反原発論者の無知…元首相二人の発言に見る!
650回目のブログです
“夕立の 雲もとまらぬ 夏の日の かたぶく山に ひぐらしの声”
式子内親王(平安末期~鎌倉初期・歌人)
夕立を降らせた雲も跡をとどめず、夏の日が沈もうとする西の山に、寂しく鳴くひぐらしの声…。
ひぐらし(蜩・日暮・晩蟬)は、蝉の一種で、甲高い声からカナカナ蝉とも言われ、少し哀調を含んだ美しい声で鳴くセミとして文学に取り上げられてきています。
それにしても、今週も酷暑、熱暑が続いており、小宅の周辺の蝉の合唱も騒々しさが募るばかりで、早く、上掲の和歌の風情になってほしいと、ほそぼそと願っている今日この頃です。
さていよいよ、甲子園において炎天下での高校野球が始まりました。そこで危惧されているのが熱中症。熱中症と言えば、甲子園に限りません。気温も35℃~40℃ともなればどんなところでも熱中症に罹る危険性があるものと警告が出されています。
しかし、ここで忘れてはならないのが「電力」の確保ではないでしょうか。全国的にエアコンがフル活動し電力需要が増大する今夏、既に関西電力は複数の電力他社から融通してもらっており、何とか凌ごうと懸命の努力が重ねられているのです。
政府は、電力についてはエネルギーミックスを基本原則としていますが、これに反発し、即時原子力発電ゼロを主張しているのが、元首相の小泉純一郎氏と菅直人氏です。大物政治家の発言ですから、重みがあり、政治的効果もありますが、ここでは、それが正しいのかどうか、電力全体の中で考えて見たいと思います。
①日本のエネルギーミックス
(平成30年3月26日 資源エネルギー庁)
2010年 2016年 2030年
(震災前) (現在) (将来)
火力全体 64% 83% 56%
LNG 28 40 27
石油 9 9 3
石炭 27 33 26
原子力 26% 2% 22~20%
再エネ 10% 15% 22~24%
バイオマス 3.7~4.6
風力 1.7
太陽光 7.0
水力 8.8~9.2
わが国のエネルギー基本政策は、再エネ強化に偏り過ぎている嫌いはありますが、火力・原子力・再エネのベストミックスで対処しようとすることであり、上掲の数字はバランスが取れていると考えます。
世の中には、原子力や火力を止め、再エネだけで良いと強く主張する人が存在しますが、彼らは、イデオロギーをはずし、科学的基本知識に基づき、長期的に安価に安定供給できるのかということを真剣に検討しているのかどうか、わたしは大いに疑問を持っています。
②原子力発電所の現状(平成30年7月12日現在)
再稼働 9基(稼働中6基・停止中3基)
原子炉設置変更許可済 5基
新規制基準へ適合審査中 12基
適合性審査未申請 12基
(廃炉決定済・見込) 22基
③元首相・小泉純一郎氏は、今や、反原発の闘士であり、宿敵であった共産党や小沢一郎氏らとも手を組み、安倍政権と対峙し、全国行脚をして演説に力を入れています。まず、その発言に耳を傾けてみましょう。
『日本は単純計算で太陽光だけで原発27基分を出しており、原発ゼロでも、自然エネルギーだけで、十分やっていける』
大間違いも大間違い。電力の基礎知識を欠いた発言で唖然とします。それをわかりやすく説明しましょう。
平成26年(2014)の太陽光発電が約2700万(KW)であり、原子力発電を1基約100万(KW)とすれば、単純に計算すれば、確かに27基分となるでしょう。
しかし、それはKW(キロワット)の比較であり、実際に発電するKWH(キロワットアワー)での比較をしなければなりません。
KW(キロワット)=発電能力(性能上・晴天時の瞬間出力)
KWH(キロワットアワー)=稼働率発電量
●計算してみましょう。(24時間×365日=8,760時間)
【原子力発電】
100万(KW)×8,760時間=876,000万(KWh)
稼働率を70%とすれば
876,000万(KWh)×70%=613,200万(KWh)
【太陽光発電】
100万(KW)×8,760時間=876,000万(KWh)
夜間は全く動かず、曇りや雨の時は大幅に低下しますので、
稼働率はわかりやすく太陽が強い昼間として10%とすれば
876,000万(KWh)×10%=87,600万(KWh)
従って【太陽光発電KWh】:【原子力発電KWh】= 1:7
同じKWであっても、KWhでは太陽光は原子力の7分の1。
したがって、小泉氏の数字は大間違いであり、あと7倍の太陽光発電設備が必要となります。こんな中学生でも理解できる基本的な知識を欠いて、仰々しい反原発の論を説いて欲しくはありません。きちっとした科学知識を背景にもっと冷静な議論をされてはいかがでしょうか。
④もう一人の元首相・菅直人氏は、福島原発事故の時の首相ですが、彼は、その時の対応は完璧であり間違いはなかったとの認識を持つとともに、ことあるごとに反原発の発言を繰り返しています。耳を傾けてみましょう。
『前代未聞の猛暑なのに電力不足が生じない理由が太陽光発電にあることをブログに書きました。原発ゼロ基本法は来年の参院選の最大の争点です。連合も国民民主党も電力総連に引っ張られないで原発ゼロ基本法に賛同してほしい。原発ゼロでも雇用は守るという一点で一致できるはずです。』(8/1 Twitter)
まさに、プロパガンダそのもの。菅直人氏は嘘を平気で吐いています。2017年の太陽光発電の割合はわずか5.7%に過ぎません。水力が7.6%、火力が何と81.7%(LNG38.7%・石炭30.4%・石油4.1%・その他火力8.5%)です。
太陽光は現状わずか5.7%です…57%ではありませんよ。もう、滅茶苦茶な議論だと言わざるを得ません。東工大理学部のご出身ですから、太陽光発電に関しては詳細を把握しているはずです。それにもかかわらず、子供だましのような議論を平然と行うのは、要は、上記の発言をプロパガンダ(宣伝・洗脳の道具)として発しているものと思います。元首相ともあろうお方ですから、事実に基づいた真摯なご発言をなされたらいかがでしょうか。
それにしても、事実を認識せず勝手な発言をするお二方は、いわゆる「暴走老人」と言われてもおかしくない存在であり、もう少し誠実なご発言をしてほしいと思います。情けないと思うのはわたしだけではないでしょう。とにかく嘘を言うのは止めるべきです。
何はともあれ、このお二方の発言に愕然とした次第です。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
明治以降はアジアの軍事大国として、戦後は世界の経済大国として日本人のプライドを支え、アジア・アフリカが目標とする国家像を示してきた。即ち、日本国民は「極東の小さな島国」と言いながら、既に何世代にもわたって「大国の国民」としてその豊かな生活をしてきたのであり、その崩壊は生活不安を意味するだけでなく、日本人の心も脆弱にするものである。経済大国の基本の一つが資源だが、地下資源や天然資源同様に殖産の基盤をなすのが電力である。しかも原子力発電は地下資源の不足を補って余りある高い効率をもった施設である。さらに近隣諸国も原子力発電所を増設している時に、削減・全廃を考える政治家など日本を亡国に導くものでしかない。将来も技術立国でしか生きられない国である。世界の最先端の原子力発電技術を磨くことこそわが国の将来を約束し、世界の人々にも貢献できる形ではないか。
投稿: 齋藤仁 | 2018年8月10日 (金) 10時58分
暑中お見舞い申し上げます。毎週の定期配信、ありがとうございます。小泉、菅氏お二人に共通する浮世離れした妄言、プロパガンダ(情報操作)は、インターネット上の情報空間で、国民の過半に喝破されています。地上波を含む既存メディアに対する国民の信任が総崩れ加速する現在を認識できない、お二人に対する「哀れさ」を強く体感しています。社会に貢献しようという真摯な政治家としての「志」の欠如もありそうです。追伸:発電能力(KW)と発電量(稼働率加味した、KWH)は中学理科の話ですね。それでは。
投稿: 野中志郎 | 2018年8月10日 (金) 08時29分