アマゾン・法人税ゼロ…えっ、まさか!
669回目のブログです
“後れても 後れても また後れても 誓ひしことを 豈忘れめや”
高杉晋作(勤皇の志士・奇兵隊創設者)
明治維新の源流・吉田松陰の高弟である高杉晋作が、獅子奮迅の働きをし、自ら創設した奇兵隊の大いなる活躍によって維新回天の引き金となったことは歴史の語るところです。
奇兵隊は、藩士・藩士以外の武士・庶民からなる混成部隊であり、その創設には大変な苦心があったと思います。現代用語で言えば、まさしくベンチャーそのもの。今までにない組織を創ろうとするのですが、高杉晋作の、兵を集める前日にうたった都々逸に、並々ならぬ自信と心意気を窺うことができます。
“同じ来るなら今月今宵、明日になったら誰も来る”
新規事業、ベンチャーを経験した人であれば、誰しも思ったことではないでしょうか。リスク一杯の事業を推進しようとする時、なかなか人は集まってくれません。上手くいき出すと、我も我もと集まってきます。そう“明日になったら誰も来る”のです。“同じ来るなら今月今宵”今日来てこそ、今宵集まってこそ、その人間が奇兵隊の強い軸になるのだ。…高杉晋作の心意気は現代のベンチャーにも繋がるものだということも認識すべきでしょう。
ベンチャーと言えば、IT革命で急成長している世界的な企業名が浮かんできます。米国のGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)とM(マイクロソフト)、併せてGAFMAと言いますが、その強大な経済規模には驚き以外の何ものもありません。
しかしながら、通信販売で有名なアマゾンは日本国に法人税を払っていないという驚くべき現実がありそうですので、そのあたりを少し覗いてみたいと思います。
アマゾンドットコムの本社はアメリカ・シアトルにあり、年々巨大な伸長率を示し、ウエブサイトは15ヵ国で運営、2017年の売り上げは1,778億ドル(約19兆9000億円・$/円112円換算)、営業利益率は2.3%。2002年以降のグラフをご覧ください。
一方、アマゾン日本事業の売上高は、平成29年度で1兆3,300億円(119億ドル)、平成22年度で4,400億円(50億ドル)。8年間で倍以上の伸びですから、急成長していると言わざるを得ません。
わたし達の日常生活やテレビ・スマホなどでのアマゾンの注目される度合いはかなりのものがあり、ましてやITを基盤に1兆数千億の売り上げがなされているのを見るにつけても、アマゾンはかなりの利益を上げ、税金もたっぷりと日本国に収めているはずだと思っていたのですが、何と、法人税はゼロということです。どうなっているのでしょうか。
・アマゾンの日本子会社は「アマゾンジャパン合同会社」となっており株式会社ではなく、アマゾン本社の運営サポート・物流業務サポートを行う会社として、利益のほとんどがアメリカ本社に吸い上げられる構造となっています。平成29年度(2017)の法人税は、何と、わずかに11億円。節税のためにこの手法を取っているのは一目瞭然です。
・平成21年(2009)、国税がアマゾンに対して140億円の追徴課税処分を行いましたが、アマゾンは「アメリカ本社はアメリカで納税しており、日本で納税すれば二重課税となり、納税義務はない」と主張。結局日本はアメリカに負けました。日米租税条約は現実には不平等条約。アメリカの主張・力・立場>>日本の主張・力・立場、であり、日本は今でも実質的にはアメリカに負けたままになっているのです。
・アマゾンなどの多国籍企業(multinational corporation)は、大幅な脱税や節税のためにタックス・ヘイブンを上手く活用します。
【タックス・ヘイヴン】とは、一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域のことであり、租税回避地とも、低課税地域とも呼ばれる。キュラソー、ケイマン、スイス、パナマ、バハマ、ルクセンブルクなど…。
さあ、これに対してG20の国々は黙っていません。アルゼンチンの首都ブエノスアイリスで開かれたG20財務省・中央銀行総裁会議で、ネット通販に関しては国別に課税することとし、2019年内にもルールを策定する方向が打ち出されました。
・アマゾンは、20兆円に近い売り上げがありながら、税金はほとんど払わず、わずかにアメリカに払っている状況ですから、何ともひどいもの。
・また、アマゾンは帳簿管理はアメリカ本社であり、例えば、帳簿上で書籍を米国に輸出したことにし、その消費税分の還付を受ける。そうすればアマゾンが扱う書籍には消費税が含まれず、競争優位となる。…というものですが、この確証はありません。しかし、もしも万一これが真実だとすれば、アマゾンは国賊企業と言われるでしょう。そんなとんでもない悪事がないことを祈るのみです。
・アマゾンのCEO(最高経営責任者)であるジェフ・ベゾフは、1,120億ドル(12兆円)を持つ世界一の資産家であると共に、アメリカの有力紙ワシントン・ポストを買収し世論への影響力も強い立場の人物です。そうであるとするならば、なぜ、えげつなくずる賢いことをしようとするのでしょうか。全く理解に苦しみます。
それにしても、納得がいきません。アマゾンは、日本での経済活動であげた利益に対しては、それ相応に、日本に税金を払うべきではないでしょうか。政治家、財務省(国税局)の奮起を望みます。
みなさんはどのようにお考えでしょうか
次回は
時事エッセー
です。
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コメント
上記のアマゾンの手法は「コーポレート・インバージョン」と言われています。この様なコーポレート・インバージョンを使った企業にアップル、スターバックス、マイクロソフトなど名だたるグローバル企業があります。
アマゾンのように租税回避をしている企業と、その国の他企業と同じ土俵で公平に争えません。そしてグローバル企業は、その国の資産や税によってつくられたインフラや社会制度を利用しており、タダ乗りと批判されても仕方ないと考えます。一刻も早く改善(我が国の法整備)が望まれます。
この問題は、今後国際的に継続的に議論、検討すべき問題と考えます。
投稿: 渡邉啓二 | 2018年12月24日 (月) 15時27分