。
同じような意味で、今、わが日本がそれなりに世界で認められているのも、現在のわたし達だけの力だけではなく、先人の、先達の、先賢の、ながい歴史への貢献によるものと考えなければならないのではないでしょうか。
とすれば、歴史に謙虚に学ぶことが大切になってきます。わが日本の過去の歴史を悪しざまに嘲り、先人を完膚なきまでに貶める、いわゆる某大手新聞A社のような反日の姿勢は、厳に慎まなければなりません。
先日、大阪城のお堀の畔にたたずむ国民会館で、日本学協会主催の講演『世界が見た明治日本の人道支援~赤十字「昭憲皇太后基金」の100年~』(講師:今泉宜子女史)を聴く機会を得ました。
久しぶりに味わう素晴らしい講演でした。わたしは “昭憲皇太后基金”というものを寡聞にして知らなかったのですが、これこそが人道支援の原点であり、今、いろいろと問題点を指摘されているわが国のODAに関与している人たちは、その歴史の実態に大いに学ぶ必要があるのではないかと思った次第です。
それでは、昭憲皇太后基金とはどのようなものでしょうか。
① 文久3年(1863)、今から150年前、スイス人のアンリ・デュナンの提唱により、戦争や天災時における傷病者救護活動を中心とした人道支援団体である「赤十字社」が結成されました。その赤十字社(本部:ジュネーブ)が讃嘆する人道支援基金が「昭憲皇太后基金」(しょうけんこうたいごうききん・ Empress Shoken Fund)です。
② 赤十字社の7原則
1.人道:赤十字の根本。
2.公平:国籍や人種などに基づく差別はしない。
3.中立:戦地や紛争地では友軍敵軍どちらにも与しない。
4.独立:政府の圧力に屈さず、また活動への干渉を許さない。
受けるのは補助のみ。
5.奉仕:報酬を求めない。
6.単一:一国一社。
国内に複数の赤十字社・赤新月社があってはならない。
7.世界性:全世界で同様に活動する。
世界の赤十字・赤新月は互いに支援し合う。
※イスラム教国では宗教的理由から十字を使うのを嫌い、赤新月社Red Crescent Societyという組織名で赤新月(せきしんげつ)の標章を使う。
③ 明治45年(1912)、明治天皇の皇后・昭憲皇太后が世界の赤十字に対し平時の救護事業を奨励するために下賜された10万円(現在の3億5千万円)をもとに設立したのが「昭憲皇太后基金」です。
ここで重要なことは、従来は戦時の救済事業であったものを、災害・疾病・貧困という平時の救済事業を支援するとしたことで、この基金は画期的な意味合いを持っていると言われます。
以後、貞明皇后(大正天皇の皇后)、昭和天皇、香淳皇后(昭和天皇の皇后)、天皇陛下、皇后陛下の下賜金や日本赤十字、明治神宮、明治神宮崇敬会などからの資金協力もあり、増額となっています。
④ 平成24年(2012)、設立100年を迎えました。元金には手を付けず、利息で運用しているので、毎年の支援金額は少ないが、着実、堅実に機能を果たし、現在も健在であることに驚愕します。
⑤ 平成25年(2013)・第92回 昭憲皇太后基金支援事業
1.イラン赤新月社(中東)
刑務所に収容された囚人のいのちと健康を守る活動 235万円
2.エリトリア赤十字社(アフリカ)
救急法の普及や救急車サービス 226万円
3.キリバス赤十字社(大洋州)
クリスマス島における救急法講習 200万円
4.ベラルーシ赤十字社(ヨーロッパ)
障がいのある子どもと家族を対象にサマーキャンプ 189万円
5.ボリビア赤十字社(中南米)
被災した子どもや若者に対する救急法および防災教育 205万円
(スイスフランを日本円に換算)
⑥ 平成26年(2014)・第93回 昭憲皇太后基金支援事業
1.チリ赤十字社(中南米)
障がい者の社会参加推進事業 126万円
2.ホンジュラス赤十字社(中南米)
若者の犯罪率減少に向けた教育プログラム 150万円
3.コモロ赤新月社(アフリカ)
若年層ボランティアの活動強化 222万円
4.エジプト赤新月社(中東)
聴覚障碍や言語障碍の方も参加できる救急法教育 231万円
5.セルビア赤十字社(ヨーロッパ)
人身売買防止プロジェクトの実施 230万円
6.アイルランド赤十字社(ヨーロッパ)
受刑者に対して地域保健や救急法の提供 254万円
(スイスフランを日本円に換算)
⑦ 現在の基金総額:約16億6000万円(1400万スイスフランを円換算)
大正10年~現在までの支援金総額:14億6000万円(円換算)
∥ ∥ 支援先 :159の国と地域
このお話を聴き、震えるほどの感動を覚えるとともに、次のような感想を持ちました。
・明治の「志」の清明さと偉大さをあらためて認識。
・万民に対して心を添わせられるわが国皇室の伝統が現在の皇室にも
連綿として受け継がれてきていることに感謝。このような具体例を
メディアは積極的に報道すべきではないのか。
・人道支援は心を込めて永く続けることが大切であること。
・今のODA(政府開発援助)はあまりにも政略的、利権的、懲罰的だ。
あらためて“日本らしさ”のODAを模索すべき。
・皇室財産の大幅増額を図り容易にさらなる御活動ができるよう
配慮することがわが国の信頼向上につながるのではないだろうか。
それにしても、日本の皇室の気高さにただただ頭を垂れるのみです。講師の今泉宜子さんは、明治神宮国際神道研究所の主任研究員として、昭憲皇太后基金の支援先を数多く訪れ、その志が遍く伝わっていることを実地で体験していると話されました。
“ほどほどに たすけあひつつ よもの海みなはらからと しる世なりけり”
(昭憲皇太后御歌)
これは、今泉さんが基金運営のブロディ事務局長から、世界でも傑出した昭憲皇太后(明治天皇皇后)の人道精神が凝縮している御歌として紹介されたそうで、そのことは著書のプロローグに書かれています。
さいごに、その今泉宜子さんの昭憲皇太后基金に関しての素晴らしい著書をご紹介、推薦します。
書 名 『明治日本のナイチンゲールたち』
~世界を救い続ける赤十字「昭憲皇太后基金」の100年~
著 者 今泉宜子
出版社 扶桑社
価 格 1500円+税
書 式 単行本
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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