中国「国家情報法」…ファーウェイ事件に思う②!
674回目のブログです
“降る雪や
明治は遠く なりにけり”
中村草田男(俳人)
昭和の初めに詠まれた有名な俳句です。明治から大正を経て昭和に至った時の何とも言えない感懐を心の底から発露したものと言えるでしょう。その感懐は、明治という偉大な時代精神であり、躍動する多彩な文化であり、世界に伍して行こうとする活力に想いを馳せたものかも知れません。
翻って今、今年半ばで新しい「御代」を迎える時、中村草田男の句を真似れば“降る雪や
昭和は遠く なりにけり”となります。昭和と新しい御代の間には平成という微温的に低迷している時代があり、あらためて、激動極まりなかった昭和の時代精神、昭和の息吹き、昭和の文化に想いを馳せることも必要ではないでしょうか。
先週、ファーウェイ事件(孟晩舟副会長のスパイ容疑逮捕)についての感想を述べましたが、ファーウェイのスパイ容疑逮捕は世界で続出するような予感もあります。
ポーランドは、1月11日、ファーウェイ現地法人幹部の王偉晶容疑者を逮捕しました。王氏は東欧と北欧の販売を統括しているファーウェイの幹部であり、元外交官。これに呼応して、ポーランドのブルジンスキー内務行政相は「EUと北大西洋条約機構はファーウェイを欧州市場から排除するよう」呼びかけたのです。当局は王氏のスパイ活動に関する固い証拠を掴んでいると言われています。
中華人民共和国人民解放軍の政治工作を規定した「中国人民解放軍政治工作条例」においては、解放軍に「三戦」の任務を与えることが明記されています。三戦とは、
世論戦(国内世論・国際世論に影響を及ぼすこと)
心理戦(敵の戦闘作戦遂行能力を低下させようとするもの)
法律戦(国内法・国際法を利用し軍事行動の支持を獲得するもの)
ですが、このうちの法律戦に準じて習近平主席は近年、安全保障態勢の整備を図っています。
2013年「国家安全保障理事会」設立
2014年「反スパイ法」 (新設)
2015年「国家安全法」 ( ∥ )
2016年「インターネット安全法」( ∥ )
∥ 「反テロ法」 ( ∥ )
2017年「NGO管理法」 ( ∥ )
∥ 年「国家情報法」 ( ∥ )
ものすごい安保補強態勢であり、中国共産党独裁、あるいは習近平個人独裁ならではの面目躍如という感じがします。
これだけの法律を設けて置けば、中国人民を、あるいは外国人を雁字搦めにすることができるというものではないでしょうか。よくよく見れば、自国人民および外国人に対する極めて歪な抑圧法であることは明白であり、自由民主主義国の法律と著しく異なっていることが分かります。以下、一部を見ていきましょう。
・2016年に施行された「インターネット安全法」では「IT企業は、国家安全機関が国家安全を維持する活動を行う場合や犯罪捜査を行う場合に、技術サポートおよびその他の協力を提供する義務がある」と定められていますから、ファーウェイの様なIT企業は、他国の政府・企業へのスパイ活動を通じて軍・政府への協力を提供することは義務でもあり、誇らしいことでもあるわけです。何とも度し難い独裁国家のやり口と言えるでしょう。
・極めて問題なのは「国家情報法」です。第7条には「いかなる組織及び個人も、法に基づき国の情報活動に協力し、国の情報活動に関する秘密を守る義務を有し……」(国立国会図書館調査及び立法考査局)とあり、ファーウェイが中国情報当局に協力しているのはこの法に基づいているとみて間違いないと思われます。
・ファーウェイが、たとえ100%の民間企業だとしても、この法に従えば、中国当局に協力しなければなりません。欧米の国々はファーウェイのスパイ活動の実態を見て、背筋を寒くし、ファーウェイの通信設備導入の危険性を認識したに違いありません。
・国家情報法は「市民はもちろん、すべての国家機関・軍隊・政党・社会的グループ、企業、事業団体」に対して、必要な時には“諜報活動”を支援することを義務付けています。すなわち、この法律はすべての中国国民一人一人に義務を負わせていることになるのです。
・従って、一般中国人民はもとより、外資系企業に働いている中国人も雇用者及び企業についてのスパイ行為を求められます。本来、企業機密は社外に漏洩してはならないものであり、これは世界の共通したルールですが、中国(中共)政府だけが企業機密を収集できるのであれば、公正な企業競争など出来っこありません。
中国の習近平主席が、三戦、特に法律戦を駆使し、最大版図・中華帝国の復活、偉大な中華民族の復興を目指し、中国人および中国に関係する外国人のすべてにスパイ行為を仕掛けていることは明白になってきました。
このように見てくると、旧ソ連の「コミンテルン」を思いださざるを得ません。コミンテルンは、共産主義インターナショナルとして各国の共産党を陰に陽に、スパイも多数使い、圧迫指導してきました。
今の中国は、もちろん過去のソ連体制とは異なりますが、現代版コミンテルンと言っても差し支えないでしょう。中国は、従来と異なり、より広汎、より巧妙、より陰湿にコミンテルンの道を歩んでいるように思えてなりません。
このような岐路に立ち、自由民主主義国はどう対処するのでしょうか。アメリカ・トランプ大統領の一挙手一投足が注目されますが、アメリカは、引き続いて中国を封じ込めようとするでしょう。他の自由主義国はトランプ大統領について行かざるを得ないのではないでしょうか。
それでは、日本はどう対応するのか。まずは、スパイ防止法の制定です。日本は世界各国からスパイ天国と蔑まれています。北朝鮮の拉致を見ても、わが国には北朝鮮のスパイが多数蠢いていることははっきりしているではありませんか。今、中国のスパイは、政治家、メディア、大学、官僚、企業など広範囲に触手を伸ばしていると言われています。
Oxford Analytica Daily Briefは、2017年9月号のレポートのタイトルを「新しい『国家情報法』が中国のスパイ活動に法的根拠」としています。鋭い指摘に納得。
加えて、中国は2015年以来、日本人ビジネスマンをスパイ容疑で12人拘束し、8人を起訴、4人が有罪となっていること、また、この8人に加え半年以上の長期拘束されている日本人は日本経済新聞によると100人近いと見られていることに留意しなければなりません。
中国ビジネスに関わるビジネスマンは「異形」の大国“中国”に充分警戒の目を持ち、慎重な言動が必要ではないでしょうか。もちろん観光客も同じです。すべて自己防衛のためです。
みなさんはどのようにお考えでしょうか
次回は
時事エッセー
です。
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