「中国は米国の民主主義に介入している」…ペンス副大統領演説を読む!
660回目のブログです
“形見とて
何残すらむ 春は花 夏ほととぎす 秋はもみぢ葉”
良寛(江戸後期・僧侶/歌人/書家)
わたしの亡くなった後の思い出の品として何を残したらよいであろうか。春は花、夏はほととぎす、秋は紅葉の葉であろうよ…。
良寛和尚の辞世の歌。自然を愛し、自然に生き、麗しくも澄み切った気高い精神に被いつくされた名歌というべきものではないでしょうか。
秋のもみじは、昔は「黄葉」と書き、今は「紅葉」と書きますが、読みかたは、どちらも“もみじ”。その秋のもみじは、これまでは緑の葉であったものが、黄色から紅色の間にある無限の色合いを醸し出すものに変化したものですが、わたしたち日本人は、その絶妙な自然の情趣を心静かに観賞することに、なぜか無限の喜びを感じてしまうのです。
ところが、今秋の紅葉は、年初からのとてつもない天候不順により、充分な色合いに変化しないと言われており、何となく心に侘しさを覚えてしまいます。それでも、一部には盛んな紅葉もあるでしょうから、その麗しき景色を求め“紅葉狩り”に出向くつもりです。日頃、雑駁な生活をしていますから、豊かな四季の一端に触れることにより繊細な感性を些かでも取り戻したいと思います。
わが国の四季はそれぞれの美を眼前に見せてくれますが、今、世界を取りまく国際情勢は、かつてない厳しさを投げつけてきています。米国と中国の経済戦争から世界覇権争いへと展開する“新冷戦”は、関係国はもちろんのこと世界各国へ深刻な影響を与えてきていると見なければなりません。
その意味で、中国(中華人民共和国)が米国にどのような“戦争”を仕掛けているのか、それに対して米国がどのように対処しようとしているのかについて、考えて見たいと思います。10月4日、米国のシンクタンク、ハドソン研究所にてペンス副大統領が対中国政策についての演説を行いましたので、その一部をご覧ください。
【ペンス副大統領演説】(要約抜粋)
・冒頭にハドソン研究所中国戦略センター所長のマイケル・ピルズべりー博士に謝意を表し、博士の主張への同意を表明。“アメリカ政府は、中国が豊かになれば、いづれアメリカ的な価値観を持った民主主義国家になるとの『幻想』を抱き、いや、抱かされて暖かい支援を惜しまず施してきた。ところが、中国は、中国共産党革命から100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取し、世界の盟主として君臨することを目指す戦略(軍事力の急速な拡大・違法な諜報活動・権謀術数の外交)を着々と取ってきている”と。(参考推薦書籍:『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』ピルズべりー著
日経BP社 2000円)
・中国共産党政府は、政治、経済、軍事的手段とプロパガンダを用いて、米国に対する影響力を高め、米国内での利益を得るために政府全体にアプローチをかけており、かつてないほど積極的に米国の国内政策や政治活動に干渉しています。
・過去17年間、中国のGDPは9倍に成長し、世界で2番目に大きな経済となり、この成功の大部分は、アメリカの中国への投資によってもたらされました。また、中国共産党は、関税、割当、通貨操作、強制的な技術移転、知的財産の窃盗、外国人投資家にまるでキャンディーのように手渡される産業界の補助金など自由で公正な貿易とは相容れない政策を大量に使ってきています。
・現在、共産党は「メイド・イン・チャイナ(Made in China)2025 」計画を通じて、ロボット工学・バイオテクノロジー・人工知能など世界の最先端産業の90%を支配することを目指しています。中国政府は、21世紀の経済の圧倒的なシェアを占めるために、官僚や企業に対し、米国の経済的リーダーシップの基礎である知的財産を、あらゆる必要な手段を用いて取得するよう指示してきました。
・そのために、中国で事業を行うための対価として、企業秘密を提出することを要求。また、米国企業の創造物の所有権を得るために、米国企業の買収を調整し出資までも。最悪なことに、中国の「安全保障機関」が、最先端の軍事計画を含む米国の技術の大規模な窃盗の黒幕です。そして、中国共産党は盗んだ技術を使って大規模に民間技術を軍事技術に転用しているのです。
・中国はかつてないほど権力を行使。中国の船舶が、日本の施政下にある尖閣諸島周辺を定期的に巡回しています。そして、中国は南シナ海を「軍国主義化する意図はない」と発言した一方で、今日、人工島に建設された軍事基地の列島上に、高度な対艦ミサイルと対空ミサイルを配備しました。
・中国は他に類を見ない監視国家を築いており、グレートファイアウォール(インターネット検閲)も厳しくなり、中国人への情報の自由なアクセスを大幅に制限しています。
・宗教の自由について。中国のキリスト教徒、仏教徒、イスラム教徒に対する新たな迫害の波が押し寄せています。キリスト教については、当局は十字架を取り壊し、聖書を燃やし、信者を投獄。
・仏教も厳しく取り締まっています。過去10年間で、150人以上のチベットの僧侶が、弾圧に抗議するために焼身自殺。そして新疆ウイグル自治区では、共産党が政府の収容所に100万人ものイスラム教徒のウイグル人を投獄し、24時間体制で思想改造を行っているのです。
・中国は、中後進国へ「借金漬け外交」を利用してその影響を拡大。スリランカは借金返済不能で自国の港を99年間中国へ引き渡すことになりました。(…これは、まさしく「新植民地主義」ではないか!)
・中国共産党は、米国企業、映画会社、大学、シンクタンク、学者、ジャーナリスト、地方、州、連邦当局者に見返りの報酬を与えたり、支配したりしています。
・中国が米国の民主主義に干渉していることは間違いありません。最悪なことに、中国はアメリカの世論、2018年の選挙、そして2020年の大統領選挙につながる情勢に影響を与えようとする前例のない取り組みを始めているのです。
・中国政府は、ハリウッドが中国を絶対的に肯定的に描くよう、いつも要求。応じないスタジオやプロデューサーは罰せられます。また、例えば、中間選挙と大統領選に重要な州である駐中米国大使の故郷の州の地元紙に複数ページのPR記事を掲載するなどアメリカ世論の分断を画策。
・中国政府は米国社会の分断のために、正確かつ注意深い打撃を与えるよう指示を出しています。そのために30以上のラジオ局を設立し、7500万人の視聴者を獲得していますが、この影響は大きい。
・中国共産党は、深く詮索しすぎた米国人ジャーナリストには、家族を脅したり、WEBサイトを遮断したり、ビザ取得を困難にするなどの圧力を加えます。
・また43万人の中国人留学生へも厳しい圧力をかけています。最近、メリーランド大学で中国人留学生が、自分の卒業式で、アメリカの『“言論の自由”の新鮮な空気』と発言すると、共産党機関紙は、すぐに彼女を非難し、故郷の家族は迫害を受けたのです。
・(アメリカは黙ってはいない)米国は、中国に対抗するために、レーガン以来最大の国防費を増額し、核兵器の近代化を進め、米国宇宙軍を設立するプロセスを開始するとともに、サイバー世界における能力を向上させるための措置を講じています。
・今、大学やシンクタンクは楽に手に入る中国マネー(中国の資金援助)を拒絶する勇気を奮い起こして行こうとしています。
・トランプ現政権は、米国の利益、米国の雇用、米国の安全保障を守るため、断固とした行動をとり続けていきます!
・我々は、中国政府による米国知的財産の窃盗が完全に終了し、強制的な技術移転という略奪的な慣行が止まるまで、引き続き断固とした態度をとっていきます。
・国家安全保障を中国の略奪行為から守るために、米国への中国の投資に対する我々の監視も強化します。
・知的所有権を放棄したり、中国の抑圧を助長したりすべきではありません。例えば、Googleは、共産党による検閲を強化し、中国の顧客のプライバシーを侵害する「Dragonfly」アプリの開発を直ちに終了すべきです。
吃驚しました。ものすごい演説です。それにしても、アメリカ政治の“ダイナミズム”に唸らざるを得ません。今や、米中経済戦争を通り越して米中覇権争い“新冷戦”ともいうべき事態ではないでしょうか。どのような決着となるのか、取りあえずは、同盟国アメリカにエールをおくりたいと思います。
翻って、わが国の政治はどうでしょうか。国家を護るための強烈な意思を表明する、これだけ骨のある演説など聞いたことがなく、近隣の諸国に対して、明確な発言がなされない日本政治のもどかしさを感じざるを得ません。
中国(中国共産党)の危険な謀略には、充分な警戒が必要ではないでしょうか。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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