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2018年10月 5日 (金)

バチカン法王 中国共産党に屈す!

 658回目のブログです

 20181051

“ときはなる 青葉の山も 秋くれば 色こそかへね さびしかりけり”
 
                         前大僧正覚忠
(天台座主・千載和歌集)

 常緑の青葉の山も、秋がやって来ると、まだ色こそ変わらないものの、さすがに寂しげな景色になるものだ…。

 いよいよ秋になったかの感もあるにはあるのですが、強烈な台風がこれでもかという具合に、まさしく「襲来」し、被害も甚大なニュースを見るにつけても、早く秋の情趣に少しく浸ってみたいと思う今日この頃です。

 

 秋と言えば、こころを落ち着かせる時でもあり、読書の秋という言葉もあるように、やはり、まとまった多少分厚い本を読みたいものです。特に、現在のように、国際情勢が目まぐるしく変動し、真の知識をもとに判断を求められている時こそ、そのような場面を必要とするのではないでしょうか。

 

 こんな時、驚くべきニュースが流れてきました。

 

 中国とバチカン、司教任命で暫定合意 関係改善へ前進

 

  中国とカトリックの総本山バチカン(ローマ法王庁)22日、長年の火種である司教任命権をめぐる問題で暫定的な合意に達したと発表。バチカン側によると、中国が独自に任命した司教をバチカンが承認する。中国側は、台湾と外交関係を持つバチカンと「引き続き意思疎通して関係改善を前進させる」と表明した。
            (2018/9/22日経新聞一部抜粋)

 

 以前の小ブログで、中国がバチカンと裏交渉を重ね、合意を得て、いずれは台湾とバチカンの離反(=断交)を目指し、台湾を吸収してしまおうとの工作を永年に亘って仕掛けてきていることを指摘しました。

 

 今年の始めは、その交渉が不調だとのニュースが流れてきていましたが、双方が、お互いの利益を目指し、しぶとく交渉し、暫定合意に達したものと思われます。

 

 暫定合意の内容は全くの非公開となっていますが、ヨーロッパの報道によれば、中国がこれまでに任命した8人の「司教」をバチカンがすべて承認するとの内容となっているとしています。

 

 そうだとすれば、これはバチカンの完全なる譲歩であり、これをオープンにすれば、対中国に前のめりになった法王フランシスコへの風当たりは厳しくなるに違いありません。

 

 現在、世界のキリスト教人口は約22億人、その内カトリックが11億人、プロテスタントが4億人。世界でカトリック人口の伸びが見込めない中、アジア、特に中国では大きな成長が見込まれています。中国では、公式のカトリック信者はわずかに600万人、非公認のキリスト教徒が1億人もっとも、プロテスタントが圧倒的に多く、カトリックは2割以下と言われています。

 

 それゆえに、法王フランシスコは、アジアへの新規開拓、なかんずく中国への信者拡大はどうしても成し遂げたい野望でもあります。したがって、格好をつけたぎりぎりの妥協に応じたものと言えるでしょう。

 

 一方、中国は、今年4月に2度目の「宗教白書」を発行。習近平主席は「宗教の中国化」を強固なる方針として打ち出しました。中国は、すでに5大宗教人口(仏教・キリスト教・イスラム教・ユダヤ教・ヒンドゥ教)が2億人超であり、手綱を緩めるわけにはいきません。

 

 中国は、共産党の1党独裁国家であり、宗教は基本的には“アヘン”として徹底した管理下におくことを党是としているのです。具体的には、共産党中央統一戦線部 ⇒ 国家宗教事務局 ⇒ あらゆる宗教団体、というかたちであり、党中央が直接、宗教工作を指導、強化することになっています。

 

 「宗教の中国化」とは、宗教の核心部分(基本教義・礼儀・制度)は変更せず、中国共産党の指導を擁護し、社会主義を擁護する、そして、中華民族の偉大なる復興、すなわち世界覇権、世界制覇を実現するパワーとなることだといいます。

 

 さらに、宗教信仰を持つ人民は「愛国者」でなければならないとしています。要するに、宗教は信じてもよいが、すべて、絶対的独裁権力の共産党の適切な指導の下でなければならないというドグマを認めることに他なりません。

 

 バチカンの法王は、北欧のごく一部を除き、全世界において、司教任命権を持っています。しかし、中国では、独裁の共産党が選んだ司教をバチカンが任命するということですから、これはもう茶番以外の何ものでもありません。

 

 ところで、弾圧と言えば、中国共産党の基本的体質であることは、新彊ウイグルやチベットへの迫害(虐殺・圧政・人権抑圧・断種・強制収容)を見れば明白ではないでしょうか。

 

 ジャーナリスト・中国ウオッチャーで著名な福島香織女史は「2017年の一年間で中国国内で宗教的迫害を受けた人数は22万人、これは、2016年の3.5倍に当たり、文革以来最も宗教弾圧の厳しい時代だ」と報じています。(4/11日経ビジネスonline)

 

 このように見てきますと、今回の、法王フランシスコが中国共産党と合意したのは、バチカンがいわゆる“中国市場”に目が眩み、甘い期待を持ち、安易な妥協をしたのではないかと思わざるを得ません。この推測が間違っていてほしいと望むところ大です。

 

 一方、中国の得たものは極めて多いものがあります。まず、中国内の地下で信仰活動しているキリスト教徒(カトリック&プロテスタント)に対して、法王と中国が手を結んだことを理由に、表に出てくるよう呼びかけ、彼らの宗教活動の全体を掌握し、共産党の指導下に置くことができるようになります。

 次に、ヨーロッパで台湾と唯一の国交を結んでいるバチカン市国と中国が国交を結ぶとなれば、台湾は、将来、バチカン市国と断交になる可能性があります。(いまのところ、バチカン市国と台湾はそのままの関係を保つようですが…将来はどうでしょうか)

 バチカンと中国が手を結ぶということは、単に宗教上の問題だけにとどまらず、政治的にも極めて大きいものがあると考えます。

 

 今、アメリカのトランプ大統領は、中国と経済面のみならずあらゆる面で、中国の世界覇権を防止することに全力を傾けている時に、バチカンが中国に手を差し伸べるのは中国の世界支配に協力することを意味すると思われます。その意味で、この問題はそんなに軽いものではありません。

 

 (その意味で、まったく別の案件…。今秋、安倍首相や麻生財務相が中国訪問時に“日中通貨スワップ”を締結するようですが、なぜ日中通貨スワップが必要なのか、今、米中が経済戦争の真っ只中、同盟国である米国の理解を得た上での締結が望ましいのではないでしょうか)

 

 中国は激越な覇権国家、厳しく対処することが肝要ではないかと思います。

 

 みなさんはどのようにお考えでしょうか。

 

次回は
時事エッセー
です。

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コメント

 傑出した思想家や宗教家に心酔して集まった人々の心は純粋でも、心酔した熱情は恋愛の情に似ており、心酔した人(或いは信者)同士が互いに、どちらがより彼から評価(愛)されているかを競い合うことになる。それを遠藤周作はイエスキリストの弟子ペテロ・パウロなどの葛藤を小説に著した。まして思想家や宗教家と弟子を中心にした組織ができると、それが世俗的人間の醜悪さを集団で体現することになる。それでも宗教上の組織は「善とか愛」と言った言葉で上部を繕う分だけマシだが、クロムウェルやヒトラー、マルクス・レーニンなどが作った政治思想上の組織は、人間の醜悪さがそのまま組織上に露出するため、救いようのないものとなる。今回は、宗教上の世俗組織と、政治上の醜悪な組織が、人間の欲望だけを目的として合意した、というより、合体したものである。

投稿: 齋藤仁 | 2018年10月 5日 (金) 17時13分

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