「保育園落ちた日本死ね!!!」…流行語大賞 !or?
564回目のブログです
“かよふべき 心ならねば 言の葉を さぞともわかで 人や聞くらむ”
兼好法師(鎌倉末期~南北朝)
わたしの気持ちを分かってもらいたいと思っても、通じる相手ではないので、あなたはわたしの言葉をそうだと理解しないで聞いておられるのでしょう…。
いかに心を込めて語った言葉でも、なかなか相手に通じず、理解されない人生を嘆く吉田兼好(兼好法師)の和歌はしみじみとした人の世の辛さを描き出しています。
吉田兼好は随筆の名手で『徒然草』は特に有名。清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』と合わせて日本三大随筆の一つと評価されています。
話しは少し横道にそれますが、今、インターネット上では「日本語」で書かれたブログが最も多いと言われています。英語や中国語ではなく日本語ですから嬉しい話ですが、どうして日本人はものを書くのが好きなのでしょうか。それは、わが国では1000年以上も前から、枕草子や徒然草などの古典とも言うべき随筆が書かれていた歴史があり、その書き手も男女を問わず、ということに由来していると考えられます。
さて、平成28年(2016)12月1日「現代用語の基礎知識」選の2016ユーキャン新語・流行語大賞トップ10が発表され、表彰式が行われました。トップ10は、「神ってる」「ゲス不倫」「聖地巡礼」「トランプ現象」「PPAP」「保育園落ちた日本死ね」「(僕の)アモーレ」「ポケモンGO」「マイナス金利」「盛り土」。
この中で『保育園落ちた日本死ね』という言葉が流行語に選ばれたことがネット上では物議をかましています。
保育園の申し込みではねられた母親(30代前半・息子1歳)が「保育園落ちた日本死ね!!!」というタイトルでネット上に怒りをぶちまけたのです。激烈な怒りと汚い言葉に満ち溢れた文章を一部引用しますのでお読みください。
「なんなんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」
「子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ? 何が少子化だよクソ。子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからって言ってて子供産むやつなんかいねーよ」……(以下略)
いやぁ、凄まじいとはこのことかと思います。「保育園落ちた日本死ね!!!」というキャッチフレーズは、マスコミや野党にたびたび取り上げられ、政府や自治体の保育所問題への非難と批判の飛び道具になったことは周知のことです。汚い言葉だけにある意味でえげつない迫力があったとも言えます。
この授賞式に民進党山尾志桜里議員が出席し「満面の笑み」で受賞したことに加えて、同じ国会議員である前原誠司議員がTwitterで「おめでとうございます」と語ったことが注目されました。
これに対して、タレント・つるの剛士さん(5人の子持ち)は「『保育園落ちた日本死ね』が流行語。。しかもこんな汚い言葉に国会議員が満面の笑みで登壇、授与って。なんだか日本人としても親としても僕はとても悲しい気持ちになりました。きっともっと選ばれるべき言葉や、神ってる流行あったよね。。皆さんは如何ですか?」と疑問を呈しています。
はたして、山尾議員の行動とつるのさんの感覚とどちらが国民の感情に沿っているのでしょうか。考えてみたいと思います。
・保育所問題は政治課題であることは疑いのないことです。対策がなかなか思うようにすゝんでいないのも事実でしょう。しかし、そのことが「日本死ね」と言う言葉に直結していくのは大いに問題があります。
・今、マスコミや学校教育などでは権利と義務のうち、権利を最重要視しているように思えてなりません。人気ドラマ「Doctor-Ⅹ」流に表現すれば“2016年、権利と義務の相互関係は崩壊し、今や、権利意識の高騰はとどまることを知らず、社会は迷走を極めていった”
と言えるのではないでしょうか。
・天下の暴論ではありますが、何でもかんでもすべて「国」「政府」から与えられるべきという主張は問題であり、その地に保育所が無ければ、家を移ることも検討すべきではないでしょうか。『孟母三遷』(子供は周囲の影響を受けやすいので、子供の教育には環境を選ぶことが大切であるという教え)という言葉もあります。あくまでも暴論ですが…。
・国会議員ともあろう人は、燃えるが如き情熱を心に秘め、広汎な見識を持ち、国を愛し、国民の心をくみとる政策の実現に邁進して欲しいと希みますが、少なくとも「日本死ね!」という言葉は絶対に口の端にのぼらせるべきではありません。
・「日本を活かそう!」「日本を良くしよう!」「日本に栄光を!」などのフレーズを掲げるべきではないでしょうか。
・選考委員のなかに歌人で著名な俵万智さんがいることに驚きを隠せません。歌人は言葉を紡ぐことにかけては細心の注意を払うはずであり、よもや「日本死ね」というような無機質でアナーキーな言葉を選ぶとは、わたしも愛読した歌集『サラダ記念日』が泣こうというものです。
・誰がどう考えても「日本死ね!」は言葉が汚すぎ、品性を疑われます。汚い言葉を使えば汚い精神が宿るとも言われています。国民の範となるべき選良(選び出された立派な人物・代議士のこと)が使う言葉では断じてありません。その意味で、民進党山尾女史は受賞を辞退すべきでした。
・このことを古典に学び、吉田兼好の『徒然草』から一部を引用しましょう。
『狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり。
悪人の真似とて人を殺さば、悪人なり。』
(狂人の真似をして大通りを走れば、それは狂人そのものだ。
悪人の真似と言って人を殺せば、悪人になる。)
・吉田兼好の含蓄のある言葉は、さすがにわが国が誇る古典だと感銘するばかりです。感銘ばかりでは能がありませんので、兼好法師にならって文章をつくってみました。
“テロリストとの真似とて「日本死ね」と叫ばば、
即ちテロリストなり”
・山尾議員も前原議員もテロや殺人を容認しているとは思えないのですが、言動に大きな欠点を抱えていると思います。欧米でも、日本でも、政治家にとって言葉は命のはずです。軽々な言動は慎むべきではないでしょうか。
ところで、いままではタレントはタレントだなと思っていましたが、つるの剛士さんのような、国会議員以上の良識と常識を備えた立派な人物が存在していることに目を開かせられました。
近年、残念なことながら、汚い言葉が乱発されるようになって来ていますが、わたし達は、吉田兼好に学び、そのような言葉を安易に使わないよう心掛けたいものです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
もし私の記憶が正しければ「流行語大賞」を主宰しているのは「現代用語の基礎知識」を出版している会社で、左翼系の本を多数出しており、選考委員もそちら系の人で固められていたと思います。俵万智も政治的には市民派系の発言が多かったと思います。一出版社の売らんかなのイベントに何でもいいから話題が欲しいマスコミが乗っかって恰も全国民から選ばれたような形を作っている。多くの国民が知らないのにマスコミだけが大騒ぎした「シールズ」をもてはやしたのと同様に、マスコミ捏造の典型で、まさに大衆民主主義に名を借りたマスコミによる大衆操作でしかない。TV,新聞等、マスコミ機関は数多くあるのに、それを指摘する記者もコメンテーターもいない。マスコミ人のポピュリズムが政治を低次元化して毛沢東やヒトラーのような全体主義指導者を生み出す。
投稿: 齋藤仁 | 2016年12月16日 (金) 15時03分