自民党総裁選結果…マスコミの反応を見る!
657回目のブログです
“暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ
山の端の月”
和泉式部(平安中期の歌人)
どうにもならない闇から闇路にさまよいこんでしまいそうです。どうか山の端の月よ、遥か彼方の道までも照らし出してくれないだろうか…。
ひとりで暗闇にさまよいこむと堂々巡りに終始し、なかなか解決策をつかめないものです。そんな時、優しく力強い相談相手がおればよいのですが、それもいない。そうとすれば、この迷いを解きほぐし導いてくれる神様に頼むことしか思い浮かびません。すがるような気持ちをもって。…との意味を流れるような和歌に詠んだものと言えるでしょう。
日本三大随筆「方丈記」の作者である鴨長明は、上の和歌を和泉式部の代表歌として激賞していますし、たしかに声に出して読めば、何か心にズシリと来るものがあります。素晴らしい和歌だと思います。
さて、9月20日、自民党(自由民主党)総裁選が行われ、実質的な次期総理が決定しました。総裁選の結果とマスコミの論評についてみてみましょう。
【自民党総裁選結果】
投票総数 国会議員票405票・党員票405票、総計810票
(内無効3票)
|
国会議員票 |
党員票 |
合 計 |
得票率 |
安倍晋三 |
329 |
224 |
553 |
68.5% |
石破 茂 |
73 |
181 |
254 |
31.5% |
(計) |
(402) |
(405) |
(807) |
|
この結果を、マスコミはどのように論評しているかについて、総裁選翌日9月21日の朝刊1面見出しを主としてピックアップしてみました。(数字は面)
【新聞マスコミの論評】
・読売新聞
①「安倍首相 連続3選 得票69%石破氏破る」
③「首相、課題残す“圧勝”」
・朝日新聞
①「安倍首相 総裁3選 歴代最長政権も視野」
③「首相圧勝ならず」
・毎日新聞
①「安倍氏 自民総裁3選 石破氏善戦
党員票45%」
②~③「圧勝逃す 首相誤算 改憲シナリオ狂う」
余禄「対抗馬の石破茂氏は党員票で10県を制するなど、
予想を上回る健闘をみせ、“圧勝で3選”を期待した
安倍陣営のシナリオを狂わせた。
・日本経済新聞
①「首相 自民総裁3選 任期3年“改憲”に挑戦」
③「求心力維持、首相に試練」
・産経新聞
①「安倍氏総裁3選 麻生・菅・二階氏留任へ」
②「安倍氏問われる成果」
・京都新聞
①「安倍首相 自民総裁3選 石破氏善戦 地方4割強」
③「完勝逃し揺らぐ求心力 地方、1強への不満あらわ」
新聞によって、反応はまちまち、極端に分かれています。ここで、わたしの印象と判断を述べたいと思います。
・純粋に投票結果の数字だけを見ると、安倍晋三氏(現内閣総理大臣)がダブルスコアで勝利したことになります。安倍氏は石破氏の倍以上を獲得したのですから、一般的に言えば圧勝といえるのではないでしょうか。
・ところが、朝日や毎日は圧勝ならずと判断しました。わたしにはどうにも理解できません。選挙でなくても、68.5%も獲得すれば圧勝とみなされますが、朝日は、総裁選前、安倍首相が党員票(地方票)を7割獲得して圧勝と規定していました。要するに、党員票だけに目を注いでいたことになります。
・総裁選戦前から、安倍首相に嫌悪感を催し、石破氏を応援していた大半のマスコミはこの結果に大満足でした。その証拠に、石破氏がダブルスコアで負けたにもかかわらず「健闘」「善戦」の好意的なフレーズを付けています。
・雑誌などでも、安倍首相嫌い、石破氏応援のジャーナリストなどは、今回の結果を「予想上回る健闘で安倍シナリオが狂う」「想定超える善戦が持つ大きな意味」として、まるで石破氏が勝者の様なメディア雰囲気を醸し出しています。このような見方は果たして妥当なのかどうか、もう少し客観的、冷静な見方が必要ではないでしょうか。
・わたしは、政治家の選挙は、純粋に“権力闘争”に他ならないと考えていますから、今回の結果は「石破氏が負け、安倍氏が勝った」ということのみが意味を持つと思います。
・その意味では、勝者の安倍首相は、最後の総理大臣3年間で“念願の政治課題”に全力を傾けてもらいたいと期待すると共に、敗者の石破氏は捲土重来を期してほしいと願うものです。
・ひとつだけ大いに気になったことがあります。自民党総裁選の論戦において、総裁候補者の安倍首相と石破元幹事長の憲法観に大きな差異があることです。
安倍首相は、憲法9条に自衛隊の存在を認める条項を新たに加え、公明党が従来より主張していた“加憲”として憲法改正の陣営に取り込み、完全なる理想は将来に置き、憲法改正の風穴をあけようとする政治家としての判断を下しています。
一方、石破元幹事長は、9条2項(戦力の不保持)を削除することを主張し、安倍首相の憲法改正案に猛反対。憲法改正は、自民党から共産党までがよく理解し、議論を重ね、合意してから国民投票へ進めるべきであり、現在では時期尚早と言い切っています。この論で行くと、当然のことながら、未来永劫、改憲はできそうにもありません。
結論として、石破氏は、学者・評論家としては改憲論者であり、政治家としては護憲論者だと言うことが明確になりました。今、石破氏に求められているのは、学者や評論家ではなく、政治家としての姿勢であり矜恃だと思います。実質的に護憲論者であるならば、自民党の党是に反するのではないでしょうか。
わたし達は、マスコミの情緒的な雰囲気に巻き込まれることなく、自らで判断するようにしたいものです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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