« “若い世代”の政治意識を考える!  | トップページ | “民意”とマスコミ…名護市長選をめぐって! »

2018年2月 9日 (金)

“日本の科学技術”…学術水準の低下を防げ!

 624回目のブログです

2018291

“梅が枝に 来ゐる鶯 春かけて 鳴けどもいまだ 雪は降りつつ”
 
               読み人知らず(古今和歌集) 

 梅の咲いた枝に来て止まっている鶯が、春を待ち遠しく思って鳴いているけれども、まだ春らしい様子もなく、相変わらず雪がちらちらと降っているものよ…。

 

 まだまだ寒い日が続いていますが、春の兆しはあちこちに見える様になりました。ちらほらした雪を見おさめ、春を告げる鳥「春告鳥」と言われるの姿を梅の枝に早く見たいものです。

 

 さて、雪のちらちらではないのですが、ネットをちらちらと渉猟(しょうりょう/たくさんの書物や文書を読みあさること)していましたら、大学の理系学部での驚くべき研究実態の記事に目が行きました。

 

  没落する地方国立大の何とも悲惨な台所事情
     個人研究費年50万円未満の教員が6

 

  「僕らぐらいの陣容の研究室だったら最低限の実験機材、試薬代などで年間500万円はないと回らへん」(岡山大/田中教授/免疫細胞研究/学生15人)。だが、大学から定期支給される研究費(運営費交付金に基づく講座費)はたかだか年50万円しかない。科学研究費助成事業に応募したり、民間の科学研究助成財団からかき集めたりするが、十分な資金を安定的に確保するのはなかなか難しい。
       
2018/02/05・東洋経済オンライン・一部抜粋)

 

 吃驚仰天! わたしなどの門外漢としては大学の実態を把握していませんが、民間企業での経験から見ても、年間50万円では実験器具や試料代に事欠くことは明白と言えるでしょう。

 

 教授によれば、年のおわりになる1112月ごろになると、研究資金が底をついて開店休業状態になるラボが続出するとのこと。このような状況になったのは平成16(2004)の国立大学の独立行政法人化が転機になったと考えられます。日本国内では、論文の半分は国立大学の教員によるものであり、これが疲弊していることはある意味でゆゆしき事と言わねばなりません。

 

 そこで、わが国の科学技術研究の実態について科学技術白書などを参考にしながら調べてみました。実に恐るべきことになっていることをご覧ください。

 

 世界的に権威あるイギリスの科学雑誌ネイチャーのNature Index 2017 Japanは、日本の科学研究の実力が急速に低下、失速していることを指摘し警告を発しました。世界のハイレベルな科学雑誌68誌に投稿される論文の数から分析しています。

 

  【日本の論文の数】
    2012年)   (2016)   (ダウン率)
    5,212本  4,779本   ▲8.5%

 

  【日本の論文の割合】
    2012年)   (2016)   (ダウン率)
     9.2%    8.6%    ▲6.5%

 
                    (▲0.6ポイント)

 

 オランダの出版社による世界22,000の科学雑誌の集計

            (2005)(2015年)
 
    世界全体の増加率  80%
 
    日 本  ∥     14%
 
     ※日本が得意としていた「材料工学」「工学」の分野
 
      では10%以上も減少しているとのこと。

 

 ネイチャアーは、日本の科学研究がここ10年で失速し、科学界でのエリートの地位が危うくなっていると指摘。その原因に、ドイツ・中国・韓国などが研究開発への資金投入を増加させているなか、日本は大学への交付金を減少させ、短期雇用の研究者が増えるという研究環境の厳しさを挙げています

 

 世界最大、最高の科学大国アメリカへの留学する学生のなかで、日本は減少し続けていることを知らねばなりません。

 

     平成  9年(1997) 47,000(人)―(1位)
 
     平成17年(2005) 39,000   ―(4位)
 
     平成27年(2015) 19,000   ―(9位)

 

  一方、アメリカへの留学生を急速に増加させているのが中国です。平成21年(2009)に128,000人、平成28年(2016)には何と329,000人、留学生の31.5%を占めていることに注目すべきです。中国は、持ち前のパワーと資金力で、科学技術の分野でも、わが国に猛烈なスピードで肉薄してきているのではないかと思われます。

 

 それでは、こんな厳しい状況に置かれているわが国の科学技術をどのように展開すればいいのかを基本的に考えてみましょう。

 

 教育は国家百年の大計。基礎研究の恩恵にあずかるのは10年~20年の後。国立大学の独立行政法人化は正しかったのか、再検討すべき段階に来ていると思います。文部科学行政のTOPである事務次官は、人格、見識とも優れた人物をおくべきではないでしょうか。あの“面従腹背”を座右の銘とする前川喜平氏のような低劣な人間が次官であったということは、文部官僚の底なしの堕落を示しているものであり、そんな人物を任命した安倍内閣の責任は重く、真の教育に対する本気度は窺えません。

 

 明治時代に最も注力したのが、教育と安全保障(軍事)と殖産興業ですが、現代の日本はその逆を行っています。真の教育には力を注がず、安全保障は忌避し、見ざる・聞かざる・言わざるの3猿状態。これを打破すると共に、科学技術の発展にも寄与するために「軍事研究」を国立大学で行うべきではないでしょうか。ところが日本学術会議は、今年3月24日「軍事的安全保障研究に関する声明」を発し、軍事的安全保障の研究を禁止する方針を継承したのです。

 

  こんなことってありますか。世界の国々は軍事と技術の研究に壁を設けていません。少なくとも国立大学は国の安全保障に関し知識と智慧を提供するのが義務はないでしょうか。そんなことをやらずして、国からお金だけを出して貰おうという精神が問題だと考えます。それにしても、学術会議の怪しげな戦後イデオロギー紛々とした現実無視の感覚にめまいを覚えます。

 

 旧帝大以外の地方国立大学の大学院を全て廃止し、その余剰金を科学技術研究予算に回すなどの抜本的改革を検討してはどうでしょうか。

 

 憲法違反との批判がある私学助成金(平成28年度・3212億円)を廃止し、それを科学技術振興予算に回すことなど、抜本的施策を講ずべきだと考えます。私学サイドは憲法を都合よくつまみぐいすることは止めるべきではないでしょうか。

 

 教授みずからがクラウドファンディング(不特定多数の人がインターネット経由などで他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うこと)を行っている例が増えているようですが、更に積極的な展開を期待したいものです。

 

 その他、色々な考え方、アイデアがあるかと思いますが、わが日本は、科学立国であることを忘れるべきではなく、その発展のためにはあらゆる手段を講じなければならないと思います。

 

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

 

次回は
時事エッセー
です。

|

« “若い世代”の政治意識を考える!  | トップページ | “民意”とマスコミ…名護市長選をめぐって! »

コメント

日本の植民地化を免れるためには、欧米の科学技術とその基礎となる学問知識を全国民に習得させることが明治日本の使命だった。官営事業や義務教育を全国で進めることで産業国家に相応しい人材・労働力が生まれた。だが明治時代の殖産興業を成功させた背景は一般労働者の高い知識や技術だけではない。全国諸藩に息づいていた武士や豪農などの知的エリート層が存在したことが大きい。即ち、健全な社会には必ず健全な生活能力をもった大衆と、彼らに常に新しい道を指し示すことのできるエリート層の存在が必要である。筆者の指摘するように、平成日本の人材は余りに画一化・平均化し過ぎてしまっており、国力を高める推進力をもったエリート層が消えつつ(或いは既に消えて)ある。国策として、全国に旧帝大のような拠点となる研究所や学園を設け、次のエリート層を育成しなければ、我が国は古代ギリシアの用に大衆化・愚民化して最後は・・となるかもしれない。

投稿: 齋藤仁 | 2018年2月 9日 (金) 08時56分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: “日本の科学技術”…学術水準の低下を防げ!:

« “若い世代”の政治意識を考える!  | トップページ | “民意”とマスコミ…名護市長選をめぐって! »