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2016年11月 4日 (金)

「電車内で化粧」…みっともない! or ? 

 558回目のブログです

 

 “秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ”
 
                藤原顕輔
(平安後期・新古今和歌集)

 

 秋風に吹かれてたなびいている雲の切れ間から、漏れ射してくる月の光の、なんとくっきり澄み切って美しいことだろう…。

 

 百人一首にも選ばれている秋の名歌。声に出して詠めば、リズミカルな調べに乗り、秋の情緒の愈々の深まりを感じさせてくれます。

 

 秋に入っても、夏のような暑さを感じる日もありましたが、気象予報によれば、これからは急に厳しい寒さを迎えるようです。気温だけが寒くなるのであればいいのですが、世の中の落ち着きもなかなか見られず、人心も何か寒々とした方向になびいていくように思えてなりません。こういう時は、こころを穏やかにし、静かに思いを廻らすことも必要ではないでしょうか。

 

 東急マナー向上広告 ネットで論争

 

  「都会の女はみんなキレイだ。でも時々、みっともないんだ。電車内で化粧をする女性。その姿を批判的に描いた東急電鉄のマナー向上広告の動画が、ネット上で波紋を呼んでいる。「恥ずかしいことだ」と動画に賛同する人がいる一方で、「何がいけないの?」と反発する声も。「みっともなさ」の感覚や公共の場での振る舞いを巡って論争が起きている。
           
2016/10/31産経新聞一部抜粋)

 

 東急電鉄のマナー向上広告で、電車内での化粧はみっともないと指摘されたことで、ネットで反発の声が出ました。「化粧して何が悪い」「弁当食べるのがOKなら化粧するのもOKでは」「化粧してはいけないと誰が決めたの?」「年配者の大声の方が迷惑」「スマホ、新聞、雑誌、本、これらはどうなの?」…。また、これに反論する意見が続出し、大論争となっています。わたしもブログを書きますのでネットにも大いに目を通しますが、これはなかなか興味深いテーマだと思っています。

 

 ネット上における意見としては、明らかに否の声が多いのですが、社内で化粧する女性は、内心は多少の後ろめたさを感じていたのでしょう、やんわりとした「みっともない」という言葉で、図星を指摘されたので、かあっーといきり立ったのではないでしょうか。

 

 それにしても、東急電鉄は粋な広告をするものですね。東急は「いい街 いい電車 プロジェクト」を立ち上げ、マナー向上×ドラマ『わたしの東急線通学日記』でマナー向上の呼び掛けをスタートしています。掲示は、ポスター・車内液晶モニター・WEBムービー。
  【マナー啓発テーマ】
 
    ・「歩きスマホは危険」
 
    ・「社内化粧」
 
    ・「整列乗車」
 
    ・「社内混雑時での荷物の持ち方」
 
    ・(その他4種を予定)

 

 東急は、平成27(2015)「沿線のスポーツチームとマナー向上」として、整列乗車・座席の座り方、社内での飲食・化粧、ホームの歩き方、駆け込み乗車、無理に押さない、混雑時・手荷物は上へ、日本のマナーアピール、マナーをつなごう、をテーマに、野球・ラグビー・サッカーなどのスポーツチームの協力でマナーポスターを作成掲示しました。

 

 この昨年のポスターに引き続いて、今年はマナー向上ドラマ。嫌みのない洗練された広告、大したものだと感心しています。こんな動きが全国の鉄道に広がっていくことを望みたいものです。

 

 電車内での迷惑行為にはどのようなものがランキングされているのでしょうか。

 

  【車内マナーで迷惑に感じる行動】
     1位 歩きスマホ
 
    2位 車内での通話
 
    3位 荷物での座席の占有
 
    4位 車内での化粧
 
    5位 車内での飲食
 
    6位 大声での会話
 
    7位 ヘッドホンの音漏れ
 
    8位 優先座席の使い方
 
    9位 床への座り込み
 
      (大阪市地下鉄・平成26<2014>11月調査)

 

 良くない行為としては、上から「暴力行為」「迷惑行為」「マナー違反」「みっともない・恥ずかしい行為」と段階的にいろいろあります。車内での化粧が迷惑行動の4位という上位にあることを考えれば、車内での化粧を“みっともない”と表現した東急電鉄は、かなり穏やかな言葉に置きかえたと言えなくもありません。

 

 それでは、車内での化粧について考えてみたいと思います。

 

 わたしは、若い女性が、車内で、パフ、マスカラ、口紅、頬紅、アイライン、眉毛描きなどを、鏡のなかで没頭する姿をよく見ますが、違和感を覚えるとともに、何となく品がないように感じてしまうのです。

 

 こんなことを言えば、女性からいきり立った声を聞かされるかもしれませんが、どうして家で、密かにお化粧をしないのでしょうか。

 

 能楽で有名な世阿彌(ぜあみ)は、舞台での感動が花であり、珍しさであり、面白さであると言っており、その根本は意外性であり、その舞台裏を見せれば、感動は半減すると述べています。

 

    “秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず”
          世阿彌(
室町時代・能楽師・『風姿花伝』)

 

 ・非常に含蓄のある言葉だと思います。「秘すれば花」いかがでしょうか。ほんとうに美しくありたいと望むのであるならば、お化粧は密かに“家という舞台裏”で行ってほしいものですね。

 

 ところで、こういった現象は一部の若い女性に限られたものではありません。たとえば、わが国最古の伝統であり、わが国柄の至宝ともいうべき「皇室」をテーマにしたことでも、左右を問わず、多くのメディア、識者、政治家、は“声高で下品な”言動をまき散らしています。

 

 また、今の時代、何でもOPENが正しく善いこととする騒々しいポピュリズム的言論が横行し、皇室のことについても開かれた皇室をという主張もよく耳にします。

 

 しかしながら、このようなわが国の将来にとって極めて重大なことに関しては、それこそ“秘すれば花”の精神で、静謐(せいひつ・静かで落ち着いていること)に真摯に語っていただき、最終的には、温厚誠実なその道の碩学、京都産業大学名誉教授の所功先生のような方にお任せするのが一番良いのではないかと思っています。

 

 車内での化粧の是非などを、世阿彌の“秘すれば花”を切り口に論じました。

 

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

 

次回も
時事エッセー
です

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