素晴らしきかな北陸…秋の金沢を散策する!
501回目のブログです。
“水鳥の 行くも帰るも
跡たえて されども路は 忘れざりけり”
道元(鎌倉初期・曹洞宗の開祖)
水鳥は、秋は南に渡り、春には北へ帰って行くが、行路には何も残さない。しかし、水鳥はその行路を忘れることはないのである…。
道元禅師の和歌は、人生あれこれと作為せず、素直にあるがままに任せよという訓えであろうかと思いますが、人生、山あり谷あり、順境の時もあれば逆境の時もあり、なかなかそのような清浄な心境に至ることはできません。
今回は501回目のブログであり、新たな気持ちでの再出発となります。道元禅師の「無為自然」をめざして、肩肘張らず、できるだけ淡々と書いていくつもりですが、意に反して、濁世の塵埃にまみれた身ゆえに、なかなか難しいのではないかと思っています。
さて、先日、学生時代の同期会をやろうということになり、東からも西からも便利よく、北陸新幹線の開通を機に観光的にも盛り上がっている「金沢」を十数名で訪れました。
大阪京都組は5人、JR大阪から特急サンダーバードで2時間44分、観光シーズンで指定席は満席でしたが、1ヶ月まえにチケットを確保していましたので一安心。3時間弱の長時間も、久しぶりの顔合わせということもあり、ワイワイと会話がはずみ、あっというまに金沢に到着。
散策は大阪・京都組で歳も顧みず盛り沢山。1日目、兼六園 → 成巽閣(せいそんかく) → 本多の森 → 石川県立美術館 → 金沢21世紀美術館 → ホテル(懇親会・宿泊)。2日目、ひがし茶屋街 → 武家屋敷跡・野村家 → 近江町市場(見学・昼食) → 金沢駅。
まず、金沢と言えば【兼六園】。金沢一の名所として、老若男女、外国人もこぞって訪れる人気スポットです。兼六園は、水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並ぶ日本三大名園のひとつとして
高い評価を受けています。
それにしても、日本人は3と言う数字が大好きで、三名城(熊本城・名古屋城・姫路城)、三大祭(祇園祭・天神祭・神田祭)、三大随筆(枕草子・方丈記・徒然草)、三名泉(有馬温泉・草津温泉・下呂温泉)、そして、維新の三傑(西郷隆盛・木戸孝允・大久保利通)、三大そば(戸隠そば・出雲そば・わんこそば)などなどいくらでも挙げることが出来ます。
兼六園は江戸時代に作庭された池泉回遊式庭園であり、池・灯篭・石・橋・亭・松・桜などが土地の高低差をうまく利用して配置されており、素人ながら、名園だと思えました。
内外の観光客が来園していましたが、庭園の素晴らしさに感動したのでしょうか、騒ぐことなく静かに見回っていたのが印象に残ります。
兼六園の端に前田家奥方の御殿である【成巽閣】(せいそんかく・重要文化財)がありますが、外観だけを見て、本多の森をゆっくり歩き【石川県立美術館】に入館。
石川県立美術館には、前田家が収集した伝統的文化財が展示されています。野々村仁清の「色絵雉香炉」「色絵雌雉香炉」をはじめ、甲冑、能衣装、茶道具、屏風、蒔絵や彫金などの美術工芸品、万葉集、古今集、土佐日記などの典籍…いずれも国宝、重要文化財のオンパレード。この素晴らしい伝統文化財は、金沢を、単に北陸の雄都としてばかりでなく、美意識の高い都市であることを認識させるのではないでしょうか。ゆっくり見ても飽きが来ません。
次に【金沢21世紀美術館】。10年前に開設された現代美術のミュージアムであり、「まちに開かれた公園のような美術館」として、地上1階、地下1階のモダンな建築です。地上と地下から眺め合い出会いを創ろうとする「スイミング・プール」使い捨てる廃材を使い「壁全面をデコレートする作品」など、あっと驚いたり、不思議に思ったりするものばかりであり、普通にイメージする美術館とは大いに異なります。
そんなわけでしょうか、若い人が圧倒的に多いように思えました。若いカップルなどは喜んではしゃいだりしていましたから、結構面白く感じていたのでしょう。
そのあとは、周遊バスでホテルへ。シャワーを浴びて、久しぶりに会う友と友、美味しい石川県の日本酒5種類を味わいながら旧交を温めました。
さて翌日、まずは一日バス周遊キップで【ひがし茶屋街】へ。メインストリートの脇を入った石道路の両側に、出格子のあるお茶屋さんが立ち並ぶ姿は、京都の祇園に似ており、まるで小京都そのものと言っても言い過ぎではありません。街全体が「重要伝統的建造物群保存地区」として、その古い街並みは昔の面影を残しています。街のそばを浅野川が流れ、風情も醸し出しており、金沢で二番目の人気スポットになっているのも納得できます。
次に【武家屋敷跡】。武家屋敷界隈は、江戸時代、加賀藩の中級武士が暮らしていた屋敷群であり、細い路地、黄土色の土塀、風格ある長屋門が往時の情緒ある雰囲気を味わわせてくれます。閑静な佇まいと安定感ある屋敷に江戸時代の武士の誇りのようなものが漂ってくるような錯覚さえ覚えるほどです。
その武家屋敷跡の端に立つ【野村家】が一般公開されていました。加賀藩祖・前田利家の直臣である野村伝兵衛は、1000坪の屋敷と1200石の禄を拝領。屋敷の中心にある贅を凝らした「上段の間」の障子戸を開けると庭に面した濡れ縁があり、そのすぐ目の前の池を錦鯉が
悠々と泳いでいます。
そしてこの障子戸が、上部は和紙、下部は板、透かせる中間部はガラス。とはいっても、江戸時代のガラス(ギヤマン)入りの障子戸ですから、微かに波打っており、得も言えない独特の「美」を創りだしています。
ギヤマン入り障子戸は江戸時代の人から見ると驚愕の品だったに違いなく、現代のわたし達が見ても機械製造では表わせない手工業的な暖かみに心を惹かれ、あらためて加賀武士の美意識に感銘した次第です。
アメリカの日本庭園専門誌で5位にランキングされたそうですから、外国人観光客が多いのも理解できます。
さいごに金沢の食文化を支える【近江町市場】へ。さすがに金沢の台所、地元の金沢産・石川産を中心に、生鮮食料品である魚、野菜、果物から肉まで、ありとあらゆるものが並べられており、鮮度は間違いなく高く、値段もかなり手頃のように見えました。何を買うべきか目移りしましたが、珍しいものを少し入手。
昼時だったからでしょうか、市場は観光客や地元の人で大混雑、おおぜいの人が飲食店前に並んでいるほど。それでも、何とかお店を確保し、軽くお酒をたしなみながら、名物の海鮮どんぶりに舌鼓を打ちました。
それから金沢駅へ。駅で手土産(羽二重餅)を買って一同帰路となりました。
久しぶりの金沢でしたが、吃驚するほどの変わりようでした。国際的な観光地として、街並みは整備され、清潔感溢れる都市となっています。そして、何よりも市民の優しい応対に心が和んだこと一度ならず、これも、近世において、江戸、大阪に次ぐ3番目の大都市としての誇りある文化を伝統として受け継いでいることの表れではないかと思った次第です。
みなさまにも、北陸の雄都・金沢の散策をおすすめします。
次回も
時事エッセー
です
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コメント
この文章は、このまま金沢観光案内ハンドブックに採用されるのでは? いかにも臈賢者連の清遊の風情が、好ましいですね。(つぎの機会があれば、わが生誕の地・主計町にもどうぞお運びください。)
投稿: kawaski akira | 2015年10月 2日 (金) 11時51分