“電波停止”と“電波特権”…放送法の精神を考える!
524回目のブログです。
『不思議』 金子みすず
わたしは不思議でたまらない
黒い雲から降る雨が
銀に光ってゐることが
わたしは不思議でたまらない
青いクワの葉食べてゐる
蚕が白くなることが
わたしは不思議でたまらない
たれもいじらぬ夕顔が
一人でパラリと開くのが
わたしは不思議でたまらない
たれに聞いても笑ってて
あたりまへだといふことが
金子みすずの詩は感性の瑞々しさに溢れています。上に掲げた「不思議」という詩を読めば、何と純なこころと素直さをもった稀有な詩人だなと思うとともに、読む人を清純な世界に誘ってくれます。
世の中には「不思議」という現象はあらゆるところで見ることが出来ますが、特に、人間社会においては、清純な場面と、醜悪な場面との二つにはっきりと分かれるようです。次に記すメディア現象は、そのどちらでしょうか。
■ ジャーナリスト6人「電波停止」言及に非難声明
高市総務相が政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局の電波停止に言及した問題で、テレビでキャスターやコメンテーターとして活躍する6人が記者会見し「発言は、憲法や放送法の精神に反している」と非難の声を上げた。会見したのはジャーナリストの青木理、大谷昭宏、田原総一朗、鳥越俊太郎、TBSキャスターの金平茂紀、岸井成格・毎日新聞特別編集委員の6氏。ジャーナリストの田勢康弘氏も呼び掛け人に名を連ねた。
総務相発言は「放送による表現の自由を確保し、放送が健全な民主主義の発達に資することをうたった放送法第1条の精神に著しく反する」と指摘。
岸井氏は「権力をチェックして暴走にブレーキをかけるのが公平公正で、公平公正かどうかを権力の側が判断してはいけない」と述べた。
(2016/2/29毎日新聞一部抜粋)
彼等6人は「わたし達は怒っています」との横断幕を掲げて、高市氏への抗議をアピールするほどですから、懐かしき学生運動の再現のようで、まさしく高揚感(こうようかん/気持ちが高ぶり興奮した感覚)ありありの印象。
小ブログでも、昨年11月「虚偽と偏向」「電波特権」のタイトルで、テレビの問題点として2回にわたって触れました。
【放送法】第4条(番組編集)
①公安及び善良な風俗を害しないこと。
②政治的に公平であること。
③報道は事実をまげないですること。
④意見が対立している問題については、
できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
①この条文をジャーナリスト7人は、単なる「倫理規範」であり、違反をしたからと言って罰則を受けるものではないと主張します。これに対して総務省は「法規範」であると強調、これは民主党政権の時も自民党政権の時も同じスタンスです。
②放送法第4条を見れば、普通の国民であれば、放送法が単なる倫理規範ではなく、まぎれもなく法規範だと判断するでしょう。倫理目標であればわざわざ具体的な法律にすることなどありえないのですから。
国民は、捏造、虚偽、偏向、やらせ、風評被害などが横行する今の放送業界にかなりの不信感を持っていると思います。それにもかかわらず、単に倫理規範に過ぎないとする放送業界の姿勢は、自分だけが天下の正義だとする傲慢さに満ち溢れており、あまりにも勝手すぎるとともに甘えも過ぎるというものです。
放送法に何回も違反すれば電波停止があっても仕方がないのではないでしょうか。
③昨年9月、民放TBS「NEWS23」で司会者の岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)が「メディアとしても安保法案の廃棄に向けて声をあげ続けるべきだ」と扇動し、問題となりました(放送法第4条に明確に違反)。彼は「権力をチェックして暴走にブレーキをかけるのが公平公正だ」とし、公平公正の判断はメディア、すなわち自分(岸井氏)の判断で行うものだと主張。何の謙虚さも持ち合わせない不遜そのものと言わねばなりません。
④そもそも、憲法には言論の自由がうたわれています。それにもかかわらず、言論の自由を守るために、なぜ「放送法」があるのでしょうか。他のメディアには「雑誌法」とか「新聞法」とかは無いのですから。
それは『電波というものは“限りある”国の財産』だからです。したがって、特定の政治勢力や一方的な主張に偏らないよう制約をかけ、歯止めをかけることで『公共性』を持たせようとするものに他なりません。
⑤そのために、電波利用料を超極安に設定してあります。
東京キー局を見てみましょう(平成25年度・単位億円)
(電波利用料) (売上高) (原価率%)
NHK 18.8 7,362 0.26
日本テレビ 4.3 3,264 0.13
TBSテレビ 4.2 3,524 0.12
フジテレビ 4.0 6,320 0.06
テレビ朝日 4.1 2,538 0.16
テレビ東京 3.9 1,154 0.34
(計) (39.3)(24,162) (0.16)
NHKを含め上記東京キー局6社あわせて、電波使用料がわずか39億3000万円という超安価。スズメの涙ほど。普通ならば1000億円あってもおかしくありません。まさに「電波利権」「電波特権」と言わざるを得ません。
⑥自らは、役所に守ってくれる利権・特権にぶら下がり、甘い汁を吸いながら、自分勝手な主張をしても放送法には縛られたくないという甘えと、自分らだけが善であり絶対だという傲岸不遜の精神が今回のアピールに出たものでしょう。
⑦高市総務相の放送法による電波停止発言にたいして、テレビによくでる池上彰氏が朝日新聞紙上で「まるで中国政府のようだ」と厳しく批判しました。しかし、中国には言論の自由はなく、日本には言論の自由があるという点で、池上氏の指摘は完全に間違っているか、ためにする発言です。(中国では政府批判は監獄に収容されますが、わが国ではそんなことは全くないのですから)
⑧あわせて、アピールをしたメンバーの顔を見てください。ジャーナリストの青木理、大谷昭宏、田原総一朗、鳥越俊太郎、田勢康弘、TBSキャスターの金平茂紀、岸井成格・毎日新聞特別編集委員氏。この人たちの立ち位置はすべてサヨクリベラルですから、今回の主張も党派性にもとづくものなのでしょう。
いわゆるジャーナリストに申し上げたい。自らは特権を得ていながら、抑圧された犠牲者のような振舞をすべきではないと思っています。今回の件でも、言論の自由が侵されているわけでもないのですから、強い意志と勇気をもって、堂々と自らの主張をしたらよいのではありませんか。
しかし、その主張は事実を踏まえたものであるべきであり、たとえそれが、新聞や雑誌であっても、捏造と虚偽だけは許されるものではありません。そして、テレビではそれに加えて「公平公正」でなければならないことをくれぐれもお忘れなく!
「不思議」の世界を覗いてみましたが、残念ながら、今回の7賢人によるアピールは「醜悪な」人間舞台だと思わざるを得ませんでした…。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回も
時事エッセー
です
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コメント
今回も筆者の見識に感嘆いたします。視点の鋭さには、いつもはっとさせられます。
そういえば、新聞業界は消費税値上げに際して
「対象から外すべきだ」と言ってました。
公共性がその根拠ですが、特定の業界だけを優遇するのはおかしなことだと感じた次第です。
投稿: kamakura | 2016年3月11日 (金) 08時50分
今回も筆者の見識に感嘆いたします。視点の鋭さには、いつもはっとさせられます。
そういえば、新聞業界は消費税値上げに際して
「対象から外すべきだ」と言ってました。
公共性がその根拠ですが、特定の業界だけを優遇するのはおかしなことだと感じた次第です。
投稿: kamakura | 2016年3月11日 (金) 08時49分
戦後一貫して、特定のマスコミ(NHK・朝日新聞・共同通信を基軸とする大手メディア)が信ずる勝手な思想・思考を国民に垂れ流し続けてきた。新思想洗脳の前衛の自負をもつ彼らがのたまう「これが正義」を信ずる国民は救われる、というわけだ。だが戦後の国際環境を見ても国内の政治社会を振り返っても、彼らの主張の大半が間違っていたことは事実が実証してきた。彼らが主張するように、真に日本が自由の国でありたいなら、先ず彼ら自身が、国民の木鐸でも前衛でもないこと、一人の凡愚に過ぎないことを自覚すべきである。洗脳が利いた戦後昭和の時代は踊らされた国民も少なくなかったが、平成の若者は、旧時代のイデオロギーに凝り固まった狂信者についていかないし、彼らの教条的な言葉も理解できない。昨年来の安保法制騒動では、上述した特定のマスコミとその徒党が盛んに反対動員をしかけたが、デモ参加者の大半は退職した六十歳代、すなわち嘗ての安保闘争の参加者とシンパであり、ソ連・中共・北朝鮮礼賛組であったことがそれを証明しているではないか。国民は、自由社会の名のもとに特定の思想のみを報道する権利を許した覚えはない。それは社内報や法人内の好き者同士でヤリ合っていればいい。新聞は購買の自由があるが、公共放送はスイッチ一つで全国民に垂れ流しとなるものであり、賛否両論を公平に報じて初めて「公共放送」に値するのは当然である。
投稿: 齋藤 仁 | 2016年3月11日 (金) 08時25分