安田純平氏解放…北の拉致被害者に思いを馳せよ!
662回目のブログです
“うす霧の 籬の花の 朝じめり 秋は夕べと 誰か言ひけむ”
藤原清輔(平安末期・新古今和歌集)
薄霧の立ちこめる垣根の花がしっとりと朝露に濡れて素晴しい風情だ。秋の趣は夕暮れに限るなどと誰が言ったのだろう…。
籬(まがき)= 竹や柴などで目を粗く編んだ垣根。一般的には秋の趣は夕暮れが何となく相応しいように思えますが、たしかに、朝露にしっとりと濡れた垣根の風情も素晴らしいものがあります。日本の四季はどちらを向いても“美しき天然”そのものであり、ただ1ヶ所のみに目を奪われるのではなく、他の所へも目配り、気配りすることも大切ではないかと思われます。
さて、今、国際情勢は時々刻々と動いており、決して目を離すことはできません。
■ シリアから解放の安田さん、帰国 3年4カ月ぶりに解放
シリア北部で武装組織に3年間拘束されていた日本のフリージャーナリスト、安田純平さんが25日成田空港に帰国した。安田さんは2015年6月、内戦を取材するためトルコからシリアに渡った後、行方が分からなくなっていた。
(2018/10/25 BBC News一部抜粋)
安田氏はシリア武装勢力に拘束されてから紆余曲折を経て、トルコのイスタンブールから帰国したことで、政府も安堵の意を表明しました。
菅官房長官は「官邸を司令長官とする『国際テロ情報収集ユニット』を中心に、トルコやカタールなどの関係国に働きかけた結果だ」と説明。また、政府はいかなる邦人の生命および身体の保護にあたるのは当然とするとともに、今回「身代金を払った事実はない」ことを強調しました。
しかしながら、例によって、ネットでは色々な話題が流れています。今や、ネット社会を馬鹿にはできません。新聞や地上波テレビでは表面的なことしか報道されないことが多々あるからです。たしかに、ネットは玉石混交ではありますが、それは、一般マスコミも同じだと思います。
まず、身代金ですが、政府が身代金支払いを否定するのは当然でしょう。国連は2014年、身代金の支払に応じないよう各国政府に求める決議を全会一致で採択していますから。しかしながら、一般的には、テロからの解放に身代金が付き物であることも公然たる事実です。
英字紙ジャパンタイムズは「国際テロ組織アルカイダの関連組織タハリール・アル・シャーム機構(HTS)が身代金として1000万ドル(約11億円)を要求していた」と報道。また、現地紙では3億4000万円の支払いをカタールにしたと報道されています。もちろんのこと、菅官房長官は否定。
身代金に関して、わが国の過去を繙いてみましょう。昭和52年(1977)、日本赤軍が起こしたダッカ日航機ハイジャック事件で、時の福田赳夫首相は「人命は地球より重い」との名言(迷言)を発し、身代金600万ドル(約15億円・当時の為替250¥/$)の支払いと、超法規的措置を適用し、獄中メンバーなどの引き渡しを行った事実があります。膨大な金額がテロ資金となり、テロ組織を支援したことにつながったのです。自民党の自称真正保守派と言ってもこの程度で、当時、世界のもの笑いになりました。
身代金が払われたのかどうか、身代金はいくらだったのか、についてはほとんどの場合不明であり、今回も、ゼロか3億4000万円か11億円かは、全くの薮の中であると言わねばなりません。
次いで話題とされているのが「自己責任論」。安田純平氏は戦場ジャーナリストとして、戦争地帯であるシリアに赴こうとしました。政府は、それを知り、超危険地帯だとして取り止めるよう説得を重ねましたが、安田氏は逆に、安全性を理由に渡航を制限する日本政府に対して激怒し、次のような言動を発して、シリアに強引に入り早々に拘束されたのです。
安田純平氏のtwitter(2015/4~6月)での発言をお読みください。
「戦場に勝手に行ったのだから自己責任、と言うからにはパスポート没収とか家族や職場に嫌がらせしたりとかで行かせないようにする日本政府を『自己責任だから口や手を出すな』と徹底批判しないといかん」
「シリアのコバニ(注:シリア北西部の都市)には欧米からもアジアからも記者が入っていて、フェミニストの若い女性やら学生メディアやっている大学生やらまで集まっているが、日本は経験ある記者がコバニ行っただけで警察が家にまで電話かけ、ガジアンテプからまで即刻退避しろと言ってくるとか。世界でもまれにみるチキン国家だわ」
「現場を否定するということは、個々の人間の存在を否定するに等しいと思う。せっせと取材の邪魔をする安倍政権とかその支持者とか」
要するに、自己責任で戦場に赴くのだから日本政府は文句を言うな、日本は臆病者のチキン国家だ、取材を妨害する安倍政権、ということで、日本国家・日本政府・安倍政権を徹底して攻撃しているのです。このtwitterから窺われるのは、リベラルサヨクの臭いであることは疑いもありません。
しかしながら、結果として、多額の税金と関係職員の時間の浪費をへて、悪態を突いた日本政府から無事救済されることになりました。安田氏の言動には、普通の常識ある立場からして違和感を覚えざるを得ません。自らは“政府と国民”を徹底的に批判し、生死の窮地に立てば救助してもらう、そして心からの詫びも何もない、筋が通らず、甘えの構造の中心にいる人ではないかと思います。日本国民であるならば、帰国した時、直ちに、政府と国民に対して、お侘びと感謝を述べるべきだったと考えます。
わが国の大手マスコミは、安田氏が同業であるとともに、自社が取材し得ないことを取材してくれる便利な存在であることから、自己責任に対しては目をつむり、否定的な立場をとっています。それどころか「英雄」的な扱いをするほどですが、どうして英雄なのでしょうか、理解に苦しみます。マスコミは、ここで冷静に「自己責任」について議論してはどうでしょうか。
マスコミ、マスメディア、ジャーナリズム、すべてがバランス感覚を失っているように思えてなりません。それは、安田純平氏の帰国を喜ぶならば、どうして、北朝鮮に拉致されている被害者とその家族のことを、今、報道しないのかということです。被害者家族の方は、おそらく、複雑な気持ちを懐いておられ、その無念さは如何ばかりかと思う次第です。
・安田氏は“自らの意思”で渡航禁止地域のシリアに入った。
・北朝鮮被害者は暴力的に“拉致”された。
安田氏をあれだけ大きく取り上げるのであれば、それ以上の熱意で北朝鮮拉致被害者のことを取り上げるべきではありませんか。北朝鮮は主権と人権の侵害者であることは自らが認めた事実であり、現在、未帰国者(認定者のみ)は下記の通りです。(その他、特定失踪者100名以上あり)
昭和52年(1977) 三鷹市役所勤務 久米 裕さん(52歳)
鳥取会社員 松本京子さん(29歳)
新潟女子中学生 横田めぐみさん(13歳)
昭和53年(1978) 東京飲食店員 田口八重子さん(22歳)
ラーメン店員 田中 実さん(28歳)
電電公社職員 市川修一さん(23歳)
事務員 増元るみ子さん(24歳)
曽我ひとみ母 曽我ミヨシさん(46歳)
昭和55年(1980) 京都外大学生 松木 薫さん(26歳)
日大学生 石岡 亨さん(22歳)
大阪中華店勤務 原勅 晁さん(43歳)
昭和58年(1983) 神戸外大学生 有本恵子さん(23歳) (年令:拉致当時)
日本国家として、日本国民として、冒頭の和歌にあるように、1ヶ所だけでなくもう1ヶ所に目を向けること。それは北朝鮮拉致被害者に心を寄せることではないでしょうか。北の拉致問題を風化させてはなりません。
マスメディアには、日本人としての矜恃を発揮してもらいたいと望みます。
みなさんはどのようにお考えでしょうか。
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
国民が選択した政府の方針に反対することで、マスコミの寵児となって生活の糧を得る。野党政治家やジャーナリスト、タレント等に数多見られる日本ならではの光景である。筆者が指摘した安田氏の嘗ての発言を、浮薄なコメンテータの多くは指摘どころか忘れている。55年体制は消滅したが、社会党が残した負の遺産、即ち多額の国税を貰う政治家でありながら、国家の基盤たる防衛も治安も無視してひたすら政府を批判し、かつその政府にタカる、「その日暮らし」の衆愚文化が未だに日本社会に跋扈している証左である。健全野党を目指したはずの民主党も結局、社会党文化に毒されて沈んだ。にも拘らず民主党解体後の政党も21世紀の社会党を目指している。税金並みに受信料を徴集しながら国益に反する報道を垂れ流して高給を貰うNHK職員、次々と反日報道を流して我が国の脆弱化を進めながら日中友好や半島統一促進を謳う朝日新聞など。今後、わが国の安全を脅かす紛争が起きた時、彼らは如何なる態度をとるのか?恐らく、それでも彼らは「わが国の安全を守れなかった政府に責任あり」と旧社会党並みに政府批判の大合唱をすることだろう。正義の士、マスコミ人は常に正しい(はずだから)。
投稿: 齋藤仁 | 2018年11月 3日 (土) 11時54分