“アベノミクス3本の矢”を推進せよ!
523回目のブログです。
まず計画はよく行き届いた適切なものであることが第一
これが確認できたら断固として実行する
ちょっとした嫌気のために、実行の決意を投げ捨ててはならない
(シェイクスピア)
小ブログ『ビジネスマン育成塾』が丸10年を迎えました。第1回目が平成18年(2006)3月3日、思えば永い年月、毎週1回で年間52~53回、今回で523回目、われながらよく続けたものと感心しています。
これも、あまり肩肘を張らず、ブログ(Weblog/ web上の記録)らしく、適当に文字を並べ、時折写真を入れたりしたことも一因でしょうが、何と言っても、読者の方々の暖かい励ましのお陰だと思っています。
十年ひとむかし(Ten years makes an epoch.)、世の中の移り変わりは激しく、政治も経済も技術も、そして社会も人の心も、10年前とは大きく姿を変えてきたにもかかわらず、みなさまには変わらぬおつき合いをいただき、心よりお礼申し上げます。今後もできる範囲で続けて行きたいと考えていますので、よろしくお願いします。
さて、今年は参議院議員選挙があり、安倍政権の現時点での評価が下されることになります。その安倍政権の中心となるのがいわゆる「アベノミクス」という経済政策ですから、この政策の成果と問題点を考えてみたいと思います。
マスコミでは、アベノミクス(「安倍」と「エコノミクス」を合わせた造語)はどちらかと言えば評判は悪く、アホノミクスとか、メッキが剥げたとか、安倍氏の思想が嫌いだから経済政策も嫌い、など感情的なレッテル貼りが目立ちます。しかしながら、アベノミクスは重要な経済政策ですから、冷静に見ていかねばなりません。
【アベノミクス・3本の矢】
①「大胆な金融政策(金融緩和)」=お金を増やす
②「機動的な財政政策(財政出動)」=公共事業にお金を投入
③「民間投資を喚起する成長戦略」=経済を発展させる
アベノミクスの目標は、失われた20年の経済不活発、デフレ、円高を解消し、微かなインフレ、円安を軸に、財政政策や構造改革を伴う成長政策などの総合対策によって、日本経済を活性化しようとするものでした。
少なくとも、日銀・黒田総裁は、①の大胆な金融政策を実行し、世界の注目を浴びるとともに、人心を覚醒させ、経済に活を入れたことは疑いもありません。特に、株価の上昇は目を見張るものがあります(年初来多少下がってきてはいますが…)。
さらに注目すべきは雇用情勢の大幅改善。平成28年(2016)1月の完全失業率は3.2%、有効求人倍率は1.28倍、という素晴らしい数字です。また、たとえば北海道の新規高卒就職内定率は平成5年(1993)以来の高水準と伝えています(日経1/29)。
高校を出ても、大学を出ても、就職口がないということほど暗い話はありません。ここにきて雇用情勢が大幅に改善されたことは、社会を明るくする材料であり、素直によろこぶべきことだと思います。金融政策によって雇用が改善できるとするのは経済学理論のイロハと言われており、それを実行した勇気を称賛しなければなりません。このことだけでも、アベノミクスの成果を認めるべきではないでしょうか。
アベノミクスの政策について悪しざまに言うエコノミストやマスコミ関係者は多いのですが、彼らに、それではどうしたらいいのかと問えば、それは政権のやることと言い、具体的な政策を提示したことはありません。具体策を提示しないのは批判のための批判と言うべきでしょう。
そうはいっても、②財政出動や③成長戦略は、いわゆる「政治の壁」が堅固なために、有効な政策を実行に移す大胆さと積極さとを欠くことになったと思います。浜田内閣官房参与は、大学の成績になぞらえて、金融政策はA、財政政策はB、成長戦略はE、と述べたことがあります。
たしかに、特に、成長戦略では、構造改革できず、規制緩和は進まず、社会保障改革もできず、スピーディな前進とはなっていません。今までの経済を支えてきたのは、金融政策と一部の民間部門の活性化によるものであり“一本足打法”と呼ばれるものです。
そんななか、昨年9月、安倍政権はアベノミクスが第2ステージに入ったと称し、次のようなキャッチフレーズを発しました。
【アベノミクス・新3本の矢】
・希望を生み出す強い経済 ― GDP600兆円
・夢をつむぐ子育て支援 ― 希望出生率1.8
・安心につながる社会保障 ― 介護離職ゼロ
これは、アベノミクスが思うような成果を出せていないので、キャッチフレーズを替えてみたもの。所詮は看板の書き換えであり、アベノミクスの本質は最初に掲げた①②③であることに自信を持つべきではないでしょうか。
ところで現実の経済環境はどうなっているのでしょうか。平成27年(2015)10~12月のGDPは0.4%減、年率換算▲1.4%とマイナスに落ち込んでいます。特に消費支出は大幅に下落しています。
消費支出(平成27年10~12月)対前年比
耐 久 財 ▲8.6%
半耐久財 ▲5.1%
非耐久財 ▲0.8%
サービス 0.8%
安倍首相などは、この落ち込みを暖冬によるものとデタラメを言っていますが、需要の減少は『実質賃金の減少による購買力の低下』によるものと断言できるでしょう。その原因は、平成26年4月からの消費税アップ(5%→8%)が大きいと言われています。
デフレは総需要の不足によるものであり、その克服のためには、金融政策と財政政策の両方を動員しなければなりません。したがって、こんな景気低迷の状況から一刻も早く脱却するためにも、財政の出動は必至ではないでしょうか。
そして、加えて、来年4月に予定されている消費税アップ(8%→10%)について再検討すべきだと思います。わたしは、今、折角、上手い金融政策を講じている間に、こんな状況をもたらした消費税アップはとりあえず避けるべきだと考えています。
また、日銀預金の一部をマイナス金利にすることに反対の識者が多いのですが、それは金融界の甘えというもの。これを機会に、銀行は単なる経理マンや金貸しではないとの認識のもとに、真の「バンカー」を育成することに注力してはどうでしょうか。
何はともあれ、いわゆるアベノミクスという三本の矢(金融・財政・成長)は、並行的に実行してはじめて大きな果実を得るものであり、今のままでは失速しかねません。
「初心忘るべからず」(世阿弥)。実行すべきは、当初の「アベノミクス3本の矢」の①②③に他なりません。
安倍総理には、シェイクスピアの言葉にあるように「ちょっとした嫌気のために、実行の決意を投げ捨てないように」してもらいたいものです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
| 固定リンク
コメント