各種ハラスメントを考えてみよう!
656回目のブログです
“月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど”
大江千里(古今和歌集・百人一首)
月を見ると、あれこれきりもなく物事が悲しく思われる。私一人だけに訪れた秋ではないのだけれど…。
秋と言えば、多少うら悲しく思える季節であり、フランスの詩人ポール・ヴェルレーヌの「秋の歌」(上田敏訳)が有名です。
秋の日の ヴィオロンの ためいきの
身にしみて ひたぶるに うら悲し
鐘のおとに 胸ふたぎ 色かへて
涙ぐむ 過ぎし日の おもひでや
げにわれは うらぶれて ここかしこ
さだめなく とび散らふ 落葉かな
季節の「秋」に対する同じ感懐を、フランスでは詩人が詩を、日本では歌人が和歌を通して、それを微妙なる情緒として表現していることに驚かされます。
秋の夜長には、このような文藝に親しみたいものですが、世間では何かがさついた雰囲気が漂い、なかなかゆったりとした心境に浸ることはできません。
ここ一年以内でも、スポーツ界において、暴力、セクハラ、パワハラなどの事件が次々と明るみに出てきました。記憶にあるものだけでもピックアップしてみましょう。
・「大相撲」横綱(日馬富士・白鵬)の集団リンチ、暴行事件
・「女子レスリング」協会強化本部長の伊調馨選手へのパワハラ
・「日大アメフト部」監督・コーチによる反則行為の指示
・「女子体操」塚原副会長・強化本部長(夫妻)の陰湿なパワハラ
コーチの暴力的指導
・「日体大陸上競技部駅伝」監督の体罰・暴力・パワハラ
・「女子アイスホッケー」コーチ(夫妻)の暴力
・「ウエイトリフティング」9/15会長のパワハラ問題発覚・調査中
あるはあるは、この他にも数多くありますから、最近では、テレビでセンセーショナルに取りあげても、またかという具合に感じてしまいます。これを見ると、スポーツ界には、いわゆるパワハラが宿痾(しゅくあ)、業病(ごうびょう)として存在していると言わざるを得ません。
暴力はそれなりに認識できても、パワハラは、加害当事者がことの重大さを認識していないことが問題ではないでしょうか。そこで、広くハラスメントについて考えてみたいと思います。
【ハラスメント一覧】(嫌がらせ・いじめ)
・パワーハラスメント(パワハラ)
・セクシャルハラスメント(セクハラ)
・モラルハラスメント(モラハラ)
・アカデミックハラスメント(アカハラ)
・キャンパスハラスメント(キャンハラ)
・ドクターハラスメント(ドクハラ)
・アルコールハラスメント(アルハラ)
・マタニティハラスメント(マタハラ)
・ゼクシャルハラスメント(ゼクハラ)
・マリッジハラスメント(マリハラ)
・ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
・ブラッドタイプハラスメント(ブラハラ)
・テクスチュアルハラスメント(テクハラ)
・スクールセクシャルハラスメント(スクールセクハラ)
・パーソナルハラスメント(パーハラ)
・エイジハラスメント(エイハラ)
・シルバーハラスメント(シルハラ)
・スメルハラスメント(スメハラ)
・エアーハラスメント(エアハラ)
・ソーシャメディアハラスメント(ソーハラ)
・レイシャルハラスメント(レイハラ)
・レリジャスハラスメント
・ラブハラスメント(ラブハラ)
・ヌードルハラスメント(ヌーハラ)
・フォトハラスメント(フォトハラ)
・カスタマーハラスメント(カスハラ)
・セカンドハラスメント(セカハラ)
・リストラハラスメント(リスハラ)
・終われハラスメント(オワハラ/就活終われハラスメント)
・家事ハラスメント(カジハラ)
・カラオケハラスメント(カラハラ)
・スモークハラスメント(スモハラ)
・テクノロジーハラスメント(テクハラ)
・エレクトロニックハラスメント(エレハラ)
・ペットハラスメント
まだまだ拾いきれていませんが、ハラスメントはうんざりするくらいの数があることが分かります。特に、パワーハラスメント(パワハラ)は、ここまで来ると完全に日本語として定着したとみるべきでしょう。パワハラは、加害者にとっては自覚なき行為かも知れませんが、被害者にとってはとてつもなく深刻なものです。
パワハラは、精神的・肉体的暴力ですが、それに加えて、パワハラが企業、組織にもたらす「損失」は計り知れないものがあることを認識しなければなりません。その損失を中央労働災害防止協会のパワハラ実態調査から見ていきましょう。
【パワハラが企業にもたらす『損失』】(複数回答)
・社員の心の健康を害する 82.8 (%)
・職場風土を悪くする 79.9
・本人のみならず、まわりの士気が低下する 69.9
・職場の生産性を低下させる 66.5
・十分に能力発揮ができない 59.3
・優秀な人材が流出してしまう 48.3
パワハラが生じる事態をそのままにしておくと、それが精神疾患に進み、自殺にまで至り、不名誉な「労災認定」となります。こんな職場をつくるべきではなく、企業、組織としては、経営者から管理職・従業員に至るまで、ハラスメント対策をしておくことが肝要ではないでしょうか。トップから一般社員までの「社員教育」「人間教育」が決め手となることは間違いありません。
さいごに、大阪医科大学の分かりやすい対策を掲げておきます。
【ハラスメントを受けたら】(大阪医科大学)
ハラスメントを受けた場合、被害を深刻にしないためにも次の事項について認識することが大切です。
1、一人で我慢したり、無視したり、受け流しているだけでは必ずしも状況は改善されないので、勇気をもって行動し、はっきりと自分の意思を相手に伝えること。
2、まず、身近で信頼できる人に相談する。そこで解決することが困難な場合には、学内相談窓口に申し出るなどの方法を考えること。
3、ハラスメントを受けた日時、内容等について出来るだけ詳しく記録しておく、また、可能であれば第三者の証言を得ておくことが望ましい。
4、自分の周りで被害にあっている場面を見かけたら、見すごさずに行為者に対し注意をうながすか、相談窓口等に助力を求めること。
ハラスメントは無くしましょう。世の中が少しでも良い方向に向かうことを期待したいものです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
| 固定リンク
コメント
いつも興味深く拝見しております。パワハラの問題について,以下のような実験も参考になるかと思いますので,紹介します。キャロル・S・ドゥエックが思春期初期の子ども数百人を対象にした実験です。かなりレベルの高い知能検査を10問受けさせた後,A・Bグループに分ける。Aグループには「良くできたね,頭が良いわね」と能力(結果)を褒める。Bグループには「良くできたわね。頑張ったね」と努力(結果)を褒めた。その後続けた実験結果では,Aグループは,「自分は頭が良くない」と思うようになり,Bグループは,難しい問題を面白いと答え,意欲的になり,成績も向上したという。鄙諺に「豚もおだてりゃ木に登る」というが,指導的立場にある者の心すべきところと思われます。
投稿: 安見隆雄 | 2018年9月21日 (金) 15時21分