“世界遺産”登録問題…安倍外交の限界と敗北!
489回目のブログです。
“夢の國 燃ゆべきものの 燃えぬ國 木の校倉の とはに立つ國”
森 鷗外(明治大正の文豪・軍医総監)
この素晴らしく夢のような国、校倉(あぜくら)造りの正倉院それ自体は堅固だが、木造ゆえ火に弱いにもかかわらず、よくも兵火や雷火にあわず、今日まで大切な御物を守り続けてくれたものよ。木の校倉が永久に立っている國、それが日本なのだ…。
毎年、帝室博物館長として建立後千数百年も経過している正倉院を訪れた森鷗外の、歴代の「み蔵守り」達への心からの敬意、わが日本を守ってきた聖代への畏敬の念、それらが率直に平明に詠われている名歌ではないでしょうか。
飛鳥、奈良などに触れるにつけ、永い歴史を刻みながらそれを現代にまで維持していく営為は、歴史に対する深い思いが無ければ到底為し得るものではありません。そう考えれば、歴史を誇りに思い、大切にし、決して裏切ることのないように努めることが、次代の人たちに引き継ぐためにも肝要となります。
そんな意識を、わたし達、現在に生を受けている者は、はたして有しているのかどうか、最近の事象から考えてみたいと思います。
■ 明治の産業革命、世界遺産に…日本は韓国に譲歩
ドイツのボンで開かれている国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は5日夜「明治日本の産業革命遺産」(福岡など8県、23資産)の世界文化遺産への登録を、韓国も含む21委員国の全会一致で決定した。審議での発言内容などを巡り日韓が対立したが、審議直前に合意に達した。
日本代表団は登録決定後、構成資産の一部について「1940年代に、意思に反して連れて来られ、厳しい環境で労働を強いられた」朝鮮半島出身者が多く存在したことへの理解を深めるための措置を講じる方針を表明。「被害者を記憶にとどめるため」の情報センターの設置を検討するとも述べた。日本側が事実上、譲歩した形だ。
一方、韓国代表団は「日本が誠意をもって実施すると信じる」と述べた。
(2015/7/6 yomiuri online 一部抜粋)
明治の産業遺産が世界遺産に登録されることが決定したことを、テレビや新聞が、一部を除いてほとんど無条件に大喜びで報道。特にテレビは、明治日本の産業革命遺産23施設の関係者の喜びの姿を大きく伝えました。
たしかに、これらが世界遺産になったのは喜ばしいことかも知れませんが、ちょっと待ってほしいものです。
わが国の世界遺産登録にいちゃもんを突き付けたのが例によってお隣の韓国でした。韓国は、これらの施設のうちには、第2次世界大戦時に朝鮮人を徴用工として労働させた施設がかなりあり、世界遺産に全く相応しくないとして、登録に絶対反対の意志を表明。そして、審議する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の各国メンバーに執拗に工作活動を行いました。
全会一致の賛成が登録の原則ですから、日本は韓国とかなり突っ込んだ交渉をしたのですが、韓国には理解されず、とうとう、日本が全面的に譲歩することで決着となったものです。問題点は2点…
①1940年代に、意思に反して連れて来られ、厳しい環境で労働を
強いられた朝鮮半島出身者が多く存在したことを認めたこと。
(合意英文:forced to work)
②労働を強いられた朝鮮半島出身者を記憶に残すための情報センター
を設置すること。
日韓、日中の交渉はどうしてこんな結末になるのか。当事者はそれなりに粘り強い交渉を行っているはずですが、自虐、贖罪意識からでしょうか、
“踏まれても
踏まれても 付いていきます 下駄の雪”
という都都逸(どどいつ・俗曲のひとつ)が何となく頭をよぎります。自民党から公明、民主、社民、維新まで親韓・友韓の政治家が多数いますが、踏まれても…の歌から判断すれば、親韓という姿勢は屈韓を意味しているとしか考えられません。
韓国は、近年、竹島はもとより、いわゆる従軍慰安婦や戦時徴用工の問題などについて、わが国に対して歴史戦を仕掛け、無理難題を投げ掛け、更なる賠償と永遠の謝罪、はては天皇陛下に土下座を要求するなどやりたい放題、言いたい放題です。
事実も真実もあったものではありません。あったものは無いと言い、無いものはあったと言い、いわゆる歴史問題を世界に発信、発言し、わが日本を何が何でも陥れようとするのが韓国(韓国政府・韓国メディア)の本質であることは誰しも認めるところではないでしょうか。
その意味で、これらの2点は、わが国とって、現在から将来に亘っての大きな禍根を残すことになると思われます。
・「強制的労働」についての英語には次の3つがあります。
slave labor(奴隷の労働・強制労働)
forced labor(強制労働)
forced to work(日本側:? 韓国側:?)
今回の日韓の合意では「forced to work」という英語になっていますが、日本側が「働かされた」という言葉を当てたのに対して、韓国側は「強制労役」という言葉を当てています。辞書では「余儀なく働かざるを得ない」とあります。見解がここまで異なれば、現在から将来にわたり、またまた「謝罪・賠償」を請求、要求されることは火を見るよりも明らかではないでしょうか。
・ご覧いただきたい。韓国メディアは「日本が朝鮮人強制労働の事実を認定したことは、韓国外交戦の勝利だ」と言い、外交部長官(外務大臣)は「日帝強占期に韓国人が自己の意思に反して労役させられたということを事実上初めて日本政府が国際社会の前で公式的に言及したということに大きな意味がある」と説明。(すでに韓国メディアは日本に勝利したと大喜び、大騒ぎしています。)
・『強制労役(無理やり働かされた)情報センター』を設置することはマイナスにこそなれプラスはゼロ。展示内容で必ずイチャモンが付き、南京大虐殺紀念館のように、反日・自虐のおどろおどろしいものを掲げるように要求されること間違いなく、真実、大変なことを飲まされたのではないでしょうか。
・以上から、わが国は「大きな火種」を抱えたままであり、遅かれ早かれ、世界から“人道に反した日本人”を自ら世界に宣伝することになるに違いありません。外交的には完全に敗北…あゝ、何たることよ!!
安倍首相は「大変うれしく思う」、菅官房長官は「徴用工をめぐる表現について、強制労働を意味するものではない」、岸田外相は「誠に喜ばしい」と、日本の指導者が揃いも揃って能天気な発言をしています。
今回の日韓合意は、わが国日本および日本人を悪逆非道として貶めた従軍慰安婦に関する「河野談話」に次ぐ「第二の河野談話」となるおそれが十分にあります。それほど重い罪を自ら背負った合意ではないでしょうか。
安倍首相は世界遺産登録に最も積極的であったと伝えられています。もしも、それが、山口県萩市に5施設の候補地があるからで、国家の為ではなく、選挙区郷土の為に魂を渡した…のではないことを祈るのみです。
これまでの安倍首相の外交は高く評価されるものですが、朝鮮・韓国とどうにも上手くいかないのは、官邸・外務省・文科省の国家意識の欠如と連携の不足および土壇場の安倍首相の腰砕け、ブレにあるのではないかと推測します。
今回の登録は、明治の産業革命遺産を世界遺産にしようとするもので、韓国に文句を言われる筋合いは全くありません。一言半句もないはずです。韓国の主張する徴用工は1940年代のことであり、時期も大幅にズレ、趣旨も異なり、無礼、無体、無理、難題、まったく日本への歴史戦争以外のなにものでもないと考えます。
本来、明治の産業革命遺産を世界遺産にする目的は、それらが、日本の進運、世界の進展に大きく貢献したことを示し、日本人がその時代精神をあらためて認識し、世界の人達にもその雰囲気を感じてもらうことに他なりません。
今回の世界遺産登録問題は、喜び30%、哀しみ70%。安倍外交の限界と敗北を如実に感じました。
森鷗外の和歌にあるように、藩屏(はんぺい・国や王を守る人)には、リーダーには、関係者には、心の底に“永久に立つ国”(とはに立つ國)を常に意識してほしいと願いたいのですが…。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
| 固定リンク
コメント
「のんちゃん」のコメント中のKorean-Japanese workersの英文解説が最適かと思います。外務省は常に外交上のミスを後出しで「実はこうだった」という抗弁の形で発信していることが目立つ。日本の政治家や外交官は「外交そのものが国家間のもう一つの戦争であり、我々は弁舌を武器に国益を守るために闘っている」という認識に欠けている。中国や韓国などは多元的価値観のもとに多元的交流を基本とした日米欧などの近代国家と違います。日本が大戦を挟んで150年にわたりアジアのリーダーとして活躍してきたことに中華思想を持った両国民は激しく嫉妬してきた。それが両国政府の反日行動を支えていることを日本人も自覚すべきである。いずれにしても両国とも日本に対してはすべての分野で嫉妬心に駆られた復讐意識をもっていること・日本の国力の弱体化と国際的地位の低下を目的として臨んでいること・交流は友好の為でなく日本の富やノウハウを最大限に利用するためであることを肝に銘じた外交をしなければ日本の東アジア外交は連戦連敗が続くことになる。
投稿: 齋藤仁 | 2015年7月10日 (金) 08時27分
≪語学に堪能な泉ユキヲ氏は「国際派時事コラム」で“Forced to work の稚拙な英語”として、次のように書いています。ご参考ください≫
いったん forced to work という用語を使えば、日本国内向けに「強制労働を意味するものではない」と言ってもダメである。話にならない。
英語で forced to work といえば、
physically forced to work under unreasonable conditions
and without payment
(不当な労働条件のもとで、賃金支払いもなしに労働することを暴力的に強制される)
という意味になる。
これは当たり前です。それが分らない程度の英語力で「外交」ごっこをやられては、たまらない。被害者は納税者たる日本国民だ。
「徴用」を英語でどう言うか。喧嘩の聴衆は高い英語能力のある人たちだ。もっと高等な英語を使うべきだった。「徴用」を、霞が関の文学少女らはこのように表現すべきだった:
A certain number of Korean-Japanese workers were legally
recruited and obliged to work. They were paid at normal
rates as much as other non-Korean Japanese workers.
(一定数の朝鮮系日本人労働者が法にもとづき募られ労働を義務づけられた。彼らは、朝鮮系でない日本人労働者らと同じく、通常の給与を得ていた。)
ここまで言えば、各国の聴衆は「なァんだ」ということになる。
徴用は「自国民を法に基づいて募った」のであり「朝鮮系であるか否かで差別されず、通常の対価を支払われる」。
ここがポイントであり、むしろこれを宣伝する絶好の機会にすべきだった。
Korean-Japanese workers といえば、他国の労働者を他国から拉致したわけではないこともハッキリする。
投稿: のんちゃん | 2015年7月10日 (金) 06時04分