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2015年10月 9日 (金)

“ドイツを見習え”? …VW偽装スキャンダルに思う!

 502回目のブログです。

 

    『落葉』(ポ-ル・ヴェルレーヌ/上田敏訳<海潮音>)

 

   秋の日の
 
ヴィオロンの
 
ためいきの
 
ひたぶるに
 
身にしみて
 
うら悲し

 

   鐘のおとに
 
胸ふたぎ
 
色かへて
 
涙ぐむ
 
過ぎし日の
 
おもひでや

 

   げにわれは
 
うらぶれて
 
ここかしこ
 
さだめなく
 
とび散らふ
 
落葉かな

 

 秋と言えば、上田敏の名訳で知られるヴェルレーヌの「落葉」という詩が浮かんでくるのではないでしょうか。この哀愁こめた情緒あふれる素晴らしい詩を静かに読めば、不思議なことに、濁世に汚れたわが身が清らかに洗われるような気持ちにさせられます。

 

 しかし、ひとたび、VW(フォルクスワーゲン)の偽装大スキャンダル事件を前にしては、そのような洒落た雰囲気を醸し出すことはできません。

 

 VWの報道に触れるにつけ、憤りの先に哀れさを見出し、本来はやってはならない非情緒的なことですが、ヴェルレーヌの詩を一部もじってみました。

 

   げにVW(フォルクスワーゲン)
 
うらぶれて
 
ここかしこ
 
さだめなく
 
とび散らふ
 
落葉かな

 

 自動車業界史上で最大のスキャンダルが生じました。アメリカ環境保護局(EPA・United States Environmental Protection Agency)は、ドイツのVW社(フォルクスワーゲン・自動車業界で世界トップ)が、同社のディーゼル車において、試験走行時に排ガス規制に適合するようにモードを切り替えるソフトウエアを装着した不正行為を918日公表。米国では48万台、世界では1100万台に搭載したことをVWは認めました。アメリカEPAは最大180億ドル(2.17兆円)の罰金を科すとしており、集団訴訟も準備されつつあり、影響が世界へ広がることは確実となっています。

 

 VW問題について思いつくままに記します。

 

 排ガス試験では車体を固定し、加速や減速を繰り返し、排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の量を測定します。一般的に排ガス規制と燃費とは比例しますので、VWは「試験の時だけ排ガスを減らす」不正ソフトを組み込むことで試験に合格したものです。

 

  これは、要するに「替え玉受験」と同じ悪質なもので、完全にアウト!

 

  VW車は実際の道路を走った時には、試験時の10倍~40倍の窒素酸化物(NOx)を排出すると指摘されていますから「クリーンディーゼル」とは真逆の、人を欺く「ダーティディーゼル」そのものです。最大で40倍の大気汚染。ほんとうに、これでクリーンディーゼル車をうたい文句にするなんて、アメリカをはじめ世界の人々を舐めきった振舞いだと言わざるを得ません。

 

 VW事件は、タカタのエアバッグ「事故」とは異なり、まさしく「確信犯」というもので、超悪質と見るべきです。これだけ精度の高い不正ソフトを組み込むのは、単に数人の技術者によるものではなく、会社トップ層の、企業倫理・企業規律の欠如、いわゆるコンプライアンス無視によるものと考えられます。

 

  しかし、この事件は、VW社だけの問題ではなく「ドイツ政府ぐるみ」の偽装であると言われていることに着目しなければなりません。

 

 わが国では、近年とみに「ドイツを見習え論」が盛んに唱えられていますが、見習うべきところが果たしてあるのかどうか、今一度冷静に判断することが必要です。

 

 たとえば、エネルギー政策において、わが国もドイツのように脱原子力発電、太陽光・風力・潮力・地熱などの自然エネルギー・再生可能エネルギーを目指すべきだとの議論が優勢です。ドイツは近い将来原発を完全廃止し、電力不足分はフランスの原発による電力を購入すればいいとの方針をとっています。

 

  わたしは、ここに、ドイツ国民ならびにドイツ政府の倫理感の欠如を感じざるを得ません。自国は原発から完全に離れ、フランスから堂々と原発電力を購入する、この奇妙な考えは“精神の堕落”を示していると言えるでしょう。わたしが前々からドイツの脱原発政策に不信の目を向けているのはこのような理由もひとつにあります。

 

  ドイツは、一方で、国ぐるみ窒素酸化物(NOx)を世界にまき散らし、一方で、環境対策として原発を廃止の意向。わが国の文化人やリベラルはドイツを環境先進国としてもてはやしますが、どこを見ればそう言えるのか理解に苦しみます。両方ともに、卑しいごまかしがあることを認識すべきではないでしょうか。

 

  ドイツでは現在原発は9基稼働。再生エネルギー電力の効率的な需給体制が確立しておらず、電力代は高くなる一方ですから、場合によってはエネルギー政策の変更もありうるのではないかと言われています。

 

  わが国でも、脱原発・反原発の人たちは、電力が不足すれば、大韓民国や中華人民共和国の原発稼働による電力を、頭を下げて分けて頂いたらいいではないかという議論を大真面目にやっていましたが、ほんと、冗談ではありません。国の生命線を反日の国家に預けるなんて、全くの属国願望としか思えません。彼らには、エネルギー政策は国家経済の基盤であるとの認識が全く欠落しています。

 

 ドイツから唯一見習うべきものは「憲法の改正」ではないでしょうか。ドイツは戦後59回も改正しているにもかかわらず、日本はいまだにゼロ。(ちなみに、フランス27回・カナダ19回・イタリア16回・アメリカ6回)戦後70年間の内外の変貌は著しいものがあり、憲法改正がゼロとは、日本がいかにおかしな存在かを物語っています。もう待ったなし、一刻も早く、憲法改正に踏み切らなければなりません。

 

 フォルクスワーゲンの大スキャンダルに関しての感想を述べました。

 

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

 

次回も
時事エッセー
です

 

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コメント

VW偽装問題からは離れますが、ユーラシア大陸西側の最大の工業国であり、近代国家建設時から日本と似たような歴史を歩んできたことから多くの日本人にとってドイツのイメージは悪くない。しかし個としてのドイツ人でなく、国家・国民としてのドイツを見る場合、好き嫌いや善悪といった日本人特有の単純な仕分けで見るのは間違っているのではないか。一方で日独同盟を働き掛けながらもう一方で蒋介石軍を支援するという発想はナチス故かドイツの国民性か、はたまたヨーロッパのマキアベリズム故か。ユダヤ人殲滅の発想はヒトラー個人の問題かドイツ或いはヨーロッパ(キリスト教)の文化故か。1871年のドイツ統一に至るまで長年分裂した領邦国家でありながらローマ帝国の後継意識を持ち続けてきたドイツ、また暗黒の社会主義監視国家だった東ドイツと英仏米から警戒されてきた西ドイツが統一するという歴史的経験をもつ現在のドイツ人、等々。いずれにしても小生にとってドイツは、憧れの対象でなく、ヨーロッパ世界の熾烈な生存競争をいかに生き抜いてきたかという一つの見本でしかありません。

投稿: 齋藤 仁 | 2015年10月 9日 (金) 15時23分

確信犯的なこの不正を追及したのは米国の関係機関とのこと。見習うべきは一体何か。違反・違憲・不正・反倫理的その他諸々、暴露されるまでは、蜜の味を味わい尽くそうという魂胆。~~汝ら、これらを石もて非難しうるのか?

投稿: kawaski akira | 2015年10月 9日 (金) 11時33分

全く同感です。私は近畿(化学)会の「工学倫理研究会」に所属しており、重大(科学)技術に係わる科学者・技術者の「所属組織への責任以上に社会に対する責任度の浸透」運動に10年以上関与しており、その視点で目下東電問題の探求に集中しております。
 東電問題は「未曾有の地震問題、つまり天災」として片付けられてきましたが、IAEAの4年間の調査結果の6月報告では「天災でなく人災(つまり東電の安全対策は世界レベルより低劣)だった」との総括報告が出ながら日本の大手メデイアは一切報道しない事に、日本国家の劣化(危機)を痛感し、小生は多様な運動に励んでいます。

投稿: 岡村 昭 | 2015年10月 9日 (金) 06時16分

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