ああ、ブラック企業は永遠なり!
466回目のブログです。
“稽古とは 一より習い 十を知り 十より返る もとのその一”
千利休(茶人・戦国/安土桃山時代)
稽古というものは、最初の一歩が基本となり、繰り返し習うことにより、最後の十までに至るものだ。そして、そこが終わりではなく、また基本の一歩にもどって稽古すれば、最初に気づかないこともよく分かるようになるものだ…。
歴史でも有名な茶道の宗匠・千利休の道歌(教訓的な短歌)ですが、わたし達は、ややもすれば、現在至っているところが高みだと思い込み、謙虚さを無くしているせいか、基本にもどってみることを避けがちです。
特に、一代で大規模企業に育て上げた経営者の一部には、創業の志から遠く外れた発言でメディアを騒がす例が多々あり、それ以外に、創業者でない経営者のなかにも、社会的な問題発言をする人がいます。
最近の報道からひとつ取り上げます。ユニクロ(ファーストリテイリング社)は、一昨年過酷な労働実態(サービス残業過多・うつ病過多・入社3年離職率46.2%)を伝えた週刊文春を名誉棄損(損害賠償2億2000万円)で告訴。訴えの一方、大経営者として著名なユニクロ柳井社長は「もうブラック企業とは言わせない!」と、社内改善を内外に約束。
裁判の行方は、平成26年12月、最高裁はユニクロをブラック企業として認定、ユニクロの全面的な敗訴となりました。
あれだけの高収益企業、売上1兆3829億円、営業利益1304億円 (2014/8決算)、そして柳井社長の高らかな発言ですから、当然、取引会社を含めて総体的に、大改善がなされているものと思っていましたが、まさか、あにはからんや、東京・香港のNGO団体から悪事・悪行(?)がばれてしまいました。(もちろん、文芸春秋社を告訴したのですから、その時点から何となく胡散臭さを感じてはいたのですが…、柳井社長の言葉を信じたのが甘すぎました)
■「暑さで失神」「まるで地獄だ」
中国のユニクロ下請け工場の過酷過ぎる現場
「ユニクロ」の製品などを製造する中国の2工場について、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」(HRN/東京)などは「長時間の過重労働や危険な労働環境がある」として、ユニクロを展開するファーストリテイリングに改善を促すよう勧告したと明らかにした。
HRNは、香港に拠点を置くNGO「SACOM」とともに、中国の大手衣料工場の2社について調査。SACOMの調査員が労働者として工場に潜入。
労働者は「あまりの暑さに夏には失神する者もいる」「まるで地獄だ」などと語った。
2社の基本給は工場所在地の最低賃金。労働者は1人あたり1日平均11時間働き、休みは月1~2日だった。労働者が8分遅刻すると、2時間分の給料が差し引かれる。
(2015/1/15 Sankei Biz 一部抜粋)
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士は、高品質の商品を安価に販売しているなかで、労働者の権利が確保されているのかどうかについて懸念を持ち、具体的に実態を調査し、過酷な労働環境を明らかにしました。
1.長時間労働と低い基本給
2.リスクが高く安全でない労働環境
3.厳しい管理方法と処罰システム
4.労働者の意見が反映されない。
伊藤弁護士は次のような問題意識を述べています。
『私たちが目にし、購入するブランド、その製造過程はどうなっているのか。これだけ安い価格で衣服を購入できる陰で、工場の労働者はどんな過酷な労働を強いられているのか。私たちは普段、そうした工場にアクセスすることはなかなかできないし、その実態はブラックボックスのようだ。しかし、それではいけないのではないか、そこから今回の調査プロジェクトはスタートした』
『こうした下請け企業を使ってビジネスをしている企業は、下請けを通じて利益を得ているのであり、下請け工場の人権問題に負の影響が起きた場合、何ら責任を負わないとはいえない。「CSRと人権」(CSR:企業の社会的責任corporate social responsibility)が叫ばれているが、自社、そして下請け労働者の人権・特に労働法規の遵守は企業の人権に関わる義務の最も重いものである』
伊藤弁護士の志は素晴らしいと思います。伊藤さんは筆を押さえ、穏やかに冷静に心を込めた実態報告をしています。詳しくは、下記にクリックを。
bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20150113-00042192/
ところで、いわゆるブラックな発言をする経営者は数多く存在するのではないかと見られています。
ザ・アール 奥谷禮子社長(人材派遣会社・政府審議会委員など歴任)
・労働者の過労死は自己管理の問題であり、会社や上司の責任ではない。
本人がきっちり自己主張し、休みを取らないからである。
・日本の祝日は一切不要であり、休日は各個人が個別に決めるべきである。
・労働基準監督書も不要であり、個別企業の労使が決めればよい。
労働者に不満があれば、すべて、会社を訴えればよいではないか。
・格差論は甘えであり、格差はあって当然のこと。何の対策も必要なし。
富士通 秋草尚之社長(当時)
・業績が悪いのは従業員が働かないからだ。
ワタミ 渡邉美樹社長(当時・創業者)
・365日24時間死ぬまで働け!
・いますぐ、ここから飛び降りろ!
ザ・アール奥谷禮子社長の発言については、わたしは小ブログ(第48回目「ホワイトカラー・エグジェンプション」)で厳しく批判したことがあります。これらの経営者は、社員・従業員にハッパをかけるために過激な発言となったものかも知れませんが、もしも、これが本人らの経営哲学であるとするならば、大きな問題を孕んでいるのではないでしょうか。
企業が生きるか死ぬかの瀬戸際ならばまだ理解できますが、何せ、人間性を欠く粗雑さであり、法律無視、人権無視であることは疑いもありません。
デフレという経済不振が長く続き、社会不安が高まり、ここに来て減少したとは言え、平成26年(2014)の自殺者が25,000人も出ていることを考えれば、経営者は、もう少し姿勢をただすべきだと考えます。
近江商人の「三方よし(売り手よし 買い手よし 世間よし)」。渋沢栄一の「富を成す根源は何かといえば、仁義道徳、正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。論語(義・倫理)とそろばん(利益)は両立する」という言葉もあります。
そして、ステークホルダー(stakeholder・利害関係者)という概念もあります。この考えでは、企業には、消費者・顧客、従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関など幅広い関係者を意識したビジネスが求められており、それが企業の社会的責任を果たすことにつながるとするものです。
現在、わが国では、一般社会のなかも、政治家のなかにも、人間を人間として見なさない粗雑で乾いた心の持ち主が増えているのではないでしょうか。
経済環境も劇的に変わろうとしています。どんなに隠しごとをしても、今や、インターネットやSNS(social networking service)であばかれ拡散する時代であり、人の口に戸は立てられません。その意味で、経営者には世間に恥ずかしくない堂々たる経営を目指していただきたいと思います。
もう、ブラックは卒業しませんか。
みなさまはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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