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2018年8月17日 (金)

「大阪市・学力テスト最下位」…吉村市長危機感一杯!

 651回目のブログです

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もののふの 八十宇治川の 網代木に いさよふ波の ゆくへ知らずも”
 
                柿本人麻呂(飛鳥時代・歌聖)

 (近江の荒れた都を過ぎる時に詠んだ歌)宇治川の網代木にしばし滞るかに見える波、この波は一体どこへ流れ去ってゆくのだろうか…。

 湖や川に柴や竹を細かく立て並べ、魚を簀の中に誘い込んで獲る仕掛けを網代(あじろ)と言い、それに用いる杭(くい)が網代木。荒廃した都(天智天皇の近江大津宮)の行方はどうなるのだろうかと、波の行方に人の世の無常感を詠んだものではないでしょうか。

 

 古の王朝人の感性はまことに見事ではありますが、現代を生きる政治家としては、覆い被さる難題に渾身の勇気を奮わねばならず、雅な感懐にふけることはできません。その一例を吉村洋文・大阪市長の言動に見てみたいと思います。

 

 「学テ」結果、校長や教員のボーナス、学校予算に反映へ
 
…最下位常態化に危機感 大阪市の吉村市長方針

 

  大阪市の吉村洋文市長は、今年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の総合成績が昨年度に続き、政令都市の中で最下位になったことを受け「抜本的な改革が必要だ」として、学力テストに具体的な数値目標を設定、達成状況に応じて校長、教員のボーナスや学校に配分する予算額に反映させる制度の導入を目指す考えを明らかにした。全国初の取り組みとみられるが、教育現場からの反発も予想される。
               (2018.8.2 産経ニュース)

 

 全国学力テストでの大阪市の結果が昨年に続いて政令都市最下位となりました。今までも大阪市の教育は色々と問題を含んでおり、大阪維新の会の橋下徹前市長を引き継いだ吉村洋文現市長は、改革への諸策を講じてきたのでしょうが、現実にはそれが成果に結びつかず、いよいよドラスティックな手段を講じる決意を固めました。

 

 それに対して、猛反対の声も大きく、またしても、大阪特有の大きな政治問題に繋がっていきそうです。

 

 それを考える前に、まず、今春行われた「全国学力テスト」の結果を見てみましょう。対象は小6と中3。小6は、国語A・B、算数A・B、理科の5教科であり、中3も、国語A・B、数学A・B、理科の5教科となっています。今年から47都道府県と20政令指定都市の合計67都道府県・政令市の結果が公表されました。すべての点数を合成し順位を表わします。

 

 【全国学力テスト(都道府県+政令指定都市順位 ベスト10

 

   ① 石川県
 
  ② 秋田県
 
  ③ 福井県
 
  ④ 富山県
 
  ⑤ 東京都
 
    広島県
 
    京都市
 
  ⑧ さいたま市
 
  ⑨ 新潟市
 
  ⑩ 青森県

 

 【全国学力テスト】政令指定都市順位(20市)

 

    5位 京都市
 
   8  さいたま市
 
   9  新潟市
 
  11  川崎市
 
  12  横浜市
 
   12   広島市
 
  19  福岡市
 
  22  静岡市
 
  25  千葉市
 
  29  仙台市
 
  29   熊本市
 
  31  堺市
 
  37  岡山市
 
  42  神戸市
 
  46  札幌市
 
  51  浜松市
 
  51  北九州市
 
  61  名古屋市
 
  65  相模原市
 
  67  大阪市

 

 大阪市は、都道府県+政令指定都市で最下位。これは厳然たる事実であり、市長として危機感を露わにするのは当然ではないでしょうか。もしも、そんな感覚を持たないのであれば、鈍感、無責任と言わねばなりません。

 

 それでも早速、“いわゆる”市民団体「子どもたちに渡すな!危ない教科書 大阪の会」などが『全国学テ結果の教員給与への反映に断固反対する!吉村市長は即刻撤回せよ』と抗議声明を発しています。これから、日教組、サヨク、自民党などが反市長の姿勢を教育問題をダシに一層強化するのは必至と言わねばなりません。

 

 大阪市民はノンビリしたままで、危機感はこれぽっちもありませんが、吉村市長の覚悟は相当なものがあります。ここで、政令指定都市で2番目に若い吉村洋文大阪市長の声をTwitterから拾いましょう。

 

 「結果」に対して「責任」を負う制度を校長や教員に求める以上、僕自身も「結果」に対して「責任」を負わなければならない。大阪市は来年の学テで万年最下位を脱する。その結果を出せなければ、僕の来夏のボーナスを全額返上する。

 

 親の経済力や教育が、子どもの学力と相関関係にあることはそうだと思う。しかし「全て」ではない。学校で教育しているんだ。教育者側が、(学テ万年最下位は)「家庭の問題」と切り捨てるのは、思考停止になる。教育村の内輪論理はダメ。聖域なき教育改革をやる。子どもの学力を上げなければならない。

 

 大阪市の教員の評価の現実。建前、5段階評価だけど、実際は、SとAの2枠で97.5%。1万1162人中、なんと1万886人がここに。これが現実。こんな組織ある? 原則、給料は上がり続ける。全部税金。生涯身分保障。子どもは社会に出て切磋琢磨を求められる。学力を上げないといけない。

 

 素晴らしい覚悟の発言。今流行りの汚い言葉ではなく、たんたんとした言葉に清々しさを覚えます。国のリーダーはこれでないといけません。

 

 ところで、吉村市長の発言の中に、教員の人事評価の異常な現況に触れたところがあり、早速調べてみると、まさしくその通りでした。ご覧ください。

 

 【H28年度評価結果分布(府費教職員および市費教員)
 

 

評価

 
 

SS

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

 
 

人数

 
 

56

 
 

3,560

 
 

7,326

 
 

212

 
 

8

 
 

11,162

 
 

割合

 
 

0.5%

 
 

31.9%

 
 

65.6%

 
 

1.9%

 
 

0.1%

 
 

100%

 大阪市は各ランクで5段階(SS・S・A・B・C)の評価。その中で、SとAを合わせると97.5%。何たる評価でしょうか。異常と言わざるを得ない評価であり、これでは全く評価とは言えません。

 大阪市は、教職員の内の市費職員(1,551)の評価制度は、第1(5%)・第2(20%)・第3(60%)・第4(10%)・第5(5%)となっており、その通りの評価結果となっています。

 

 市費職員はまだしも、市費教員の人事評価はデタラメと言わざるを得ません。教員側にとっては、教育を行う教員は特別であって本来評価されるべき存在ではないとの思いが強いのでしょうが、どの組織でも、公正な評価が求められます。

 

 大阪市の教育については、教員の人事考課を含めて、学力向上への抜本的な取り組みが必要ではないでしょうか。この歴史ある大都会・大阪市が全国で最低の学力であることに“屈辱”を感じ、そのための諸策を講じようとする吉村市長を心から応援したいと思います。

 

 確かに、大阪市は生活保護率・就学援助率とも全国で一番高い市ですが、それはそれで対処するとしても、社会環境の整備、正統な浪速文化の醸成なども合わせ、学校教育にも勇気をもった変革が必要でしょう。世界は甘くありません。学力の向上はわが国が生きていく最低限の最大の武器ではないでしょうか。もっと、真剣に取り組むべき課題だと考えます。

 

 吉村洋文大阪市長の教育に対する姿勢に敬意を表したいと思います。

 

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

 

次回は
時事エッセー
です。

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コメント

第一に、平成期に入ってから教職員の学力が下がっている。中学高校などの専門教科の教員でも、専門を除いた教科の知識が驚くほど低い。その結果、自力で指導法を確立している教師は極めて少なく、マニュアル本通りの平板な指導者が激増している。昭和四十年代までは、給与面や社会評価の面でも教師に魅力があったが、平成に入ってから教職の魅力は下落し、競争率も急減したことが主因だろう。それに対応するように、地方都市にまで私立の小中学校が学力向上を謳い文句に激増し、それがまた公立学校の生徒の質を下げている。第二に、教師の評価についていえば、30人の教員がいてもSS級の教員は滅多にいないが、S級教員は3~5人ぐらいはいる。S級教員を主任クラスにして学年組織を構成するが、問題の多い学年の場合、S級職員を複数配置する。少子化した現代、小学校では学年3クラスが多いが、その場合、学年にS級教員もいないことになる。学年や学級の問題が多発したら翌年にS級を配置することでしのぐ。教員数30人の学校なら身心に問題のある教員が1~2人いて、身心は健康だと本人が思い込んでいるが、学級担任や生徒指導は任せられない、即ち指導力不足教員も1~2人いる。教育委員会は管轄下の各学校に散らすように工夫しているが、クビにはできない。辞職を勧めるには評価Cが前提条件になるが、指導力不足教員に困っていても、その教員にC評価どころかB評価もできない校長が多い。教員の抵抗も面倒だし、組合と戦うのも面倒。問題教員の人事異動を待とう、ということだろう。(これが大阪市の評価に影響。)一つの解決法は国費がだめなら市費で学級担任手当を月1~2万円支給することだ。学級担任が心身ともに多忙なことは全職員が理解しているので、組合の反発も少なく、教職員の競争心を煽って指導力を磨きあえるのではないかと思う。

投稿: 齋藤仁 | 2018年8月17日 (金) 08時57分

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