“いわゆる従軍慰安婦問題”…日韓合意をどう見る!
515回目のブログです。
“掃けば散り 払えばまたも ちり積もる 人の心も 庭の落ち葉も”
作者不詳・道歌(教訓歌)
庭は掃いてもすぐに葉が落ちてきてちり積もる。人の心も同じようなものである…。
禅宗の教え。掃いても掃いても心の塵(自負心・驕慢心・執着心など)は積もってしまいますので、常日頃から心の掃除を行い、塵が積もったら払えばいいのではないか。という意味でしょうか。
たしかに、わたし達人間は煩悩の塊であり、しかも百八つもあるのですから、その心の塵をすべて払うことは至難という以外にありません。とは言うものの、普通であれば、一年を経るごとに人生経験を豊かにするはずであり、少しでも塵を払い、自らの品性をほんのわずかでも向上させることができればと願わずにはおられません。
人の心についてはそうですが、これが、国対国、外交となればそれ以上の困難が横たわっています。たとえば、お隣の韓国との諸問題、とりわけ、いわゆる従軍慰安婦の問題においてはそういえるのではないでしょうか。何度、交渉、話し合いをしても、2国間の国際条約を締結しても、数か月、数年たてば、ちゃぶ台返し、いわゆるゴールポストの移動が行われ、日韓のわだかまりと相互不信は頂点に達しようとしていました。それは、どんどん塵の高さが増してきていたからに他なりません。
ところが、年末ぎりぎりの12月28日になり、日韓外相会談によるいわゆる従軍慰安婦問題での決着がつき、日韓両外相の共同発表となりました。岸田外務大臣の発言は次のとおりです。
①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。
安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。
②日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心を傷の癒しのための事業を行うこととする。
③日本政府は上記を表明するとともに、上記②の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
※あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。
同じように、韓国の尹外相も適切に実行するよう努力する旨を表明しました。(ここで注目すべきは、日本政府は“慰安婦問題”としたのに対して、韓国政府は“従軍慰安婦問題”という言葉を使っており、用語に差異があることです)
これに対して、わが国をはじめ国際社会で、様々な反応、意見が出ていますが、わたしなりの感想を述べたいと思います。
・政治は結果だとの観点から、慰安婦問題が、もしも安倍首相の読み通りにこのまま落着するならば、抜群の外交的成果と言えるでしょう。しかし、かの国は日韓基本条約という国際条約でさえ数年を経れば無視・非難・批判するような半近代国民国家であり、国内政治情勢により再度蒸し返しされたりするならば、完全な外交的失敗と言えます。その際、文書にさえしていないことも指摘されるのは間違いありません。
・日韓の両外相とも「この問題が“最終的かつ不可逆的”に解決されることを確認する」と言明していることは極めて重大で、ここまで韓国が踏み込んだことから判断すれば、今回だけは本物かなとも思えます。
・しかしながら、今後、わが国のリーダーである大臣や与党幹部の刺激的で不用意な発言が出れば、非難とともに、状況は変わったとして約束は反古にされる可能性は大いにあると認識しなければならないでしょう。
・このような日韓合意がなされたことは、現在の国際情勢と無関係ではないと思います。「米国は、日韓を団結させて中国に対抗させる意味で、慰安婦問題の解決を歓迎している」(ブルームバーグ通信)と報道されていますが、今回はアメリカが素早い反応を示しており、まるで“公証人”の立場に立っているように見えます。そう見れば、今回合意の背景にはアメリカの日韓両国に対する強固な後押しがあったのではないかと考えざるを得ません。
・日本国総理が責任を痛感しおわびと反省の気持ちを表しましたので、中国・台湾などが同じような補償を要求してくることは避けられないと思います。中国などは、歴史はプロパガンダと考えるのを当然としており、数十万人、数百万人に膨らませる可能性は否定できません。
・国際的には、早くも ザ・ガーディアン紙
が「最高200,000人の女性(多くの韓国人)が第2次世界大戦の間、性的奴隷制度にあった。今、ついに、日本は謝罪した」と報じています。「up to 200,000 women」「sex slavery」「has apologised」などの用語を使用。これからは、世界のメディアがこんな報道をすると思われますが、わが国はそれを訂正するだけの力と意欲と勇気もなく、ただ手をこまねいているばかりでしょう。
・本来ならば原則論でわが国の主張を貫くべきですが、何せ、国際世論は現在から見た人権で圧力をかけてくることは必定。残念ながら、日本政府の外交力ではこの理屈を崩すことはできないと考えられます。日本外交の問題点のひとつに、広報・情宣・工作の弱さが挙げられており、これの量的、質的向上は急務と言わざるを得ないのではないでしょうか。
・国際時事コラムの泉氏は「冷静に考えれば、今回の妥結で得たものは大きい。苦渋の内容を考えれば安倍外交の勝利とまでは言えないが、堂々の及第点だ」と述べています。
・たしかに及第点と判断すべきでしょうが、合意発表の翌日12月29日に、韓国政府当局者の発言が気になります。『「不可逆的というのは相互のことだ」韓国側が問題を蒸し返す場合だけでなく、日本側から「軍の関与」「心からのおわびと反省」といった合意内容を否定する発言や見解が出された場合も、合意違反になるとの認識を示唆したものだ』(聯合ニュース/時事通信)という内容です。
・そこで、わが国の朝日を始めとするリベラル・サヨクのメディアが大臣や与党幹部の発言の揚げ足をとり、敬愛する韓国に“ご注進、ごちゅうしん”となることは必至、日韓関係にまたまたヒビが入るような予感がしますが、はたしてどうでしょうか。
・わが国は、大使館前に立つ慰安婦像の撤去を見てから韓国政府財団に10億円拠出することで、最終的かつ不可逆的な決着と判断すべきだと思います。
そしてさいごに、日本と韓国との関係は、つかず離れずの関係にとどめるべきであり、間違っても深入りすることは絶対に避けねばなりません。それが歴史に学ぶところではないでしょうか。日本と朝鮮との関係について、福沢諭吉は、最低限の交際に留めるべきだと強く主張しましたが、あらためてその判断の正鵠さを思い知らされる今日です。
もうひとつ、報道によれば、もう、日韓議員連盟(200名を超える大所帯)の衆参両院議員が蠢き始めており、何か不純な動機がありそうでいかにも面妖、軽佻浮薄そのもの。どうしても動きたいならば、しばらく様子を見てからにすべきではないでしょうか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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コメント
戦時中、陸軍少尉として、大陸に駐屯した経験のある父から直接聞いた話です。
日本人虐殺事件としては、通州事件や済南事件が有名ですが、実は規模は小さくても、当時大陸では、日本人が襲われる、殺されるという事件は日常茶飯事に起きていたそうです。
そのため在留邦人保護の任につく日本軍が、当時は朝鮮人も日本の臣民でしたから、朝鮮人の慰安婦を保護するのは当然だったそうです。(日本人の慰安婦も当然保護しました。)
それから、軍の関与は、もう1つありました。
それは性病対策です。
慰安婦は商売ですから、1人でも多くの客を取ろうとするので、軍医に検査をさせて、罹病の慰安婦は強制的に休ませたそうです。
実際の軍の関与は以上ですが、日本政府はその辺りのことが分かっているのか、心配です。
投稿: 永江敬義 | 2016年1月 8日 (金) 23時28分
外交的にはすでに解決済みの問題であり、韓国政府がどんな難癖をつけようとその方針を貫くべきであった。外相合意がなくてもどのみち、韓国が民間レベルで慰安婦像を始めとする対日批判を緩めることがないのは交渉前からわかっていたことである。日本政府は何年経とうと何十年経とうと、条約上「解決済み」の問題に手を加えるべきではないし、和解交渉も必要無かった。米国等における反日慰安婦問題については、わが国は徹底して反論資料を喧伝すべきであり、これからも続けるべきである。 米日韓三国の連携が極東の安全度を決める、という説もあるが、韓国が北朝鮮を併合する時が来ても、韓国民はナショナリズム面で逆に北朝鮮に併合されるだろうし、北朝鮮と日本の戦時賠償は未解決といったイチャモンをつけられるのは間違いない。その時に前例となるのが戦後の日本が韓国に贈り続けてきたカネの額とその項目となるだろう。 これまでの日韓戦後史を見れば、個々の韓国人の事はいざ知らず、韓国政府及び総体としての韓国民の精神は反日に満ちていることは間違いない。米国は彼らの国益上から日韓同盟力を促進して、北朝鮮の背後にいるロシア・中国の勢力を抑えたいと願っているようだが、わが国は明治以来、両国の陰謀と対峙し、最終的に敗れた経験をもつ。その一つに併合した半島国家が遺伝子的にシナ体制(儒教的上下関係も含めた)に組み込まれていたこともあるのではないか。 半島国家は地域によって差異はあっても新羅以来千数百年も統一国家として続いてきており、現在の政治体制は異なっても、北も南も同質の国であり、ロシア・中国に後れをとっても日本の下位に置かれることは彼らの精神史上のプライドが許さない。 日本は、歴史上もそしてこれからも極東に位置しても華夷秩序の外に在る国として、半島国家との物理的紛争を避け、しかし侵略は毅然として卻ける政治力・軍事力を維持し、原子力を含めた世界最先端の技術革新を常に進め、一流の産業・文化・民度を維持した孤高の道をゆくべきである。
投稿: 齋藤 仁 | 2016年1月 8日 (金) 08時15分