石坂浩二・鑑定団・軍艦旗…!!!
519回目のブログです。
“木の葉なき 空しき枝に 年暮れて また芽ぐむべき 春ぞ近づく”
京極為兼(鎌倉後期・公卿/歌人)
木の葉が落ちつくし何もない枝に、一年が過ぎ去って、また新しい芽が息吹くであろう春が近づいて来ている…。
つい先日は全国的に厳しい気候であり、そうであればこそ、この冬の裸木を眺めつつ、新芽の息吹を願うこころは誰にでも宿っているのではないでしょうか。そのなかでも、去る年に、失意のどん底に落ちたり、歓迎すべからざるできごとに遭遇したりした人にとって「一陽来復」を待ち望む気持ちは特に強いのではないかと思われます。
それはともかく、暖かな春が早く来てほしいものです。その春も、単なる季節だけではなく、わが人生に若々しく充実した喜びと恵みを与えるものであって欲しいと思うのは欲が深すぎるでしょうか。
さて、今回のタイトルは、石坂浩二・鑑定団・軍艦旗という、何か「三題噺」(さんだいばなし・落語の形態)めいていますが、そんなに高級なものではなく、それぞれが深く関連する話として取り上げました。
石坂浩二氏は、俳優・タレント・司会者・ナレーターとして有名ですが、その他、画家・作家・翻訳家・作詞家としても腕を奮っており、その多彩な才能には目も眩むほどです。
映画では「金田一耕助シリーズ」「ビルマの竪琴」、テレビドラマでは「天と地と」「元禄繚乱」、バラエティ番組では「世界ウルルン滞在記」「開運!なんでも鑑定団」など、注目を集める作品ばかりでその数も半端ではありません。
『開運!なんでも鑑定団』は平成6年(1994)からテレビ東京系列で放映されている人気長寿番組。司会者は二人、その内の一人は島田伸助→今田耕司さんのいわゆる芸人、もう一人がスタートから今日まで続けている石坂浩二さん。
番組は、一般視聴者がお宝だと思っている品物を、その道の専門家が本物か偽物かを鑑定し、値段付けを行うものです。高価だと思っていたものが二束三文の値がついたり、埋もれていた芸術作品が発見されたりして、毎回ドキドキ、なかなか面白い番組であり、わたしも楽しく見ています。
司会者が芸人と石坂浩二氏の二人ですから絶妙のバランスと言えるでしょう。芸人はついつい、金・金・金を口にしますので、それだけでは下品に成り下がります。そこで、教養もあり、品性もあり、絵画では二科展に入賞したほど芸術に明るい“石坂浩二さん”を配置し、バランスを取ることである種の教養番組ともなっているのです。
ところが1月30日、テレビ東京は、4月の番組改編にともない、長寿番組「開運!なんでも鑑定団」で22年間司会を務めてきている石坂浩二さんが降板すると発表しました。
この2年間、番組内での石坂浩二さんの発言はほとんど編集カットされ、異様な画面となっていたことについて、わたしは何かあるなと思っていましたが、ウワサでは、チーフプロデューサーの「いじめ」だそうです。テレビなどのマスコミ業界は、いじめなどの社会の悪に関して上から目線で説教を垂れますが、この業界自体が陰湿極まりない環境にあることは知る人ぞ知るですから、さもありなんと思うところです。それにしても、石坂さんが降板するのは真に残念と言わねばなりません。
石坂浩二氏には、かなり前、氏の事務所でお会いしたことがあります。長時間にわたりなかなか丁寧な応対をしていただきましたが、豊かな教養と穏やかな話しぶりのなかに強い意志を持っておられる素晴らしい人柄との印象を受けました。
ここで、石坂浩二さんにまつわる感動のエピソードを書きましょう。
(戦艦長門)
今から10年前「開運!なんでも鑑定団」にアメリカ海軍艦長の娘さんが『戦艦長門の軍艦旗』を出品しました。それまではインターネット上でオークション的に出てはいたのですが、最低価格がかなり高く落札に至らなかったのです。
「長門」軍艦旗の鑑定結果は1000万円。以前の提示価格よりもあまりにも低かったのですが、ご本人は納得。移植のドナーが見つかったのでその手術費用にあてるため、この価格でいいとのこと。
そこで、石坂浩二さんは「私が買って呉に寄付した方がいいね」と番組で発言し、それを実行したのです。さらに「かつて世界有数といわれた戦艦、その象徴ともいえる軍艦旗を通して一般市民が助かったとすれば、それは作られ冥利に尽きるというものではないでしょうか」と述べています。
石坂浩二さんは戦艦「長門」の軍艦旗を評価額の1000万円で自費購入し、広島県の呉市にある「呉市海事歴史科学館」(愛称:大和ミュージアム)に寄贈しました。このようなことはなかなかできることではありません。石坂さんの誠実な素晴らしき行為に敬意を表したいと思います。
(戦艦長門 軍艦旗)
わたしは、10年前、呉・江田島への小旅行をした時「呉市海事歴史科学館」(愛称:大和ミュージアム)を訪ねたことがあります(ブログ66回目「凛冽の気風!江田島」を参照ください)。大和ミュージアムには、明治以降の日本の近代化の歴史そのものである呉の歴史と、その近代化の礎となった造船を始めとした各種の科学技術が紹介。館内には、10分の1大の戦艦「大和」や零式艦上戦闘機・人間魚雷「回天」・特殊潜航艇「海龍」・戦艦「陸奥」の主砲身・潜水調査船「しんかい」などの実物も展示されています。
もちろんのこと、石坂浩二さん寄贈の、戦艦「長門」の『軍艦旗』は常設展示、『少将旗』『先任旗』は催事展示のようです。
(軍艦旗)
(少将旗)
(先任旗)
あらためて、石坂浩二さんの国を思う精神と義侠に富む行為に対して、心より敬意を表します。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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