「積極的賃上げ」を…企業業績上昇・好機来る!
615回目のブログです
“人の成すことには潮時というものがある。
うまく満ち潮に乗れば成功するが、
その期をのがすと、
一生の航海が不幸厄災ばかりの浅瀬につかまってしまう。”
(シェイクスピア『ジュリアス・シーザー』)
師走に入ってもう1週間が経ち、大晦日(おおみそか)に向けては更に慌ただしい日々であり、あっという間に平成30年を迎えることになりそうです。
こんな時、今年がどんな年だったかを振り返ることも必要でしょう。そのなかで、遅々として進まなかった景気の本格的回復が仄かに見えるようになってきたことに注目してみたいと思います。そのためには、いろいろな経済データを見てみる必要があります。
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利益剰余金、上場企業の56%が最高に
9月末時点
企業が長年積み上げたもうけの累積額である「利益剰余金」(金融機関などを除く)が膨らんでいる。9月末時点で利益剰余金が過去最高を更新した上場企業(金融機関などを除く)は56%に達した。好業績で累積した剰余金を成長投資にまわさず、現預金のまま眠らせる企業も目立つ。
(2017/11/26 日経新聞一部抜粋)
今年上半期の大企業や中堅企業の業績は総じて好調に推移していることは上の日経記事を見てもあきらかです。加えて、先月の小ブログでも触れましたが、失業率と求人倍率のデータもそれを示しています。
【完全失業率】
平成24年(2012)平均 4.3%
平成28年(2016)平均 3.1%
平成29年(2017)8月 2.8%
(総務省統計局・労働力調査結果)
【有効求人倍率】
平成24年(2012)平均 0.80倍
平成28年(2016)平均 1.36倍
平成29年(2017)8月 1.52倍
(厚生労働省・一般職業紹介状況)
今年8月では完全失業率が2.8%ですから、数字上で言えば完全雇用状態であり、有効求人倍率も1.52%であり、完全に人手不足の状態になっていることは論を待ちません。この傾向はたった今生じたことではなく、数年前からジワリジワリと進んできていたと思われます。
そうとすれば、賃金(ちんぎん/本来は「賃銀」と記すべき/金はギンとは読まない)のアップがあって当然ですが、実際の労働分配率と利益剰余金をごらんください。(財務省法人企業統計より)
【労働分配率】
2012(年度) 72.3(%)
2013 69.5
2014 68.8
2015 67.5
【利益剰余金】
2012(年度) 304.5(兆円)
2015 377.9
2016 406.2
しかしながら、日本経団連、経営者は、企業の業績を賃金アップに反映させようとは努めてこなかったのです。それは、リーマンショックのような世界経済不測の事態、業界と自社の将来への不安、および自己の保身への対処のため、常識的な賃金上昇に結びつけることを躊躇、拒否してきたものと言わざるを得ません。
ここにおいて、安倍首相は経済界に対して3%の賃上げを要請しています。労働者・勤労者の給与水準を上げるように努力しているのは、いわゆるリベラルサヨク政党でもなければ、労働組合でもないという奇妙な現象が生じていました。このようなことなどから判断すると自民党は右翼から遠く離れ、まさしくリベラルと言っても差し支えないと考えられます。そして、労働組合は全く存在価値のないものに成り下がっています。
しかし、ここでやっと…。
■ 連合、春闘で賃上げ4%要求 経営側には慎重な声
連合は5日、平成30年春闘の統一要求を決めた。ベースアップ(ベア)幅は「2%程度を基準」とし、定期昇給(定昇)分の2%を加え、合計4%程度の賃上げを目指す。しかし固定費増を避けたい経営側には賃上げに慎重な声が強いうえ、賃上げの意義を疑問視する声さえあり、今後は厳しい交渉が予想される。
(H29/12/6 産経新聞一部抜粋)
4%は高いと思われるかもしれませんが、日銀の消費者物価上昇率2%「物価安定の目標」に合致させようとすれば、この連合が主張するげベースアップ2%+定期昇給2%=4%の賃上げ要求は正当性を有すると考えられます。連合には、今回は、何はおいても粘り強く、4%は死守するつもりで、真摯で誠実な交渉を行ってほしいと願っています。
最近の春闘では安倍晋三首相が経済界に賃上げを求める「官製春闘」が一般化しており、労働組合である連合(日本労働組合総連合会)の存在感は皆無と言っても言い過ぎではありません。したがって、迫力ある交渉が出来るのかどうか、大いなる疑問がありますので、それを払拭すべく踏ん張ってもらいたいものです。
また、連合は、労働組合の本来の目的から離れ、民進党・立憲民主党・希望の党などの政党ゴッコに首を突っ込み、イデオロギーと権力を主軸にしたアホな争いに真っ逆さまであったことは明白であり、そこには極めて大きな問題があります。しかし、やっと労働条件、労働環境への1里塚である賃上げに力を入れようする姿勢が出てきたことに注目したいと思います。
それにしても、連合は政治ゴッコを止めてはどうですか。日本のため、日本経済のため、「支持政党は一切なし」「法案・事案ごとに賛否を意思表示する」「世界経済のなかの日本経済という視点を持つ」「労働組合の本来の目的に帰る」「労働貴族を返上する」…など如何でしょう。
時代の潮流が好ましくなろうとしている時ですから、積極的賃上げを目指すことは間違っておらず、加えて、消費税10%アップを見送るか逆に5%にダウンするかすれば、消費が活発化し、日本経済のダイナミズムが期待できるようになるのではないでしょうか。
それにしても、エコノミストや経済学者には、すべて真面目な予測とおちゃらけでないキャッチフレーズをお願いしたいものです。誠実さのほんの欠片でも見せていただけないと真面目で真摯な先生方に迷惑がかかりますから。
たとえば、浜矩子教授:『2014年 戦後最大級の経済危機がやって来る!』」『「2015年 日本経済景気大失速の年になる!』『2016年 日本経済複合危機襲来の年になる!』「2011年は1ドル50円時代が到来する」「2014年年初、年末の株価予想10,000円以下になる」(⇒実際は17,450円)などの恐怖を煽る言いぐさは、それが全て的外れであるだけにあまりにも酷いと言わざるを得ません。
煽情的なキャッチコピーをつけるならば、その結果について厳しく反省し、爾後、多少は大人しくして欲しいものです。
経済の見通しはそう簡単にいくものではありません。しかし、現在の状況の把握はできます。…そのことを踏まえて、あらためて「積極的賃上げ」をすべきだと考えます。今こそ“三方良し”(売り手良し・買い手良し・世間良し)の精神を見習う時ではないでしょうか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
こんにちは。高橋洋一氏(嘉悦大学)と浜矩子氏との間で最近行われた経済論議は、全く話が噛み合っていませんでした。
問われているのは浜矩子氏のみならず、同時に経済学教授として任用し続ける「大学」の見識の水準でもあるのでしょう。
投稿: 野中志郎 | 2017年12月 8日 (金) 13時10分