アジアインフラ投資銀行…奇妙な参加論!
477回目のブログです。
“遠近(おちこち)の 鶯の音も のどかにて 花の咲き添ふ 宿の夕暮れ”
永福門院(鎌倉時代・伏見天皇の中宮)
あちこちから鶯の声が聞こえてくるのも、のどかであり、家のあたりが桜に続いて、山吹、躑躅(つつじ)というように、いろいろの花が咲き始めてくるこの春の夕暮れは、まことに情趣に富んでいるものだ…。
関西地方は、八重桜は見頃ですが、ソメイヨシノの花は散り、艶のある葉桜をみせつつあります。これからは東北や北海道という具合に、日本列島の桜前線は日に日に最北端に向かっています。
これを見れば、我が国土がいかに南北に長いか、そして海を含めればいかに領土が広いかと思わずにはいられません。なにせ、東西(与那国島~南鳥島)は3,143Km、南北(択捉島~沖ノ鳥島)は3,020Km、気候は亜寒帯から熱帯まで分布しているのですから。
わたし達は、何となく狭い日本と言う意識を刷り込まされていますが、領海を含めれば447万㎢、世界で6番目の広さだという事実をしっかりと認識する必要があります。
国を構成するものとしては、①主権(独立の権利)、②国民(生命・安全・財産)、③領域(領土・領海・領空)の三要素であると中学生の時習いました。しかし、わたし達国民は、習っただけではダメで、その大切なことを常に意識しなければなりません。意識しなければ、国の三要素と言われる主権、国民、領域が危うくなってしまうことは、尖閣問題で明瞭になったのではないでしょうか。そして、どのような場面においても、守るには不断の努力を要するのです。
局面は変わり、わが国は、中国(中華人民共和国)から、アジアインフラ投資銀行(AIIB・Asian Infrastructure Investment Bank)へ参加するよう猛烈に働きかけられましたが、現時点では、参加しないとしています。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、中華人民共和国が提唱し主導する形で設立を目指している、アジア向けの国際開発金融機関であり、東南アジアや中東各国の他、イギリス・ドイツ・フランス・ロシア・韓国が参加を申請しており、4月15日現在で57ヶ国となっています。参加を見送っている主要国はアメリカ・カナダ・日本。参加を拒否された国は北朝鮮・台湾。
現在の国際金融機関は次の通りです。
・世界銀行(WB・World Bank)
米国主導、本部・ワシントン、184ヶ国
・国際通貨基金(IMF・International Monetary Fund)
欧州主導、本部・ワシントン、188ヶ国
・アジア開発銀行(ADB・Asian Development Bank)
日本主導、本部・マニラ、67ヶ国/地域
中国は、先月末、新シルクロード構想「一帯一路」を公表。陸路として、①中国-中央アジア-ロシア-バルト海を囲む欧州、②中国-中央アジア-ペルシャ湾を囲む西アジア、③中国-東南アジア-南アジア-インド洋、海路としては④中国-南シナ海-インド洋、⑤太平洋-欧州となっています。
このプロジェクト構想は、中華人民共和国の苦しい現実を何が何でも打破するための、政治・経済・安全保障を包括した歴史的大帝国への展望と野心を、露わにしたものと言えるでしょう。そしてそのための巨額の融資を担うのがAIIB(アジアインフラ投資銀行)に他なりません。
中国経済の苦しさは半端ではなく、今や、世界の工場としての条件を失いつつあり、雇用の確保に赤信号が確実に灯るとともに、過剰な在庫も際限がなくなりつつある時、希望の星はこのプロジェクト(新シルクロード構想)しか方策がないとの認識に至ったものだと思われます。
それがためには、米国、日本の参加を欠かすことはできません。すなわち、アメリカと日本の“膨大なお金”を頼みにせざるをえず、参加勧誘に必死であり、信じられないことに、取りあえずは低姿勢を貫いていると言われています。今、反日の言動を若干弱くしているのはそのためだろうと見ています。
それでは、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に対して、6月末の最終決定に日本はどのような姿勢をとればよいのかを考えてみたいと思います。
・日経新聞、朝日新聞など大半の親中派のメディア、ほとんどの野党と一部の与党政治家、産業界の一部、親中派の文化人は、イギリスやドイツが参加したことを受けて、浮き足立ち次のような発言をしています。
「バスに乗り遅れるな」
「このままでは、世界から孤立する」
「アメリカに義理立てすれば日本が沈没する」
「世界貿易から日本が除外されてしまう」
・「バスに乗り遅れるな」など過去の歴史においても聞いたセリフです。第2次世界大 戦の日独伊三国同盟の時も「バスに乗り遅れるな」の大合唱、その結果は○か×か、言わずもがなです。外交は扇動の狂騒のなかでではなく、冷静な利害得失を考慮したうえで決めるべきではないでしょうか。
・第2次世界大戦後の歴史の歩みから判断すれば、わが国が、右すべきか、左すべきかを選択しなければならない政治・外交案件においては“朝日新聞の主張の真逆が全て正しかった”という歴史の真実に鑑みれば自ずと結論がでます。したがって、この件は、急がなくても結構、という結論に落ち着きます。「急いては事をし損じる」という格言もありますから。
・中国側の説明では、中国の出資は40~50%、理事会はほとんど開かず総裁の専決、総裁は中国共産党中央委員会にお伺いするとのこと。ということは、最終決定権は中央委員会総書記である習金平国家主席が持つことになり、AIIBは中国政府の下部組織だということに他なりません。
・中国(中華人民共和国)はご存知のように、中国共産党の一党独裁国家ですから、融資をどのように使うかについて、他国の関与する余地は全くなく、政治的、軍事的に使うことは充分想定されます。したがって、わが国の主張などは一切通らず、ただ、出資しただけ、ただ中国に差し上げただけということになりますから、現段階で参加するのは無謀極まりないと言わざるを得ません。
・中国は世界最大の外貨保有国ですが、今、それも激減してきていますので、AIIBに是が非でも米国や日本の出資を仰ごうとしているのです。要するに「他人のふんどしで相撲をとろう」としていることは間違いありません。また、報道によれば、日本と米国が不参加となればAIIBの発行する「債券の格付け」が2流の格付けになることが濃厚であり、資金調達コストが高くなることは必至と言われています。
・麻生太郎財務相(副総理)は、日本が参加しない理由として、①出資金は税金であり、不明朗な形では出資できない。②審査などは参加する国で決めるべき。しかし、理事会の構成、審査の方法(誰が・どこで)はどうやるのかを質問しても中国側から何の返事もない。を挙げています。
・世界銀行(WB)、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)は、理事会において、リスク管理のなかで融資基準を厳格にまもり、適正な融資計画を心掛けています。これが自由民主主義国家間のふつうの在り方です。
それにしても、麻生太郎財務相の明確な理由にもとづく不参加方針は素晴らしく、まことに賢明な判断だと考えます。
つい先日、中国側が「筆頭格の副総裁・理事ポスト」を用意するとのアメまでも提示していたことが伝えられました。
日経さん、朝日さん、もう「バスに乗り遅れるな」という軽々な言葉を使い、国民を扇動する時代は終わっているのではないでしょうか。
政治家、官僚、産業界のみなさん、そう浮き足立たずに、堂々と構え、慎重のうえにも慎重に対処されることを望みます。
みなさまはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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コメント
霧が晴れるように、すっきりと分かりました。
そういう事だだったのか!と思いました。
中国の発展原資の最大(多分)のものは、日本の賠償金だったと思っています。周恩来は賠償を求めないとしましたが、
経済協力という名で巨額の資金を提供してきました。経済の離陸段階で、どれだけ大きな役割を果たしたかしれません。また、技術協力も多大なものがあります。
次の段階では「解放経済」という名のもとにしきりに合弁をやりましたが、その実態は、中国側は土地の現物出資、日本は機械設備、技術、資金を負担し、製品は必ず輸出する(初期には)というものでした。逆にみると、中国は使い道もなかった土地を提供しただけで雇用を生み、技術を無償で吸収し、その挙句ドルを稼げたわけです。
どこの国も原始的段階では、関税収入などの絶対に安全な担保でしか融資を受けられなかったのですが、中国の天才的な手法は、これを覆しました。
ビジネスマン育成塾の慧眼は、AIIBの謀略を見事に見抜いていると思います。
投稿: 鎌倉國年 | 2015年4月17日 (金) 16時43分
真に理路整然とアジア平和と日本発展の志を開陳されておられ、感服いたしました。欧米のクオリティーペーパーは日本に存在しませんが、このビジネスマン育成塾ブログがそれに代わるものでしょう。今後ともご健筆を期待しております。有難う御座いました。
投稿: 村上東雪 | 2015年4月17日 (金) 10時14分