ふわふわ言葉と具体的ビジョン…狂騒の政局に思う!
606回目のブログです
“をちこちに わかれすみても 國を思ふ
人のこころぞ ひとつなりける
(明治天皇御製・明治43年)
あちこちに別々に住んでいても、国を思う人の心はひとつである…。
今、狂騒状態を演じている政局の真っただ中にいる政治家に心で読んでほしい明治天皇の御製です。毎日報道される政治ニュースは、国内政局が圧倒的に多く、それも、政党の離合集散、利害得失ばかりが強調されていますが、どの政党であっても、どの立場であっても、少なくとも「国を思う」心だけはひとつであってほしいとねがうものです。
今回の衆議院議員選挙は10月10日に公示、10月22日に投票、議席の数は10減り465議席、過半数は233議席となっています。
現在は野党であっても、かつては政権を担ったほどの大政党である「民進党」が異様な分裂劇を演じ、以下の4つに分解することになりました。①保守政党である希望の党へ合流、②立憲民主党を結成しリベラルサヨク政党として、③無所属として立候補、④民進党(参議院議員のみ)のまま。
マスコミで報じられる政党の離合集散は、日替わりどころか朝・昼・晩でころころ変わっており、多少白け気味ですが、ことは政治家の身分を決めることであり、当事者にとっては生死に準ずるものとして、まずは生きること、すなわち「当選」することが「大義」なんだなと思う次第です。
今回の台風の目は、小池都知事が率いる「希望の党」であり、小池都知事(党代表)の一挙手一投足にすべてのメディア、国民の関心が寄せられています。
小池代表の発言を見てみましょう。「希望の党」結党時に示した政策理念は、希望の政治・希望の社会・希望の経済・希望を守る環境・憲法改正という「希望」をキーワードにしたものであり、しがらみのない政治、ダイバーシティ(多様性)社会の確立、憲法改正・希望あふれる日本の礎などをあげています。
小池代表は、ふわっとした言葉、ソフトな言葉、意味不明な言葉、カタカナ語などを多用したキャッチフレーズで新鮮なイメージを演出することに長けています。経歴もテレビキャスターあがりですから、容易にマスコミを手玉に取っており、さすがに、上手いものだと唸らされます。どのような言葉かあげてみましょう。
・「改革保守」
・「日本をリセットする」
・「しがらみのない政治」
改革保守とはあまりにも意味不明で抽象的すぎます。また「リセット」と「保守」は言葉そのものが矛盾しています。辞書をひもとくと、「リセット」は、すべてを元に戻すこと、最初からやり直すこと、状況を切り替えるためにいったんすべてを断ち切ることとあり、「保守」は、古くからの習慣・制度・考え方などを尊重し急激な改革に反対することとあります。ふたつの言葉は相いれないもの。しがらみのない政治は人格高潔な人にのみ為しうることであり、そんな政治家は八百屋で魚を求める類いと言えるのではないでしょうか。
昨今は、政党や政治家は、すべて「改革」「改革」の言葉を大声でわめきますが、しっかりした政党を目指すのであれば「抽象的なキャッチコピー」ではなく「具体的なビジョン」を示し、具体的な政策を議論してほしいと思います。
小池代表は、過去、①軍事上、外交上、核武装の選択肢は十分ある(平成15年)。②尖閣諸島の実効支配を明確にするため「構築物」を作ることが先決(平成22年)。③永住外国人の地方参政権付与には絶対に反対(ある意思を持った人間たちが移り住み、基地反対など妙な条例でも決議されたらひとたまりもない)(平成22年)。④原発賛成(平成26年)。と明快に発言していますが、今日現在、核武装はブログの記録からは消去し、原発は180度方針を変え反対としています。
それにしても、小池代表の突破力は見事なものがありますね。どのような選挙結果になるかは分かりませんが、憲法観と安保政策に関しては、現在の発言は過去の発言と同一、一切ぶれておらず、保守政治家としては出色であろうと考えています。
次に、自民党の衆議院選公約のポイントを見ていきます。北朝鮮への対応、憲法改正など六つの重点項目を上げていますが、その内の二つに掲げてある言葉をごらんください。
・「生産性革命」を実現し、国民の所得を増やす。
・「人づくり革命」を断行。保育・教育無償化実現。
生産性革命、人づくり革命の両方に“革命”という用語がありますね。自民党は保守政党を任じてきたにもかかわらず、本来忌避すべき「革命」という言葉を安易に使っています。名は体を表す、言は体を表すとも言いますから、もはや、自民党には真の保守的精神が希薄化してきたのでしょう。政治思想における用語の意味することさえ学んでいないとすれば、真に危惧すべきことと言わねばなりません。
「革命」とは、辞書によれば、被支配階級が時の支配階級を倒して政治権力を握り、政治・経済・社会体制を根本的に変革すること、フランス革命・ロシア革命など
とあります。そんな言葉を選ぶこと自体、自民党が志において堕落してきているのではないでしょうか。
今の時代、世界は混沌としてきており、何が生じてもおかしくないと言われます。そうであるならば、わたし達国民のリーダーはひとしく真の教養人として世界の変動に対処してほしいとねがうものです。
論語に「子曰、君子和而不同、小人同而不和」(君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず)という有名な箴言があります。意味は「先生はいわれた、君子は人と調和するが雷同はしない。小人は雷同するが調和はしない」…ある碩学のお話しによれば、論語に言う君子とは真の教養人のことであり、小人は単なる知識人のことだそうです。
とすれば、今回の政党、グループ再編にあたって、君子は和して同ぜずの教養人は誰なのか、小人は同じて和せずの小人は何人いるのかに関心を向けてもいいのではないかと思います。
君子>小人、or 小人>君子、or 君子≒小人、はたして、実態はこのいずれでしょうか。できれば、君子>>>>>小人、であってほしいとは思いますが……。
ところで、最近マスコミで流行っている政治用語に「リベラル」があります。リベラルの語源はLiberal、自由のこと。英和辞典を引くと、①気前のよい、大まかな、もの惜しみしない、けちけちしない、②寛大な、度量の大きい、おうような、開放的な、③たくさんな、豊富な、④字義にとらわれない、自由な、偏見のない
⑤紳士にふさわしい、⑥自由主義の などが記されています。
わが国では、冷戦終焉後に「保守vs革新」における革新の化けの皮が剥がされ、いつの間にか「保守vsリベラル」となり、リベラルの意味を不問のまま、特にサヨクメディアを中心に曖昧に使い続けられてきました。
しかし、実際の自称リベラル政党の行動体質として、上掲の英和辞典の①~⑥までのひとつでもあるでしょうか。「絶対に9条を変えるな!」「安保法制は許さない!」「安倍はゆるさない!」の看板を掲げての政治行動を見れば、それはリベラルの真逆であることが分かります。彼らは、リベラルではなく、左翼なのです。
狂騒の中での議論からは有益な結論は出ないでしょう。色々な立場はあるにしても、空疎な言葉ではなく、実のある言葉を用い、明治天皇の御製にある「国を思ふ」心で真剣な議論をしてほしいと心から願うものです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
貴重なご意見ありがとうございました。今年は大政奉還150年です。来年は明治維新150年を迎えます。幕末の志士たちは新しい国を樹立させるために生命を捧げて活動しました。それまで270年余続いた江戸幕府を終わりにして,近代的な国家へと一歩踏み出した記念すべき年です。明治維新と称して,決して明治革命とは言いませんでした。革命とは,国の命脈の断絶を意味します。ご指摘のように「革命」を安易に使いすぎています。特に政治家と称する人には,注意してもらいたい。
投稿: 安見隆雄 | 2017年10月 6日 (金) 18時20分
こんにちは。毎回ブログを楽しみにしています。
政局報道に偏るTV番組は消していますので視聴していません。「当選」することが「大義」と思う候補者の抽象的なキャッチコピーに踊らされた選挙結果は、選挙民自身の「自己責任」と「自己決定」であり、その選挙結果を受容するしかない、と達観しています。
同時に、選挙権を持たない「次世代」の子供達に、「より安全・安心で豊かな社会」を手渡す責任を強く意識する時、今回の選挙結果は(後世)、「次世代」に問われると考えています。
投稿: 野中志郎 | 2017年10月 6日 (金) 14時46分