もう一人の「命のビザ」…樋口季一郎!
520回目のブログです。
“冬ごもり こらへこらへて 一時に 花咲きみてる 春はくるらし”
野村望東尼(のむらもとに・幕末勤皇家/歌人)
冬の間は引き籠っていて、厳しい寒さをひたすらじっとこらえていると、一斉に花が咲き満ちる春が来るものらしい…。
立春を過ぎたとはいえ、まだまだ寒い日が続きますが、この和歌にあるように、一気に花が咲き満ちる真の春を待ちたいものです。幕末勤皇の志士(高杉晋作・西郷隆盛・平野國臣など)の活躍を陰で支えた野村望東尼は、人生も同じと見て、維新の春の到来を確信していたのかも知れません。
先日、昨年12月に公開されたもので遅きに失したのですが、映画『杉原千畝 スギハラチウネ』を鑑賞しました。
第2次世界大戦時、ナチスに迫害されたユダヤ難民に対し、日本政府の命令に背いて日本通過のビザを発給し救いの手を差し伸べ、6000人の命を救った「日本のシンドラー」と呼ばれたリトアニア駐在外交官・杉原千畝の半生を描いたドラマ。唐沢寿明が主人公を、夫人を小雪が演じ、坦々としたストーリーのなかにも緊迫した内面を上手く表現しており、感動の映画でした。
杉原千畝の“命のビザ”については、すでによく知っていましたが、映画で観ると、あらためて感ずるところが多々あります。杉原千畝の精神・日本の心・日本の人種観・戦争・ナチス・独裁・軍人・諜報外交官(インテリジェンス・オフィサー)・組織・知性・勇気・公の感覚・歴史の歪み、などなどです。
すでに映画『海難1890』を観て、日本には過去に素晴らしい人たち(和歌山・串本の人々)がいたことを知り感銘を受けたばかりであり、今回、重ねて、ユダヤ難民を救済する日本人の良心(杉原千畝)を描く映画に感動もひとしおでした。
ところがその直後、ユダヤの難民を救ったのは、杉原千畝だけでなく他にも存在したことを知りました。それは将軍・樋口季一郎です。(雑誌「正論」3月号のノンフィクション作家・早坂隆氏の論稿を参照)
樋口季一郎 杉原千畝
職業 ハルビン特務機関長 リトアニア領事代理
職務 情報将校 インテリジェンス・オフィサー
発行年 昭和13年(1938) 昭和15年(1940)
通称名 「ヒグチ・ビザ」 「スギハラ・ビザ」
種類 満州国滞在ビザ 日本国通過ビザ
最終地 上海 他 上海・イスラエル・米国 他
人数 数千人 6,000人
支援 松岡洋右(満鉄総裁) 根井三郎(ウラジオストック領事)
東條英機(関東軍参謀長) 松岡洋右(外務大臣)
樋口季一郎の名前は、早坂さんの文を読むまでは全く知りませんでした。一方、杉原千畝の名は、近年、書籍、雑誌、テレビ、映画などによりかなりの人が知っていると思います。ところで、樋口と杉原、なぜ、樋口季一郎の名前だけ広く知れ渡っていないのか疑問があります。
また、よくよく考えてみれば、杉原千畝の英断によって発行されたビザがあっても、ウラジオストック領事・根井三郎の計らいや、外務大臣・松岡洋右の支援がなければ、このユダヤの難民はシベリアの地で最期を遂げたかも知れません。それにもかかわらず、映画「杉原千畝
スギハラチウネ」で、根井三郎は描かれていても、松岡洋右は描かれていないのです。
これらから推測するに、いわゆるA級戦犯(松岡洋右・東条英機)は悪の権化、旧陸軍は悪逆非道、美徳や正義はあるはずもなく、たとえあったとしてもそれを口にしたり、筆にしたりすることがタブーとなっているのではないでしょうか。それは、わたし達国民が、戦後教育と戦後風潮によって、東京裁判(極東国際軍事裁判)が100%正義の裁判だと刷り込まされ、その幻影を未だに抱き続けていることを示しています。
しかしながら、上の表から、いわゆるA級戦犯であれ、陸軍軍人であれ、人道上配慮した決断をしていることが明瞭に見て取れます。日・独・伊の間には三国同盟が結ばれており、ドイツからはユダヤ人を保護するなとの強い要求が再三にわたってあったのですが、日本サイドは、断固としてその要求を跳ね除けました。
わが国は、第一次世界大戦後のパリ講和会議において「人種差別の撤廃」を提案したのですが、米国の強烈な反対で否決されました。国際会議において人種差別撤廃を明確に主張した国は日本が世界で最初であり、わが国はもともと人種差別には厳しく反対する立場をとって来ていたのです。
「私は、独・伊と同盟は結んだが、
ユダヤ人を殺す約束まではしていない」
松岡洋右(外務大臣)
過去の歴史に接するには、素直なこころで対応することが大切であり、偏見や、イデオロギー、ましてや、人間性を欠く姿勢でもっての対処は取るべきではありません。A級戦犯は極悪非道、陸軍は全て悪、というような考えは戦勝国のプロパガンダ謀略によるものだということは、上の表をちょっと見ただけでも分かることではないでしょうか。
今の時代は“真実”に最高の価値を置かねばなりません。嘘はあってはならないこと、たとえば、朝日のような捏造は論外というべきでしょう。
しかし、たった今、人道上に基づいた樋口季一郎や杉原千畝の「命のビザ」によるユダヤ難民救出の事実が、中国(中華人民共和国)の策略によって葬りされようとしているのです。
中国は、上海ユダヤ難民を保護したのは中国だと言い、上海ユダヤ難民記念館の「日本のシンドラー・杉原千畝」コーナーを撤去、かわりに「日本人のユダヤ人難民への虐殺」コーナーを設置、歪曲捏造の展示となっているそうです。
とんでもないこと!
中華人民共和国(中国)に「人道上の行為」があるでしょうか。ウイグル弾圧、チベット圧殺、天安門虐殺、言論人弾圧収監、何を見てもそんな崇高な行為なんて爪の垢ほどもありません。
中国…戦争は本気。(アメリカは今ごろやっと気づきました) 対アメリカには100年戦争(マイケル・ピルズベリー『China 2049』日経BP社、原題「The Hundred-Year Marathon: China's Secret Strategy to Replace
America As the Global Superpower」)を構え、幅広い諜報工作員を配置し、三戦(世論戦・心理戦・法律戦)、歴史戦、外交戦を仕掛け、予定よりも早いアメリカへの勝利、すなわち世界覇権の掌握を確信しているようです。
わが国には『歴史戦』と『外交戦』が強烈に仕掛けられています。歴史の捏造によって日本に勝利を収め、究極的にはチベットやウイグルのように支配しようとしているのは間違いありません。日本人の杉原千畝や樋口季一郎の崇高な行為も、中国の世界に誇る人道主義へと捻じ曲げ、ユネスコに記憶遺産として登録しようとしているのです。まさに南京事件と同じやり口。
わが国は、例によって、問題が結果として起きて初めて騒ぎだしますが、その時ではすでに遅く、勝負あり、わが日本国の惨めな敗北となるは必定。中国は嘘であろうが何であろうが、どんな手を使っても、勝てばいいとの考え。要するに、これを戦略、戦争として認識しているからです。
それに対抗するには、徹底した情宣、広報以外にありません。わが国外務省が、まったくの力不足により充実した世界広報をなし得ないのであれば、即刻、その職能を独立させ、内閣官房他に移管し『強い広報』にしなければ「日本が危ない!」と考えます。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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コメント
まったく知りませんでした。
おっしゃ通り、松岡、樋口という人たちの行為も
「公平に」評価してこそ歴史家であると思います。
このような掘り起しは貴重な作業、このブログの意義があると思います。
投稿: 鎌倉 | 2016年2月13日 (土) 14時55分