“地方の衰退”を考える!
480回目のブログです。
“島といふ 島のはてまで
司人 恵みの波を かけるならしも”
明治天皇御製(明治38年<1905>)
わが国の領土である多くの離島を保全し、島民や漁民らが安心して暮らせるように、官吏の諸君はよく尽くしてほしいものだ…。
明治天皇は、おだやかな政治の成果が、わが国のすべてに、すなわち、辺境(国境い)にも、島嶼(とうしょ・大きな島と小さな島)にも、地方にも、遍く行き渡ることを希われ、上のような御製となったものと思います。
厳しい国際環境に直面している辺境の島嶼に住む人々は不安な日々をおくっているに違いなく、また、いまや地方の衰退が声高に叫ばれ、その解決策に茫然としている現実が目前に立ちはだかっていることも事実と言えましょう。
さて、先日5月3日、滋賀県日野町の有名な「日野祭り」に出向きました。古の近江日野商人の豊かな町ゆえに、通りの各家には目の覚めるような緋毛氈の飾りがあり、雅な神輿が3基、曳山16基、いずれも見事な芸術品であり、近隣からの老若男女でおおいに賑わっていました。
それにしても、年々、地方が過疎化により疲弊しつつあり、地方をどのようにしていくべきかは、わが国にとって最も重要なテーマのひとつとなっています。
昨年、地方創生を掲げた日本創生会議が「ストップ少子化・地方元気戦略」(増田寛也座長・増田レポート)と題して発表した中の将来予測に「2040年までに896の自治体が消滅する」と言う内容があり、今「地方消滅」というショッキングな言葉として一人歩きしています。
増田レポートの本来の趣旨は、地方の半分の自治体の経営が立ち行かなくなる、すなわち地方自治体の破綻を述べているのであって、決して地方が消滅するというおどろおどろしいことを指しているのではありません。地方自治体消滅≠地方消滅。
レポートの最大の眼目は、地方自治体消滅を避けるためには少子化をストップさせなければならないとして、次の基本目標を掲げることを提案しています。
現状(2012年) 出生率=1.41
↓
基本目標(2025年) 『希望出生率』=1.8
(2035年) =2.1
(希望出生率とは国民の希望が叶った場合の出生率)
上記のように、出生率が2025年に1.8、2035年に2.1となった場合は、総人口は2090年で約9500万人と安定し、高齢化比率も低下するとしています。
地方の衰退についての感想を述べたいと思います。
・増田レポートにあるように、地方での人口確保は避けて通れない最大の眼目であり、それに対する政策を総動員しなければなりません。
・人口確保というと、識者はよく移民をすればよいと発言、自民党や民主党、安倍総理も1000万人移民策を能天気にすすめています。しかし、欧州各国やカナダなどは今になって移民政策の誤りを認め、移民の中止に動き始めました。わが国も移民に頼るべきではないことは外国での諸事実が証明しているのではないでしょうか。
・フランスを見てください。移民イスラム人の出生率が8.1、従来国民の出生率が1.8ですから、近い将来にはフランスはイスラム国家となることは間違いなく、国内での諍いは避けられようもありません。不気味な不安要素が目先に覆いかぶさってきているのです。
・増田レポートの素晴らしいところは、人口増を日本国民で達成しようとしていることです。わが国での移民増は社会的摩擦を増やすばかりで得るものは少ないと判断します。
・人口対策は長期の課題ですが、喫緊の課題として、財政破綻への対策を講じなければならず、処方箋を抜本的に実行すること以外に道はないでしょう。
・地方の衰退は、地方の魅力が減退したのであり、魅力を創造すること、創生することは、頭の固い社会主義的志向のお役人やその地を知らない都会人には無理であり、地方のやる気のある人がその地を活かした諸策を実行することだと思います。
・現実に、島根県松江市隠岐の島の海士(あま)町・山内町長の取り組みが脚光を浴びています。役人の給料半減、島ごとブランド化(干しナマコ・さざえカレー・岩牡蠣・放牧牛など)の実践、島への移住取り込み、子育て支援、などなど自らあらゆる手をうっている姿勢には目を瞠ります。見事に成功することを祈らずにはおられません。
・日本では田舎と言えば「文化は果つるところ」「洋風文化が遅れたところ」「公民館で演歌が流れるところ」というイメージですが、欧米の田舎は「カントリー生活」「オシャレな生活文化」という絵になる存在です。現代の若い女性がどちらを好きかと問えば自ずから答えは出ます。(プレゼン工房ブログより一部引用)
・そうなんです。「ロマンチックなカントリー」をイメージできる村や町を創造していかない限り、若い世代の、特に若い世代の女性を呼び込むことは難しいと思います。
・しかし、よくよく考えてみれば、江戸幕藩体制の時は、地方の各地はそれぞれが立派な見事な文化空間を創造していたのではないでしょうか。歴史に学べば、何かできることがあるように思えるのですが…。
・今、国政選挙で一票の格差が論じられていますが、地方の疲弊、衰退が顕著になっている時、地方の苦悩や実情をくみ上げるのは、そこに密着し、その地域を基盤にした政治家のはずです。その意味で、観念的な法律論を根拠に一票の格差だけを声高に煽り、地方の声を無視してもよいとする選挙制度を推進するメディアや司法の政治感覚、国家感覚に大いなる異議を唱えたいと思います。
・愛国心は郷土愛から育まれます。郷土愛はロマンチックな言葉ではありますが「郷愁」に基づくもの。そのためには、均衡ある国土の発展を期すべきであり、都市と地方のバランスのとれた発展が必要になります。地方復活への道を探ることこそ最も重要な政策課題ではないでしょうか。
・その意味で、都市と地方との「バランス税」「地方活性化税」を検討してはいかがでしょうか。
地方の衰退をどう捉えていくのかは、なかなか難しいテーマですが、地方をロマンチックカントリーに創生していくダイナミズムが郷愁を呼び起こすであろうと信じ、その道をすすむべきだろうと考えているところです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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コメント
論旨に異議も問題もありません。外国人を安易に入れるな、地方の魅力を想像せよ、都市と地方のバランスを取れ・・・ いずれももっともで保守系の人ならだれでもうなずくでしょう。最後に「バランス税」「地方活性化税」を取れ、も結構でなことです。ただし、現行の税配分システムでも地方重視の名のもとに結果としてその傾向が強くなっています。
具体的な新しい施策はなになのでしょうか?
地方の意識を変えるためには、中央からの金目以外にやるべきことは何なのでしょうか?
投稿: 吉田 | 2015年5月15日 (金) 13時01分